38.お小遣い問題
魔法学校に行くのは決まったのだが、
どういう学校なのか全く知らない私はまとめて
ケイさんに質問を手紙に書いた。
本当は会った時にまとめて聞こうと思ってたんだけど、
やっぱり、ケイさんとは文通の方が話が弾む。
理由は簡単。会話が短文だから。
まず、学費。
魔法使いの教育が目的なので、
無料らしい。
貧しくても通えるようにと、
学費と寮費はタダみたい。
教材も用意してくれる。
制服はないらしい。
生徒証のようなブローチがあるらしい。
魔法使いの証ようなものだ。
私服は買って貰った布で作ろうと考えている。
休みはあってその日は自由。
その日は基本巫女さんの演目
を見に行こうと思っていたのだが…
考えてみたら私、一文無しだった。
何浮かれて遊ぶことばっかり考えてたんだろう…。
大陸行った時に気付いたはずなのに、だ!
よくよく考えたら学校に行く船にも乗れない。
自力で泳いでいけなくはないみたいだけど。
カールさんですら2日かかるし。
ドレッサーにしまいこんでいる
マーマンの偽証石を売ってしまおうかとも考えたが、
今持っている偽証石もシリルさんちのだから
返さないといけない。
完全に手詰まりだ。
私はギブアップしてシリルさんに相談した。
「…という訳なんです。
考え無しでごめんなさい…。」
しゅーんという効果音がつきそうなくらい、
肩を落としての事情説明となった。
シリルさんの顔が怖い。
「…リリアちゃん?」
本当怖い。
ごめんなさいともう一度謝りたくなるほど。
「お母さんに少しは甘えなさい!」
え?
シリルさんは私が思っている斜め上の方向で
怒っていたらしい。
予想外過ぎて言葉がでない。
道中の資金はもちろん、
月々のお小遣いも出すつもりだったと。
むしろあたり前だから言わなかったらしい。
あたり前じゃないですよ?
と言ったらまた怒られそうだから言えないけど。
そんな心配してるとは思わないかったから
内緒にしておくつもりだったんだけど
と言いながら、大陸から帰る時にも
持っていた袋を持って来る。
「学校行く時、使うようにって。
本当は洋服も一緒に買うつもりだったんよ?」
あの時怒ってたのはそういうことだったらしい。
袋を開けると櫛や手鏡が入っていた。
洋服はお古になっちゃうけど…
と言いながらシリルさんの洋服も出す。
「だから、リリアちゃんは安心して勉強しておいで?」
「本当、ありがとうございます…」
「また気使って、この子は…。
ついでだから伝えとくわ。
リリアちゃんが作った乾燥リーブラ、
あれのおかげでリーブラの持ち運びが
長期間できるようになったんよ。」
今まで出来なかったんだ。
乾燥昆布なんて思いつきそうなもんだけどなぁ。
要約するとブレイ大陸までしか持ち運べなかったのが、
長期間持ち運べるようになったから
使用用途が広がると。
まだ実用はしていないみたいだけど、
魔法学校で試験中ということらしい。
「軌道にのったら、お小遣いとは
別にお金が入ってくるようになるからね。
そしたら、ちゃんと貯めておくんよ。」
試験中だからあんまりアテにしちゃいけないやつだ。
ちゃんとお小遣いはやりくりしないと。
「コレは私ちゃうよ、
ニールがやったことやからね。」
なんかニールさんがこそこそやっていたのはそれらしい。
ニールさん最初は食べるのあんな嫌がってたのに。
懐かしいなぁ…。
「だから気にせんと、自分のしたいこと、
しといで。
でも、時々は顔、見せに帰ってきてな…」
「うん…」
なんとなく幼い頃憧れたアイドルの
結婚式の定番ソングを歌う。
もちろん魔力はオフで。
「父さん、母さんって…リリアちゃん、
結局オトンには会ってないなぁ。」
「だね。」
と言って2人で顔を見合わせて笑った。
ブックマークしてくださった方々、ありがとうございます!
本当、オトンに会いませんでしたね…。
オトン、いつかちゃんと出番あげたい。