32.巡回のお仕事です。
今日は定時巡回のお仕事についていく。
こないだの件があったので、シリルさんもニールさんも
本当は私を海に出したくないようだった。
正直怖くないと言ったらウソになる。
またマーマンに会ったらどうしようとは思っている。
でも、これで出掛けられなくなったら
立派な引きこもりへの第一歩だ。
荒療治だが勇気を出して出かけると決めた。
それにお仕事のお手伝いぐらいしたい。
どんな仕事なのかわからなくちゃ手伝いもできないし、
手伝えないのかもわからないのだから。
今日はニールさんが出るらしい。
と言っても、めったなことがない限り、
ニールさんが出るんだけど。
そんな大層なことしてない
最近特にやることない
と言って連れていくのを最後までゴネていた。
水着を着て、海に入る。
「最近は本当暇なんや。」
と言いながら2人で泳ぐ。
ゆっくり見て回ると知らないものばかりだ。
「ねぇ、ねぇ、あれなに?」
「あぁアレはコラキュやな。
主に宝飾品に使う。」
「じゃあアレは!」
「ちょっと待ってって…あーしゃーないなぁ!」
見るものすべてが珍しくて
なぜなに坊やみたいになってしまった。
困ったような笑顔を浮かべるニールさん。
お仕事の邪魔をしてしまったような
そんな気になって黙る。
「どうしたん?」
「お仕事の邪魔しちゃったなぁって。」
「別に?」
ニマニマしながら答える顔がなんとなく腹が立ったので、
叩いといた。
「なんで?!」
「…なんとなく。」
「ヒドない?」
そんなやり取りをしてると
「あれ、ニール、彼女かい?」
後ろから声がする。
「あ、フラッシュさん!」
「あれ、いつぞやの人魚のお嬢さんかい?」
「ん?知り合いなんか?」
集落をでて初めて会った亀さんだと
ニールさんに話す。
この亀さんが歌を歌わなかったら。
歌が上手いと褒めてくれなかったら。
きっとニールさんたちに会ってもいない。
歌おうなんて思える状況じゃなかったんだから。
そう意味では感謝してる。
「それで、ニールの彼女なのかい?」
「ちゃうって、じーさん!妹!!」
「そうかー、彼女かい。いいねぇ。」
こういうおっちゃんになにを言っても無駄だ。
自分の都合のいいようにしか聞こえない。
「お嬢さん、元気そうで何よりだねぇ。
元気な子を産むんだよ?それじゃあね。」
最初のときと同じようにサッと行ってしまった。
フラッシュさんはせっかちなんだろうか…。
「あのじーさんと話すとなんか疲れる…」
「あははは」
「(よかった、笑っとる)」
そんな心の声漏らさないでほしい。
私の顔が赤くなる。
「…?なに赤くなってるん?」
「なんでもない!!」
とりあえず…ごまかす。
ごまかせてないかもだけど。
「そろそろ帰るかー。
な、暇やったろ?」
そう話していると、陸の方から影が。
マーマン?!と思ったが、
クラーケンの女性だった。
「ニール!!最近付き合い悪くない?
遊びましょうよー?」
「あぁ、スマンな。
今、妹が一緒やから、またな?」
ニールさんがイケメンスマイルで言う。
…おモテになるよーで…。
なんだろうなー、自分の兄がモテるって知ると
複雑な心境らしいから、そんな感じだろうか。
「そうなの?残念。またねー?」
女性は行ってしまった。
「最近は暇だから、時々遊びに行ってると。」
「最近は行ってないわ!
…あの…リリアさん、オカンには言わないでクダサイ。」
墓穴。
…………どうしよっかな〜♪
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