54.魔法薬学
この世界の魔法薬っていうのは、
どうやら漢方に近いものみたいだ。
先日、5年次の魔法薬学を受けてようやく理解する。
魔力で自然回復力を高めて、身体を良くする。
それが主流のよう。
魔法使いがいなくても、数があれば流通するもので、
一般の人たちも薬を使っている。
普通の人間にも魔力は流れているというが、
気づいていない人がほとんどだ。
魔法の力で治ってると思っているようだが、
実際は魔力草など生薬で流れを整えている
というのが実態のようだ。
外傷は切り傷や軽いものなら塗り薬で治る。
ある程度は塗り薬+内服薬で治すこともできる。
腕を生やす、死人を生き返らす
なんていうのは不可能に近い。
自然に治るレベルを超えているから。
回復魔法や蘇生魔法は存在するらしいが、
大抵は失敗するらしい。
使える人間が少なく、
大昔に衰退した魔法のようだ。
研究室に所属してるのに知ったのは
直近の話だ。
今日から研究の授業だというのに。
ちゃんとカールさんに聞かなかった私がいけないんだけど。
カールさんの研究室に着く。
…気が重い。
いや、もしかしたら、
気が重い原因はいないかもしれないし。
そう思おう。思いたい。
私はドアを開ける。
…ドア閉めたい。
でも、閉めたら不自然だ。
平静を装い、席に座る。
彼女はいた。
私がドアを開けると、
一瞥し、
「ふん!」
といった態度でそっぽを向く。
あぁ。めんどくさい。
仲良く…はなれないだろうな…。
なるべく関わらないように1年過ごすしかないか。
彼女とは別の女の子が座ってる。
茶髪でメガネをかけた大人しそうな女の子だ。
声をかけたいが、
なんとなく、空気的に、
声をかけづらい。
…空気重い。
ドアが開いた。
「素敵な女性ばかりで僕は嬉しいよ!」
両手を広げて、両目を細めて言う。
マリオだ。
空気は重いままなのだが、
マリオの心は全く折れない。
すごくメンタルだ。
尊敬する…。
「ミアッキ、今日も素敵だね」
「ふん、当たり前よ!」
あ、当たり前ですか…。
「マリーダ、今日もチャーミングだね。」
「………はぁ。」
苦笑いしてる。
よかった、私と同じ感覚の人っぽい。
彼女とは友達になれそう。
「リリア、今日も美しいな。
僕の太陽。」
勝手に太陽増やさないでくれる?
なんなら歌って、君専用ミニ太陽出してあげるから
ヤメて?
いや、そんなことはすると余計なことを言い出すから
やめておこう。
ここはスルーだ。
カール先生を見習って。
「おはよう、マリオくん」
よしっ、完璧だ。
失礼でもない。
そんな事なんてをやっているとカール先生がやってきた。
「先日言った通り、
1年間研究することを報告してほしい。」
「僕は世の中の女性がより美しくなるような薬を。」
一番に口を開いたのはマリオだった。
ブレないね、君は。
「私はより効果の高い薬を研究したいです。
多分1年で研究効果は出ないので、
ここに残って研究を続けていけるように頑張ります。」
志の高い目標だ。
「分かった。マリオくんとマリーダさんは
具体的にどのような薬を作るのか、
どの薬の効果を高めるのかも考えておくように。
リリアさんは今年入学なので、
私と適宜話合いながら必要な授業を。」
「わかりました。」
よかった…。
「あなたが今年入学の?
よっぽど劣っているのでしょうね?
こんな時期まで学校に通えないなんて。
やはり私は1人で指導してくれませんこと?
カール先生、私は1人で指導されるだけの
価値のある結果を出せますわ。」
「それは認められません。
私の時間がありませんし。
それで、
ミアッキさんは何を研究するんです?」
「こんな人たちに理解できる
研究ではありませんの。
後で先生にだけお伝えします。」
「そうですか、好きにしてください。」
あ、カール先生投げたわー。
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