120.相談しましょ、そうしましょ
ルーロウ校長の正体がエルフだったことにより、話はだいぶ横道に逸れたが、
リンはカミラ先生に歌を習うことになった。
それと同時にプリシラがルーロウ校長の時間があるときに講義を受けることになった。
身体の弱いエルフの効果的な身体の動かし方を教えてくれることになった。
内容は気になるが、相当特殊なようだ。エルフ専用と言ったところのよう。
空き時間がいつできるかはわからないので、
プリシラは校長の仕事の手伝いをしながらということで話はまとまった。
期間は3ヶ月。短期集中になるが、私達や先生方の都合上それが限界だった。
その間、ぶっちゃけ私は暇だ。
何か巫女としてレベルアップできる方法…と考えたところ、
剣舞で相当足を引っ張ったのを思い出し、リンダ先生に剣術を習うことにした。
リンダ先生も快諾してくれた。
リンレンに習えば良いんだけど、リンレンは感覚で身体を動かしているので、
習うのが難しいのだ。
「ここはバーンって感じ?」
って言われてもわからないんですよー。天才ってやっぱり違うんだよ、きっと。
プリシラは短期職員扱いになり、職員宿舎で寝泊まりすることになったが、
私達は職員ではないので、キアバから通うことにした。馬車で30分だし。
「ジョナサン、久しぶりやなぁ。」
「ニール!リリアちゃん!半年位ぶりか。
それなのに3つの踊り場で演目を済ませるなんて…異例中の異例だよ!
キーヨートではいつやるんだい?楽しみだよ!」
ジョナサンさんは目を輝かしていた。
「まだキーヨートは未定なんです。次はミナ大陸の踊り場を考えているんですけど、
なかなか難しそうなので、3ヶ月の短期集中で各自の実力をあげようと思ってて。」
「そうなのかー。残念。あ、でもしばらくここに居るってことだね。
またキアバでの演目やっておくかい?」
「それはこちらもお願いしようと思ってました。」
「そんでなー、ジョナサン人手要るようなことあるか?」
「あるけど?」
「巫女の3人が練習しとる間は俺ら護衛は時間空くんや。どっちかが付いてればええし。
交代でレンと俺、使うてくれへん?レンも多少なら馬車も出来るし、気もつくで?」
ニールさんが交渉し始めた。空き時間を活用して路銀を稼ぐつもりらしい。
抜け目ないな。
「うーん…嬉しい申し出ではあるなぁ…実際人手も足らないところもあるし…
ただなぁ3ヶ月かー。」
ジョナサンさんも期間が短いので迷って居るようだ。
「なぁ、リリア、天の日はキアバで演目やるんやろ?」
「そのつもりだけど?」
「したら、天の日は2人使うてくれてええし、護衛の仕事やから天の日分はいらんから!!」
「じゃあ、それなら!」
「交渉成立やな!」
「ニールは仕事わかってるから…じゃあ、レン君今からちょっといい?
軽めに仕事の説明しちゃうから。」
明日から交代でということで、3人でスケジュールを詰めていた。
リンと私は授業の間は2人で自主練習、空き時間は先生のところに行って練習をすることになっている。
もちろん、魔法学校の生徒が質問に来たりした場合は私達は遠慮することになっている。
カミラ先生は
「私のところには質問に来る子は少ないからみっちり練習できると思いますよ?」
と微笑んでいたけど。リンには頑張ってほしい。
カミラ先生、優しい感じだけど、授業内容は結構キツかったからなぁ…。
これもリンのためだ。
ーーーー
練習が始まったら、リンは
「ひたすら『あー』だけ言ってたよ…。喉痛い…。」
そう嘆いていた。
多分発声が良くないんだろうな。その辺の矯正をカミラ先生はしているらしい。
のど飴をあげようと思ったがもうストックが切れていた。
翌日、カールさんの研究室に空き時間にお邪魔して飴を作ることにした。
「マリーダ、久しぶり〜!」
「リリア!来てるなら言ってよ!」
「ごめん、どうせすぐ会うだろうと思って。」
久しぶりにマリーダと話す。エリーちゃんの話やマリオが相変わらずな話、
シャロンちゃんが婚活を始めたらしいという話など友人達の近況話や
今度はミナ大陸に行くので色々情報を教えてもらう。
ミナは連合国で小さな国が集まって一国という状態というのは学校でやったのだが、
お風呂の件や巫女の件でもそうだったが、割と保守的な国なのだろうということしか知らない。
「ミナの人達って勤勉、誠実を好むから、真面目に半年か1年くらい活動してれば
許可は降りるんじゃないかなぁ。まぁ、一庶民の意見だけどね?」
とにかく真面目に取り組むことが一番ってことね。
前回の反省もあるので、素直にそうするのが一番だろう。
でも…半年から1年か…この大陸に滞在するのは5の月の終わりまで。
エリーちゃんの結婚式とかもあるから早くても14の月あたり。
その時には私のタイムリミットは過ぎている。
早めに演目内容を決めておかないと。
私が帰ったら、慣れてないリリアも困るだろうし、私が残ったとしても、
直前まで悩んでいた場合、演目の構成どころではなくなってしまうかもしれないし。
そんなことを考えていたら、顔がこわばっていたらしく、
「リリア?大丈夫?巫女がそんな顔したらまずいんじゃない?」
そう言ってマリーダに眉間のあたりを指で撫でられた。
どうやら眉間にシワがよってたらしい。
「そうだね。なんか色々迷ってることがあってさ…ついね。」
「相談乗るよ?」
「うん…。自分の決断が人の人生を左右しちゃうとしたら、自分1人で決めていいのかなって。」
「人の決断なんて、そんなものだよ?」
「それが…人の生きるか死ぬかに関わっていても?」
「そんな物騒なの?その人はその決断で…そうなることを知ってるの?」
「多分…。」
「その人も迷ってるか、リリアを信じて決断を任せてる…とか?
私が当人なはわけではないから、わからないけど。」
そうか…リリアも迷ってる。私と一緒で。だから出て来ないのかも。
この3ヶ月の間はそこまで忙しくないから、ゆっくり考えて、
リリアとも話合えたらいいなぁ。
「マリーダ、ありがとう。」
「ろくな答えじゃなかったけど、役立てたならよかった。 私で良かったらまた相談乗るし。」
「マリーダもあんまり1人で仕事抱えないようにね?」
話している間も手を止めずに仕事をしていたマリーダに私は微笑んで言った。
「下っ端だからしょうがないんだけど…善処するよ…。」
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