109.衣装提供
オーサの港に着くと、シリルさんとケイさん、ライザさんが待っていた。
「リリアちゃん、おかえりー!」
シリルさんが抱きしめてくれた。
「ただいま、お母さん。」
もうシリルさんのことは普通にお母さんと呼べてしまう自分がいる。
シリルさんは久しぶりに娘の顔が見たいとそれだけのために出迎えに来てくれていた。
ケイさん、ライザさんはなぜいるかというと、
ブレイの踊り場が決まった時点で知らせてほしいと出発前に
言われていたから決まったことを手紙に書いたのだ。
そうしたら、3人分の衣装を提供してくれるとケイさんから返事が来た。
嬉しい申し出なので、即お願いをしたら、こうして出迎えてくれたというわけだ。
「お久しぶりですね、ケイさん、ライザさん。」
「「久しぶり(ね)。」」
「俺もいるんだけど…。」
ラウルさん、いたのか。布に埋もれてて気づかなかったわ…。
「初めての演目にも来てくれた人たちだ!」
リンとプリシラには紹介してなかったっけ?
「この人達はケイさん、ライザさん、えっと…ラウルさん。
ケイさんは魔法使いで、ライザさんとラウルさんは商人だよ。
ブレイ大陸、バナンの踊り場用に衣装を提供してくれるって!!」
「本当に!手作り衣装じゃなくなるの?!」
「私やリリアの作ったガタガタの衣装じゃなく?」
ガタガタで悪かったね!確かに遠目から見ればOKでも、
着心地いい訳じゃないし、裏を見るとガタガタだけどさ!!そこまで言わなくても…。
私が凹んでいるのが目に見えたのか、2人は「あっ」という顔をする。
「「ご…ごめんなさい…。」」
「本当のことだし、プリシラは半分自分で作ってるしね…。」
「う…」
「衣装をご寄進くださるということでしょうか?」
イグニスさんが割って入る。イグニスさん、空気読んだな?
「寄進というほどのものではありませんが、数着提供させていただきます。
前回の演目でうちの小物をお使いいただいたようなので。」
イグニスさんはオーサの演目を見ていないので、私にそうなの?と言った顔をしているが、
あれは私が作ったバージョンなんだけど…と困っていると、ライザさんが小声で、
「そういうことにしておきなさい。その方が話が早いのよ?
あれは男性に言ってもよくわからないし、私はまた衣装が売れればいいの。」
確かにガーターベルトを男性に見せてもわからないものだ。
しかし、ケイさんは除く。でも、衣装が売れるとは?
ライザさんが小声で続ける。
「あの演目の後、斬新な衣装だったからあの長い靴下とか探し回る女の子がいたのよ?
それでガーターベルトが結構売れたの。
それと同じ効果があれば数着提供したってお釣りがくるわ。」
そういうことか…さすがライザさん。
笑っているとイグニスさんが不思議そうな顔をする。
「リリアさん、どうしたんだい?」
「いえ、なんでもないですよ!
今度の演目は衣装作らなくていいから練習に専念できるなぁって!!」
実際問題そうなのだ。練習しないといけないから本当に助かる申し出だったりする。
「衣装のことはわからないので、巫女達と話してください。打合せはどちらで?」
「では店の方で。」
「では私達はあちらの方で待っていますので。終わったら声を掛けてくださいね。」
実は大体の打合せは手紙で済んでいるので、実物を見て試着という感じなんだけどね。
イグニスさんはニールさん達の方に行ってしまった。
ニールさんは衣装の話をしている間はシリルさんと話している。
レンも一緒だ。なんか武道の話っぽいな…。イグニスさんは話についていけるんだろうか。
ちょっと心配だけど、私は衣装の話をしなければ。
「姉さん、店で打合せするならこの布の意味は…?」
ラウルさんの声が聞こえた気がするけど、気のせいだと思おう。
思わないと気の毒すぎる。
お願いした衣装はちょっと攻めた感じの制服系衣装と普通のワンピースの2着。
普通のワンピースの方はミナ大陸で使う予定だ。制服系の衣装はブレイ用。
ワンピースと制服の上も組み合わせられるようにデザインしてほしいという無茶振り付きで。
ケイさんには手紙でこんな感じーって簡単な絵では説明したけど…
どうなっただろう?
普通のワンピースは白の長いワンピースだった。
シンプルだけど、胸のあたりに飾りがついている。
制服の方の上はマントのようになっていた。マントは紺で縁どりがされている。
ワンピースの方と組み合わせると神官のような感じになる。
制服の方も膝丈のワンピースと言った感じだった。
ただ、こっちはパフスリーブで襟がついている。
制服の方のセットを着ると美少女ゲーの制服といった感じになる。
ちょっとエロゲっぽいけど…リンとプリシラは着てくれるだろうか…?
「ねぇ、これで踊ると下着見えない?」
「もちろん見えるね。だからこれ履くんだよ。」
取り出すのは見せパンたるものだ。段フリルがついていて見えても安心設計!
スカートの膨らみを出すのにも役立つ、パニエの役割でもある。
「へぇ。可愛いですわね。」
「でしょ?でも、ケイさんこれ本当に提供でいいの?結構大変だったんじゃ?」
「かわいいから楽しかった。」
作ってて楽しかったらしい。さすがケイさん。
「スカートがふんわり、かわいい。」
わかってらっしゃる!
「リリアちゃんは斬新なのを作るから、ここにしかないデザインになって、
提供しがいがあるわ。きっとまた売れるわね。」
ライザさんはふふふっと色っぽく笑ってケイさんを見た。
…なんか、2人を見てると百合な世界にしか見えないんだけどさ。
そう思ってるとプリシラが小声で話掛けてきた。
「ねぇ、ケイさんって女性よね…?なんでライザさんはあんな視線を?」
あ、やっぱ気になったんだ。
「ケイさん、あぁ見えても男の人だからね?」
「「えぇ!!」」
小声でもリンには聞こえてるらしく、2人で驚いていた。
私も最初そうだったなぁ…懐かしいわー。
読んでくださってありがとうございます!