55.運も実力
彼女がみんなには発表しない
と言い出したので、
なんとなくその日の授業はそれで流れてしまった。
それでいいのか、
カール先生。
私はさっきの彼女に
声をかけた。
「初めまして。
リリアって言います。
今年入学だから魔法薬学もよくわからなくて。
仲良くしてくれたらうれしいな。」
なんかモジモジしてしまった。
「あ、ぁ、えーと…
マリーダです。
よろしくね。」
マリーダちゃんも赤くなる。
なんだかお見合いみたいだ。
「マリーダちゃん、よろしくね。」
「あ、う、…なんかちゃん付けなんか恥ずかしいから、
マリーダでいいよ…」
「分かった、マリーダ。
私もリリアでいいよ。」
「うん…。」
マリーダは人見知りのようだ。
マリーダはミナ大陸の一般家庭の出身だそう。
自然となぜここの研究室にいるのかの話になり、
お互いの話をしていた。
マリーダは
効果の高い魔法薬を作って自然治癒を高めても
治りにくい病気や今迄では対応できなかった
腕の欠損などの重症を治す薬を作りたいという。
「この1年は既存の薬の効果を
高めて治りを早めることが
目標になりそう。
いつかは無くなった部分を取り戻せるような
薬を作りたいわ。」
そう言い切る彼女の笑顔はとても素敵でした。
同じ研究室にいるのが少し申し訳ない。
彼女こそ特別扱いでいいんじゃないかと。
「リリアはなんでここに?」
素晴らしい志の後にはちょっと
話づらいんだけどなぁ…。
魔法使いにもならない予定だしなぁ。
とりあえず掻い摘んで説明をする。
ある夢があって、その夢を実現する為に
学校に通っていると。
たまたまカール先生が知り合いだったので、
研究室に所属しているとも。
本当申し訳ない。
「夢を叶える手段なら、
悪いことをしなければ、
手順はなんでもいいと思うわ。
実際に魔法は使えるのだし。
悪いことはしてないじゃない。」
そうだけどさぁ。
なんとなく。
「運も大事な実力よ。」
マリーダは意外とさっぱりとした考え方の人のようだ。
「ところで、ある夢って、 何?」
さっきの人見知りモードはどこへやら。
グイグイくるな。
「ア…じゃない。
巫女になりたいの…。
でも、巫女ってどうやったらなれるかなんて
知らないんだよね。」
なんかマリーダの夢に比べたら
子供っぽいような気がしてしまい、
恥ずかしい。
「そうなんだ。
立派な夢じゃない。
…巫女なら、教会で話聞いてみたら?
まだ先だけど、私そのうち行くよ?
クフィルザ様のところだけど。」
え!言ってみるもんだなぁ。
「行きたい!」
「まだ先だし、
話が聞けるかどうかまでは
約束はできないけど。」
なんとなく手がかりが見えてきたみたい。
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