13.残念イケメン。
今週はおやすみが多いので
少な目に話を進めることにしました。
「そろそろ日もくれるし、暗くなる前に移動しよか。」
「あ、はい。」
「そんな固くならんでええよ。敬語はいらんって。
なんならニールお兄ちゃんって呼んでくれてもええで?」
「…ニールさん、うちってどこなんですか…?」
「スルーかいっ!?(これがツンってやつか!!)」
イケメンなのに残念って、このことをいうんだな。
心の声がだだ漏れだし。
「こっからもうちょい陸地よりや。
さっきの逃げ足だったらついてこれるやろ。ちいと急ぐで。」
しばらく泳いで、宵の明星が輝き始めたころ、小島に着いた。
「陸地?お家は陸なんですか?」
「せやねん。警備がお仕事やからな。見渡せるとこに住んでん。」
ちょいちょい漏れる心の声から
ちょっとだけ、自宅警備員なのではという疑いの目を向けていたが、
本当にここらへんの警備を担ってるらしい。
「私、どうやって陸地に上がりましょう?
ニールさんはちゃんと足があるからいいけど。」
足をジュルジュル言わせながら陸に上がるニールさん。
「ちょっと待っとき。」
家の方に向かって行き、扉を開けて叫んでいる。
「オカンー!アレどこやったっけー?
ちゃうちゃう、ちょっと保護せなあかん人がおってー。
ちゃうよ、誘拐なんて物騒なことしてへん!
誤解やて。ホンマ、勘弁っ!!」
普段の行い、きっと悪いんだろうなー、ニールさん。
母の信用がないっぽい。
数分後、ボロボロになったニールさんとお母さんらしき人が出てくる。
金髪に濃いグリーンの瞳。
肝っ玉母さんって感じだけど、きっと若いころは綺麗だったに違いない。
ニールさんのお母さんだし。
ロングスカートだから足は見えない。
でもやたらコンパクトなような。
「あら、ホンマに人魚さんや〜!かわいらしいわぁ。
私の若いころみたいやわぁあ。」
「オカン、冗談キツイ。」
「なんか言うた…?」
「いえ、ナンデモナイです。」
ある種お約束のようなやり取りをした後。
「リリアちゃんやったけ?ニールの母のシリルです。
行くとこ決まるまでうちで過ごしてくれてかまへんからね。
こんなかわいい子ならずっとうちにいてくれてもええけど。
服取ってくるから、これの使い方はこのバカ息子から聞いておいて?」
「ありがとうございます。」
お辞儀を人魚座りのままして、小さな石がついたペンダントを受け取る。
…なんかこの石見たことある気がする。
ニールさんがトーガのような服を着ながら説明をしてくる。
「この石は通称偽証石って言ってな、こうやって…」
足の方で石を掴んで、
呪文らしき言葉を言うとニールさんの足が人のそれっぽくなった。
吸盤っぽい模様が足にはついている。
「おぉ!」
この世界で初めて魔法らしい魔法を見た気がする。
私が使ってたってさっき言われたけど、自覚ないし。
「こうやって二本足になれるってわけや!」
ニカッとイケメンスマイルを向けてくる。
人型だと余計格好良く見えるから厄介だ。残念イケメンの癖に。
「時々漂流者とかも拾ったりするからな!
そん時はちゃんと下も履くから模様も見えん。
人間に見えるやろ?」
「便利ですね〜!」
「せやろー♪これで大陸とか行くとモテんねんて」
「…はいはい。」
「リリアちゃん冷たっ!ホンマはいい偽証石ならこの模様も消えるらしいんよ。
マーマンあたりは顔面も偽証せなあかんから持ってるらしいんやけど。」
はっ!思い出した!マーマンのおっちゃんからもらった石、これだ!
ブックマークしてくださった方々ありがとうございます!
ニールさんの喋りが崩れてきそうです。
突然喋りが普通になったら、察してください。