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117.帰るってどこに?

チーアの祭りが終わり、今日、ゴナヤへ移動する。

荷物をまとめていると、戸をノックする音。


「リリアー、荷物纏まったかー?」


ニールさんだ。


「まだー。もうちょっと待ってー?」


「入ってええか?」


もう扉開けてるし!


「もー、まだって言ってるのにー。着替え中だったらどうする気なの?」


「それは…考えてなかったわ…。はよ話したくて。」


ニールさんが赤くなる。だったらやらなきゃいいのにね!


「なぁ…こないだ酔っ払った時のこと、覚えてるか?」


「ううん…全然…私なんか言った?」


もちろん嘘だ。覚えてる。でもあれが本当だなんて誰も思わないはずだ。


「なんか探し物だとか王子様だとか言うてたわ。

そういや…前言うてた探し物ってなんなん?」


「内緒。」


「俺にも言えへんの?」


「…うん。」


「リリア…前にも探し物が見つかったらお別れみたいなこと言ったの覚えてるか?

リリアは…どっか遠いとこに行ったりせんよな?」


「そんなこと言ったっけ?お兄ちゃんは心配性だなぁ?」


わざと茶化していったら、急に後ろから抱きしめられた。


「なぁ、もう一緒にクラーミストに帰ろか…?」


「私、まだ巫女は辞めないよ?みんなも応援してくれてるし、

リンとプリシラとももう少し一緒に頑張りたい。それに歌うの好きだし。

でも…………ニールさんとも一緒に居たい。だから……今は…兄妹でいようよ。」


「そか………じゃあ、巫女辞めたいって思ったら…

いつでもええから。一緒に帰ろな?そしたら兄妹やなく、一緒に…」


「ニールさん!どこー!?これ馬車に乗せていいのー?」


廊下からリンの声がする。ニールさんを探しているみたい。


「続きはそん時ちゃんと言うわ。だから覚えといて。

なんか運んでええもんある?」


「じゃあこれ持って行って。お兄ちゃん?」


「おう。」


ニールさんはデレずに返事して、荷物持って廊下へ出て行った。



私はなんとなく呼びかけるように祈った。


「プミロア様…帰ってらっしゃいますか?」


「…エスパーにでもなりました?」


私を光が包むようあつまる。


「なんとなくですよ…。

 あの…帰ったら私の記憶が消えたりとか…しませんか?」


「消えませんね。アイリは向こうの世界との繋がりがほしいだけですからね。

記憶が消えてしまったら意味ありませんし。」


「そうですか…。」


「普通記憶が消えるなんて喜ばしいことではないと思うんですけど。

あぁ…そういうことでしたか。確かにそうですね。」


「心読んで勝手に納得しないでくださいよ。

記憶が消えてしまえば辛いのは別れの時だけなのにって…思っただけです。

ところでプミロア様、 アイリさんがイジったって…どの程度だかわかりますか?」


「元のあなたがわからないのでなんとも言えませんね。」


「じゃあ、容姿がこんなだとか、勉強ができるだとか…。」


「そういうことでしたら。容姿は黒髪黒目ですが、

少しアイリっぽい感じでしたね。よくわからないですけど、

『盛ればこれくらいいけるわね、本物には程遠いけど』って言ってましたが。

勉強は学年トップって言ってましたけど…それってどう言う意味ですか?」


「もはや別人じゃないですか…そこに戻るんですか…私。」


盛大にため息を吐く。


「私は戻ってほしいですけど…無理強いはできません…

しかし、戻らない場合、わかってますよね?」


「えぇ。10年なら…27、28歳でしょ?それくらいで病で亡くなる方だっていますしね…。」


なんとなく目を伏せる。でも、リリアはそれでもいいのかな…?

これはあの子の人生でもある。いくら元々は同じと言っても私一人では決められない。


「まだ決める必要はありませんよ?中にいる子だって…まだ話せていないのでしょう?

帰るのが早くなるには構いませんが、帰らないことは…

そんな急がなくても…。」


プミロア様としては帰ってほしいんだろうな。

アイリさんもしょっちゅうあっちに行かなくなるだろうし。


「ですから無理強いはしませんよ?とにかくよく考えてくださいね?

私、帰って来たばかりで少し疲れたので、休みますから!」


そう言ってプミロア様は消えていった。都合悪くなって逃げたな、あれは。

しばらくはきっと呼んでも出てこない気だ。


「リリアさーん!支度遅い!手伝いに来たよ!」


「ごめん。プミロア様とお話ししてたよ。」


リンがやって来た。


「次の踊り場での話?大変だねー?

次の踊り場でやる曲さー、ゆっくりな曲多くない?」


「その次の踊り場でやる曲は全部ゆっくりだよ?

リンは歌の練習もっと頑張らないとねー?」


「う…」


「この大陸での演目終わったら、

一回ホーリーテイルで歌の先生に会いに行ってみようか?」


「そしたら上手くなるかな?」


「まだ会えるかも決まってないよぉ?とりあえず、お手紙書いてみるね。」


リンが無邪気に笑うものだから、私もつられて笑う。

カミラ先生、会ってくれるかな?

ルーロウ校長にお願いすればいいんだろうけど、いきなり校長はやめよう。

カールさんにまず手紙を書こう。

その前にジャンさんとイグニスさんに相談しないとね。


もし、帰ることに決めても、リリアが巫女を続けるなら困らないように、

出来ることをやっておかなきゃ。

残ったとして、私がいなくなってもリンやプリシラが困らないように。



あと13ヶ月か…。





読んでくださってありがとうございます!

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