57.歌の授業
今日は芸術の授業。
歌の授業だ。
頼んでもいないのだが、エリオットも一緒だった。
「エリー姉様が言ってたけど、
お前歌上手いんじゃないの?
わざわざ受ける必要があるのか?」
「じゃあ、エリオットはなんで芸術なんてとってるの?
別に今とらなくてもいいんじゃないの?」
「エリー姉様に頼まれたからな…。
その…真面目にやってるって
それとなーくアピールしてくれて構わないぞ。」
なんだよ、ちょっと可愛いじゃないか。
でも偉そうだから減点。
先生はカミラ先生という。
妙齢だが、ブルーの髪の美しい上品な先生だ。
淑女という言葉がぴったりきそう。
「では、先週話した通り、まずは各地の歌を
学んでみたいと思います。
大陸ごとに特色が出たり、
似通っていたり、色々な発見ができることでしょう。」
わー聞きたいな。
先生が指名した子が出身大陸の歌を発表していく。
基本はわらべ歌や子守歌だった。
ただ、その場で歌わせるので、
歌の苦手だと思われる子たちは
青い顔をして俯いていた。
エリオットも同様だった。
どうやら苦手らしい。
なんだ、苦手なのに私に付き合って受けてるのか。
見直したので、減点を取り消してやろう。
「では、リリアさん。」
うわ、指名された!
こっちの世界の歌…えーとえーと。
そうだ。
あの楽譜の歌にしよう。
歌い終わった後、
静まり返った。
少しの間のあと先生が拍手する。
「私でも聞いたことのない曲でした。
でもとてもすばらしく歌でしたね。
ご出身は?」
「ブレイ大陸ですが…
やや辺鄙なところでして。」
「そうですか。
ありがとうございます。」
まだ教室はざわざわとしている。
「では、次の人…」
全員がさっと目を反らす。
私の後は歌いづらいらしい。
なんかすみません…。
「じゃあ、…エリオット君。」
なんだかエリオットに
トドメの一撃を刺してしまった気がする。
歌い終わった後のエリオットの顔と言ったら…
完全にHPは0だ。
君の頑張りはエリーちゃんに
きっちり報告するよ…
授業の後の、カミラ先生に軽く手招きされる。
「先ほどの歌、詳しく教えてもらいたいのです。
どういった種類の歌なのです?」
「えっと、たまたま実は楽譜を拾ったんです。
だから詳しくは知らないんです。
すみません。」
海の中でとは言えなかったけど。
拾ったのは事実。
「そうですか…。
あの曲のことは校長先生に話しても?」
え、なんかまずい歌だったのかな?
怖い!!
ダメですなんて言えないし。
「え、えぇぇ…」
と振り絞るのが精一杯だった。
エリオットは教室の外で待っていた。
「本当に歌、上手いのな。
リリアのくせに。」
それだけの為に待ってたのか…
余計な一言があったので、やっぱり減点。
「エリオット、エリーちゃんに
ちゃんとやってることはアピールするけど、
歌のことも報告していい…?」
「…お願い!やめて!」
じゃあ、「くせに」とか言わなきゃいいのに!
読んでくださってありがとうございます。