108.わかればよろしい!
エリーちゃんとはゆっくり遊べたりはしなかったけど、
ロサッポからダハテまでの道のりも一緒に来てくれたので、夜に話はできた。
エヴァルドルフ君とエリーちゃんは婚約しても学校にいた時の関係性と変わらなかった。
つまらな…げふん、げふん。清らかな交際をしているとだけ言っておく。
「結婚式には呼ぶから!巫女としての仕事で呼ぶから。休めなくても来れるように。」
と別れ際エリーちゃんは言っていた。
結婚式するとしたら、あと1年くらいか…それまでこちら世界にいれればいいなぁ。
リリア言った「帰らなくていい」が本当なら帰りたく無くなって来ちゃったな…
家族や友達に会いたい。それだけが帰りたい理由だったのだが、
肝心の友人や家族の顔もあやふやになっていることに気がついた。
残る気持ちはリリアのために向こうに帰ろう。この身体が壊れる前に。そう思っていた。
しかし、こないだの私の中のリリアの言葉を聞く限り、その必要はないと。
本当にリリアが存在しないのなら、私はここに居たい。
巫女の仕事も大変だけど面白いし、家族みたいな人たちと友達。巫女の仲間。
それに…
なぜかニールさんのことが思い浮かぶ。あの人は家族みたいな人の1人だし!
そんな風に頭を振っていると、
「急がんと、船出るで?」
「あぁあぁ…ごめん。ちょっと考え事!」
ニールさんにせっつかれて、顔を赤らめながら急いで荷物を持って船に乗り込んだ。
現在、私達はホーリーテイルからブレイ大陸に向かっている。
なぜブレイなのかというと、あのあとジャンさんから連絡があって、
ブレイ大陸の踊り場の許可が降りていたから。
でもねー、かなーりスケジュールパンパンなんだよねー。
しかし、そのスケジュールパンパンなのは私に時間がないから、
なる早って言っちゃったせいなのよね…。
私の状況がよくわからないからみんな巻き込んでしまってホント申し訳ない。
帰る必要ないならこんな無茶なスケジュールにする必要ないんだけど…
今更言えません…。それに本当に帰らなくていいのかはプミロア様の調査待ちだし。
とりあえずこなすしかない。
ブレイの会場でやるのは13の月の頭。
現在移動の真っ只中なので、あと2ヶ月切ってる。
それで、ラフィティ大陸、ゴナヤでの演目は1の月。
年始しばらくしての予定だ。年末年始はラフィティで過ごすことになるっぽい。
移動の船の中で、ブレイとラフィティの演目のセトリを考えることにした。
リン、プリシラも一緒だ。
「まずはブレイでなにやるかだよね!」
リンが腕組みしながら言う。
「練習期間がやはり少ないですから、クラリティでやった演目が基本となりますわね。」
「ラフィティでやる演目も練習しておきたいし、2つを混ぜた感じにする?」
「例えば?」
「浄化はもう曲数に数えないで、もう舞台袖で歌うことにするけどねー、
バナンでは最初にオーサでやった曲で始めて、次に剣舞やった曲。
プリシラの故郷の曲やって、新曲2曲。
1曲はゆっくりで大人しめ。もう1曲はリンが気持ちよく踊れる曲にしようと思うの。」
連続で激しい曲はキツイ。MCナシだもん。
合間にバラードを入れないとリンは問題なさそうだけど、プリシラと私が持たない。
人魚も丈夫な方だけど、剣舞を含めて5曲連チャンはシンドい。
それにバラード系も持ち歌に入れて行かないと。
マリオ、マリーダに手紙を書いて、ラフィティ、ミナの演目傾向も聞いていたのだ。
ラフィティは派手な演目が受けるけど、バク転とかそう言った派手さじゃないらしい。
マリオには【女性らしいキラキラした感じ】と言われたが…どんなのだ?
そしてミナは保守的な感じらしく、普段歌っているような曲はウケが悪い様子。
バラードの方が良さそうなので、そちらの練習もし始めたい。
「ゆっくりの曲は踊りは簡単だから、みんなで合わせるのが一番だね。
あと…リンは歌の練習。バナンでは無理に声を出さない方向で。」
「うぅ、頑張る…。」
プリシラはニヤリという顔をして、リンを見た。調子乗らないようにプリシラにも。
「みんなで合わせるのが一番だから、踊りが遅れないようにね。」
「努力しますわ…。」
一応釘はさしておいた。
「それで、ラフィティではオーサでやったのを省いて、
ゆっくり目の曲を足すからそのつもりでいてね。」
「覚える曲が多いよー!!」
早くもリンが泣き言を言っている。プリシラも横でコクコク頷いているけど。
「新しい曲やるたびに振り考えなきゃいけないのは私も辛いんだよ…?」
私も泣き言の一つは言わせてほしい。
曲は向こうの世界で覚えているものだけど、振りは全て完コピしてるわけないし、
プリシラでも踊れるように変更してる。
大陸ごとに受けるんじゃないかっていう歌も脳内再生で思い出してるんだから!
ん?そういえば家族とか友人の顔は思い出せないのになんで歌は思い出せるんだろう…?
私、そんな薄情じゃなかったはずなんだけど。
「リリアさーん!怒ったの?怒ったなら謝るから!!あの歌は勘弁して!」
リンの言葉でふと我に帰る。
「あ、ごめん、ごめん。怒ったわけじゃないんだけど…。ちょっと考え事しちゃって。
でも、気持ちよく踊れるって意味ではあの歌を演目に入れてもいいか…。
儀式の時楽しそうに踊ってたもんね。」
プリシラとリンはちょっと苦笑いしたが、
「魔法使わなきゃあの曲楽しい曲だしねー?」
「だだ、サビしかしらないですわ?」
あ…そうかあの曲、Aメロは落語わからないと意味わからないか。
「やっぱりやめとこう。またプリシラにどういう意味って聞かれちゃうし。」
と言ったら、プリシラから突っ込みが入る。
「リリアは時々訳のわからないこと言い出しますわよね?」
「…プリシラ、そんなに歌ってほしい?」
満面の黒い笑みを浮かべたら、
「「ごめんなさい!!」」
2人に全力で謝られた。うん、分かればよろしい!
読んでくださってありがとうございます!