20.浜辺にて
今週はお休み続きなので、
祝日ですが、一話だけ。
…眠れない。
泣いたところでどうにもならないし、
考えたところで帰れるわけじゃないのはわかってるんだけど。
ベットを抜け出し、
海辺に出た。
元の世界にいた時は
悩んだら海に出て考える主人公の気持ちなんて分からなかった。
当たり前に生活して学校に行って。
友達とムカつく先生の話やコイバナして。
家に帰れば御飯食べて
お母さんと来週はドラマがどうなるか話して。
悩みなんて
アイドルの新曲が来週出るけど、
お小遣い足らないとか、
クラスで浮かないように気を使うとか、
体重が2kg増えただとか。
容姿も並、学力も並。
大抵のことは人並みにはこなせたし。
泳げはしなかったし、
ズバ抜けてスゴイことがないことも悩みだったけど。
今考えれば、些細な悩み。
幸せだったんだな…。
こんなことにならなければ気づきもしなかった。
「…(グスッ)…ひ…うぅ…」
海の方から人の気配がした。
ニールさんだ。
泣き顔を見られたくなくて、
顔を伏せる。
「あれ?寝てるんやなかったんか?
お兄ちゃんのお出迎えかー?
嬉しいわー!
……泣いとるんか?」
家に戻って行ったかと思ったら、
服を着て、足を人間ver.にしてから少し離れたところに並んで座った。
ニールさんはしばらく何も言わなかった。
私が少し落ち着いたと見えたのか、
ニールさんが口を開いた。
「……帰りたいんか?」
私はニールさんのほうを見て曖昧な顔をした。
元の世界には帰りたい。
でも帰る方法もわからないし、
帰れるとも限らない。
ニールさんの認識では、私が帰るのはマーマンの集落だ。
私は特に思い入れのないマーマンの集落に戻りたいわけではない。
私が元の世界に帰ったら戻ってくるであろう、
私のためにはマーマンの集落に
戻れるようになったほうがいいとは思うけど。
私は
「…わか…らない。」
ようやくこの一言を絞り出した。
「さよか…。」
またしばらく黙る。
「なんかやりたいこと、あるんか…?」
こちらに来たばかりの時、歌を褒められたし、
びっくりなほどの美少女になったこともあり、
アイドルになりたいなんて思ったけど。
アイドルなんて職はなさそうだと気づいてしまった今、
何がしたいのか…。
今は戻る方法を探したい。
数日生活して得た情報は僅かすぎる。
「…探したいものがあるけど…
…どこにある…のか、わからない…
どうやって探し…たら、いいか…
わから…ない…」
「そか…。
じゃあ、なんか好きなことは?」
こっちの世界に来て、よく歌を歌っている。
人魚の性なのかなんなのか、つい歌を口ずさむ。
私は歌が好きなんだろう。
「…歌…かな…」
「歌かぁ…リリアは歌上手いもんな…。」
「…ありがとう。」
「でも、今のまま歌うと魔力使いすぎるから、
練習せなあかんな。」
「うん…。」
「できることからやって行けばええんちゃう?」
「うん…。」
「明日も練習頑張ろうな…。」
「うん…。」
少し離れた距離を詰めて、
いつの間にか隣に座っていたニールさん。
そして、頭を自然にぽんぽんとしていた。
そんなこと自然にやっちゃうなんて、
さすがイケメンだと思いつつ、
その振動が心地よくで、
私はいつの間にか眠っていた。
ブックマークしてくださった方々ありがとうございます!
頭ぽんぽん(但し、イケメン限定)って言葉が過ぎりましたので、
つい最後だけふざけてしまいました。
真面目に〆るつもりだったのに、書かずにはいられなかったです。