挿話〜ルルの夢〜
本編には関係ありません。
ルルさんはコールさんの嫁です。
「明日はオカンのとこ行ってくるわ。」
夫のコールが急に言いだした。
「どしたの急に。」
「ニールが妹ひろたらしい。
その妹と大陸に行くから留守番してほしいて。」
「拾ったって犬猫やないんやから!」
義母、義弟は海が人間の手により荒らされたりしないよう、
また、魔物が発生した場合の周辺警護を任されている。
時々遭難した人間を保護したりもしている。
でも、妹を拾ったとはどういうことだ…?
夫の一番下の妹は
人魚をさがしに行くと
探検に出た際、
魔物に襲われ、
子供の頃亡くなっている。
人魚伝説の好きな、
グリーンの瞳のお人形さんのような娘さんだったとのこと。
亡くなった時の義母シリルの落ち込みようは
それは酷かったという。
一緒に遊びに出ていた幼いニールも同様だった。
なんでも、妹というのはグリーンの目の人魚さんらしい。
なぜこの海域にいるのか、
なぜ義母宅に保護されたのか、
詳しいことは夫も知らないようだが、
その瞳に2人は妹の面影を見たのかもしれない。
その人魚さんは今年度から魔法学校に通うそうだ。
その為、大陸に一度行ってくると。
留守番が必要になるので、
夫にお願いをしたらしい。
赤の他人の為でも、
一生懸命なところは義母らしいと
ふっと笑みが漏れる。
「でも、魔法学校かー。
私も行ってみたかったなー。」
私も実は魔法学校に通って、
大陸で魔法使いになることを夢見ていた。
しかし、両親は大反対。
離れて6年も暮らすなんて!
しかも10歳からなんて!
と騒ぎたてた。
私の夢は儚く散った。
でも、ここで夫のコールに出会い、
2人で幸せに暮らしている。
それは魔法使いになっていたら
叶わなかった幸せだと今は知っている。
夫は私の親に遠慮して、
周辺警護の仕事ではなく、
中央で仕事を探してくれた。
本人は中央のデスクワークのようなものではなく、
実家の仕事のような体を動かす仕事の方が好きなんだろう。
久しぶりに行く実家の仕事になんだか嬉しそうだった。
「行ってらっしゃい。」
当日の早朝、私は夫を見送った。
夫は帰って来て
「とても礼儀正しい、
いい娘やった。
私のせいで手を煩わせてすいません、やって。」
と言ってニコニコと笑っていた。
「…私も会ってみたいな、 人魚さん。
あと、久しぶりに義母さんに会いたいし。」
夫がそんなニコニコと嬉しそうに
話すような娘ならぜひ会ってみたい
自然とそう思った。
魔法学校へ出発の日、
初めて人魚さん、リリアちゃんに会った。
本当にお人形さんのような可愛い子だった。
「旦那さんに留守番お願いしちゃってすいません。」
と私に謝ってくる。
出来た子だ。
「長期の休みの時、帰って来たらお話聞かせて!」
私の幼い日の夢。
その世界を少しだけお裾分けしてほしい。
その気持ちが溢れてしまったらしく、
彼女は少し困った顔をしていたが、
了承してくれた。
皆が出発し、夫と2人になった。
「ねぇ。こっちの仕事に戻らない?
時間も融通効くし。
子どもとゆっくり過ごす時間もほしいでしょ?」
「…どういうこっちゃ?」
「…子どもが出来たんよ。
あなたの子ども。」
夫は私を
ありがとう、ありがとう
と言いながら抱きしめた。
子どもの名前はどうしよう、
女の子か、男の子かなど
気の早いことを言いながら、
私は私の新たな夢を想うのだった。
読んでくださってありがとうございます!
割と初期からあった、妹の登場でした。
嫁は本編で今後出てくるかこないか…。