36.手
シリルさんはちょっと済ませたい用事があるらしく、
少しの間別行動だ。
「後で一緒に買い物しようね?」
と言って別れた。
ケイさんとライザさんは一緒に回るので、
私もそこにご一緒させてもらう。
ケイさん、ライザさん、私の三人で回るつもりだったのだが、
ケイさんは男だが、見た目が美女、
ライザさん文句無しの美女、
自分で言うのもなんだが、私も美少女だ。
碌なことにならないことが予想されたので、
ニールさんとラウルさんも一緒に回ることになった。
どっちかだけでいいのでは?
とも思ったが、ライザさんが
「ニールが美女3人侍らせてるとイヤミだし、
ラウルはやるとなんとなく罪の匂いがするから」
だそう。…確かに。
見た目はイケメンのニールさんが
美女に囲まれてたら男なら石投げたくなるかも。
ラウルさんがやってると元の世界で言う夜の世界っぽい。
ライザさん、正解です。
たくさんの市が立ち並ぶ。
色々あって目移りしてしまうが、
まずは布だ。
ライザさんがいうには、
祭の市では仕入れしているものより掘り出しものが
出てることがあるんだとか。
他の地域から祭の為に出店しにくる所もあり、
手に入れづらいものが手に入ったりするらしい。
ケイさんが目に付いた良さそうな布を
ピックアップしてライザさんが購入していく。
…すごいな。
どれにしようかな?
と思いながら手にとっていると
「それ、ダメ。」
「なんでです?」
「高い。」
「へぇ…」
「同じならコッチ。」
色が同じ、価格も同じくらいの違う布を渡す。
「どう違うの…?」
「手触り。」
私にはわからない…。
色々な店を見てケイさんはたくさんの布を買った。
その荷物を持っているのはラウルさんだ。
…ドンマイ。
私も数枚買ってもらった。
シリルさんとの待ち合わせをしている場所へ行く途中、
アクセサリー屋さんがあった。
綺麗だなぁ。
と流し見ていたら見覚えのあるものが。
偽証石だ。
でも売っていいのかな。あれ。
「なんか欲しいのあったんか?
お兄ちゃん買ってやんで?」
「ねぇ、あれ…」
「あぁ、普通の宝石として売ってるんやろ?
本当の価値はわかってないんやろな。」
「そうな…」
「ドロボー!!!」
老人の叫び声を聞き、振り返る。
ひったくりだ!
私は犯人らしき人物を追いかけようとした。
「リリア、身体強化頼む!」
ニールさんの声に、私はいつもの曲を一節歌う。
高く飛んで犯人の上に着地。
…ちゃんと手加減してると思いたい。
あ、生きてるっぽい。よかった。
普段武人が相手だからアレだけど、
普通に強いんだよね、この人。
老人に荷物を返すと周りを囲まれていた。
「にいちゃん、強いねぇ!」
「ねぇちゃんは歌が上手くてべっぴんだな!」
などとガヤガヤしている。
「いや、はははは…
(めんどくなりそうやから、逃げよ!)」
ニールさんは私の手を引っ張って走って逃げた。
最初もこんな感じだったけど、
今はこの手の温もりが心地よく、
頼もしく思えた。
ブックマークしてくださった方々、ありがとうございます!
クラーケンの手ってあったかいのかな…?自分で書いておいて疑問。




