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124.ひとつ

「何言ってるの?消えるなんて…私は許さないんだから!」


私は瞑っていた目を開いた。

確かにさっきまで私は向こうには行かないつもりだった。

でもそれはリリアの存在を消してまで叶えたいワガママではない。

やっぱり話が出来て良かった。私は気持ちを決めた。

もう揺るがないうちにプミロア様に伝えよう。


私はプリシラとリンがまだ眠っているベッドを抜け出し、外に出た。

雨が降っていた。

外には出発前だからか、馬車の整備するニールさんがいた。

私を見つけて近くに来た。


「どした?リリア。濡れるで?」


「…ごめんね、ニールさん。大好きだよ…。私の…王子様。」


そう言って私はニールさんに抱きついた。


「なっ…」


そして、私はニールさんから離れると走っていく。

走りながら、


「プミロア様!私帰りますから!今すぐ!」


そういうと、私の周りに光が集まって行く。後ろからニールさんが追って来ていた。

あっさり追いつき、私を抱きしめて言う。


「リリア!帰るって…行くな!!リリア…」


声が遠くなっていく。



……さよなら、ニールさん。





私はハルカの姿だった。

目の前の女の人は…プミロア様?よく顔は見えないけど、見た目は神々しくて…

いつもの残念な感じはない。


「残念って失礼ですね!帰るんですね?

向こうにアイリがいるはずですから、行きましょう。

でも…本当にいいんですか?あの青年のことは…。」


「いいんです…。リリアはいますから。ちゃんと。」


「そうですか…では、行きましょうか。」


少し進むとリリアと同じ顔をした人が。


「ちょっと、予定よりも早いんだけど?ライブの時だけ身体借りるからまぁいいわ。

特別に迎えに来てやったわよ?」


アイリさんのようだ。私は随分と驚いた顔をしていたようで、


「当たり前でしょ?あんたたちが私に似てるんだからね?

気づいてないでしょうけど、今の状態、意識体の顔は私に近い顔だからね。

髪が黒いだけで。」


ずっとハルカの姿だと思っていたけど…顔はリリアになっていたみたい。


「だから、私の顔だってば。それに、私っぽいってだけで、昔の顔の面影もあるわよ。

ちなみに向こうの世界での今の顔に近いかもしれないわね。

メイクすれば私に近くも出来たもの、あんたの顔って。」


アイリさん…モノマネメイクですか?


「私の腕にかかればアレくらい簡単よ?」


「そういう問題じゃないですよ!私戻ったら、元のメイク(りょく)に戻るんですからね…」


「じゃあメイク、教えに行くわ。」


「というより、スペック、イジられすぎてて元の生活に戻れない場合どうしてくれるんですか?!」


「まぁ、いっぺん死にかけて記憶なくして天才になったけど、

記憶が戻ったら元に戻ったってことにしておけば?」


「………そう簡単に通る言い訳ですかね?」


「通すのよ!」


「もういいです…。」


そんなコントのようなやりとりをしていると、遠くから歌声が聞こえる。

この声…この歌って…。


メタルアイドルの歌。

ひとつ。そんなタイトルの歌だ。

どんどん歌声は大きくなっていく。


「リリア…?」


「ハルカ!」


声だけが聞こえる。


「勝手なことしないでよ、ハルカ。」


「勝手なのはリリアの方じゃない!

消えた方がいいなんて…そんなこと言ったんだから。」


「話は最後まで聞いてよ?消えた方がいいとは言ったけど…

存在しなくなるなんて一言も言ってないんだからね?

プミロア様、アイリ様、聞こえますか?」


「ええ」


「聞こえるわ。」


「ハルカはこちらの世界へ戻してもらえませんか?

向こうには…私が行きます。

別に問題ないし、それなら身体がもたないってこともなくなりますよね?」


「え?!」


「そうですね。身体には1つの心だけが入ることになりますし。」


「私は身体に戻る権利をあげるとだけ言ったわ。別に誰でも私は構わない。

向こうの世界とのつながりさえ切れなければ。」


「でも…リリア…」


「私はあなただから。完全にではなかったけど、多少なら記憶もあるよ?

向こうの家族や友達…。なんとなくだったらわかる。

ハルカだって戻ったところで、アイリ様が変えちゃったハルカになるんでしょう?

前に言ってたもんね。そうしたら、私が入っても一緒じゃない?

それに…向こうには王子様、いないのも知ってるよ?」


「王子様…?」


「アイリ、今はそこに食いつかないであげてください…。」


「お兄さん、一緒に帰ろうって言ってるよ?待ってるよ?

私はあなたのおかげで今ここにいるの。だから、今度は私が。

元々私達はひとつでしょう?私ならもう大丈夫。」


「リリア…。そうだね…私達は元々一緒だったんだもんね…。

私もいろんな人のおかげで強くなれた。リリアも一緒だったんだね。」


そうだ。私達は元々、ひとつの存在だった。


「お話、纏まったかしら?私、早くその王子様の話聞きたいんだけど!」


「はい。アイリ様。私の方が向こうに行きますので、

一度、ハルカをこちらへ戻してもらえますか?」


「了解よ。お姉、そこで待ってて。私、この子送って、声だけの子の方連れてくるわ。」


「もう…わかりました。終わったらちゃんと帰って来てくださいね?」


アイリさんが私を連れて戻ろうとするので、プミロア様に挨拶をしてから、


「プミロア様、リリアが向こうに行ったら…手紙は書いてもいいですか…?」


そう聞いておく。


「本当は良くないんでしょうけど…

もうアイリが行き来してますし、色々やっちゃってますから。

そこは察してください。ただ、魔力は以前ほどではありませんからね?

リリアさんも聞こえてました?」


「魔法なんて手紙くらいしか使うこともありませんよ。アイリ様ほど自由じゃないです。」


リリアが軽口を叩いてる。なんか…嬉しい。


「自由な女神様だからね!」


「アイリさん、くだらないダジャレ言ってないで、リリアのところ行きましょう?」


「ところでさー、王子様って?ふーん。へぇー。あら、やだ。」


「ちょっと!人の心読んでニヤニヤしないでくれます?」


しばらく行くとリリアの姿が見えた。

私達は抱き合っていう。


「ハルカ。私達はひとつだから。大丈夫。」


「リリア、ありがとう。」


「お兄さん、ニールさんと幸せに。」


「リリアも素敵な人、見つけてね。」


「王子様ね?」


「「………。」」


私達2人は赤くなった。


「じゃあ、そろそろ行くわよ。

えっと、ハルカだっけ?巫女やめたとしても時々話かけるから。

あんたみたいな面白いの見守るなら、女神も面白いかなって思って来たわ。」


「面白いからって私みたいな人増やしたりしないでくださいね?

私は周りの人に恵まれたからよかったけど…それでも何も分からなくて大変でしたから。」


「じゃあ、本人の許可を得て、チートの1つや2つ授けることにするわ!」


そういう問題じゃない!!


「またね、ハルカ。」


「またね、リリア。」


そう言って私達は別れた。

読んでくださってありがとうございます!

もう少しでおしまいです。

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