107.チート用語
「リリアさん…でいいのかしら?」
ベッドに入って眠ったはずなのにプミロア様の声。
なんで?
「それは女神ですからね。」
もうなんでもありなんですね。
「そうですかね?出来ないことの方が多いですよ?」
心読むから声出さなくていいや。夢の中だし。
「あの…一応喋って貰えますか?私1人喋るの寂しいので。」
そういうものかなぁ。
「そういうものですよ!私のリハビリだと思ってください。」
「リハビリって…。」
「聞きたいことってなんでしょう?」
「えっと、まず、どこ行ってたんですか?」
「アイリを探しに行っていました。
手紙を追っかけて行ったら辿り着きましたが…また逃げられてしまって。」
アイリさん、どんだけ高スペックなのよ?神じゃないんだよね?
「全くその通りです。勘がいいんですかねぇ。」
「それにしても時間がかかりましたね。手紙出して4ヶ月くらいお話出来ませんでしたけど。」
「すぐ帰ってきたつもりだったんですけど…時間感覚に疎いもので。」
疎いで済む期間じゃない気がするけど。
「…あと、聞きたいことはなんですか…?」
あ、ちょっと怒った。
「怒ってませんから!」
「…。リリアが…私の中いる子の方が『私達は元々ずっと一緒で帰る必要なんてない』
って言ってて。どういうことなのかプミロア様、分かりませんか?」
「正直分かりかねますが…中にこもっている子が存在しないということでしょうか…それとも…
とりあえず、今度はあなたのことを調べないといけないかもしれません。
元々ずっと一緒というなら…急いで調べないとまずそうですね。」
「アイリさん探さなくていいんですか?」
「追いかけると逃げるみたいなので、もう追い回すのはやめておきます。
踊り場での演目も成功させましたし、面白そうなら勝手に向こうから来ますよ…。」
なにやら諦めた感のある声だなぁ。
「…えぇ。とりあえず、あなたのことを詳しく調べてみましょう。
今度からどれくらいかかるか連絡します。」
やっぱり、さっきの気にしてたんだ。
「…。聞きたいことは今のうちに聞いておいてください。」
「一応確認なんですけど、5ヶ月くらい後にまた踊り場で演目やります。
大丈夫ですか?忘れないでくださいね?」
「大丈夫ですよ!さっき言われたばかりですし!」
「あと…プミロア様の巫女は恋愛禁止ですか?」
「あぁ。あの噂ですか。私は気にしませんけど、気にする方もいるらしいですね。
アイリ以外と話せませんでしたから、ヤキモチ以前の問題ですし。
聞いたところでどうするんです?」
私もなんで聞いたのかよくわからない。今のうちとせっつかれたからなんとなく。
「なんとなくで聞かないでくださいね?一応女神ですよ?」
自分で一応って言っちゃったよ…。
「なんかアイリに似て来てる気がします…。調べておきますからね!」
プミロア様は女神っぽくない捨て台詞を言って消えていった。
朝になった。プミロア様話したけど、なにも解決してない。
一応解決に向けて動いてはくれているけどさ。
考えたところでどうしようも出来ないので、
次の大陸でやる演目とかそういうことを考えておかないとね。
後は、微妙に空いた5ヶ月という期間だ。
移動や準備期間が3ヶ月は必要になるとして、あとの2ヶ月をどうするのか。
昨日のうちにジャンさんには演目が無事終わったことと、
今後どうするのか手紙を書いて送ってある。
その返事待ちと、ロサッポにある分社にイグニスさんが話をしに行っているので、
それを待つことになっている。
リンはエリーちゃんと遊ぶと言っていた。随分懐かれてるなエリーちゃん…。
男子3名はきっと鍛錬だろう。エヴァルドルフ君、レンと手合わせしたがってたし。
私はプリシラの故郷についてゆっくり話を聞いてみようと思ったので、
宿でのんびり話をしていた。
忙しくってそれどころじゃなかったから、聞けずじまいだったし。
「プリシラってクラリティ大陸の出身ってことになってるじゃない?
ここから エルフの里って近いの?」
「ええ。大陸こそ違えど、人が住む地で一番近いのはクラリティですわ。」
「え?クラリティにあるわけじゃないんだ?」
「ホーリーリングの方ですわ。」
ホーリーリングはホーリーテイルの地続きの大陸で、その通り、輪のような形をしている。
4つの大陸を囲うような輪で、真ん中にホーリーテイルがくっついている。
θを横にしたような形といえば分かりやすいのか。
ただ、ホーリーリングが結界のような役割を果たしているというのが定説で、
ホーリーリングは人が住む地ではないと言われている。
そこに住んでるとは…。まぁ、エルフだし驚くことじゃないのかもだけど。
「せっかく近くまで来たので、ちょっと帰るのもアリですわね。
里の外に行って、巫女になって、大きな踊り場で歌ったと自慢しに!」
「え?それでも遠いんじゃ…?」
「転移を使えばあっという間に着きますわ。」
転移!!出た!チート用語の一つ!
「何それ!プリシラできるの?」
「え…えぇ。古代魔法の一種ですから。…もうエルフくらいしか使えないでしょうね。
転移は距離に比例しますから、クラリティ位近いなら行って帰るくらい問題ないですわ。」
「それは…私も覚えられたりしない?」
「んー、魔力量としては問題ないですわね…詠唱、出来て?」
「…今の発言、忘れて。」
そんな歌ないわ。無詠唱羨ましいわー。
「使うのが難しいのでこちらでは失われたの。後は治癒とかも使えますわよ?
その話は戻って来て、移動中にでもしましょうか。イグニスがいない時にでも。
では、半日ほど行って来ますわ♪
誰かに聞かれたら買い物に出てるとでも言っておいてくださいな。」
そう行って鼻歌まじりにプリシラは消えた。
さっきちらっと言ってた治癒は使えたら便利そう。治癒ならまだ歌もありそうだし。
プリシラ行っちゃったし、偽証石なしで変化する練習でもしようかな。
でもここで歌うの迷惑だし、外じゃ出来ないし…。
いいや、エリーちゃん達探して一緒に遊ぼーっと!!
読んでくださってありがとうございます!