挿話〜王族の正体〜
本編には直接関係ありません。
エリーはその日手紙を書いていた。
【危うく正体がバレるとこでしたよ?王子?】
そんな内容だ。
エリーが手紙を書いている相手はクラリティ大陸の第四王子であった。
王様はその子が生まれたとき、
「また男児か…余は女児が欲しかった…」
と零したという。彼は可愛がられはしたが、期待はされていなかった。
そんな中、彼には他のものにはない才能が発覚する。
魔法が使えたのだ。
宮廷の魔法使いの真似をしたら使えたということでそれは発覚した。
彼はこの国を継ぐという可能性は低い。
ただ、他国に王子が魔法使いだと知れた場合と色々問題はあった。
今のところ、千年前の悲劇のようなことは起きていないが、
悪意あるものに戦争利用された場合や存在を疎まれて暗殺されるなどといった可能性もある。
しかし魔法学校には従者は連れて行くことは無理であったし、
従者をつけられたとしても正体が知れ渡りやすい。
そこで大臣達は既に入学している騎士団長の娘に王子を頼むことにした。
王子とは以前から面識があったし、確かな腕があった。
彼はバカではなかったから、魔法の勉強をすれば国のためになることや、
自分の存在が国の不安分子には面白くないことを理解していた。
それ故、単身で魔法学校へ入学することをよしとした。
周りには騎士団長の遠縁ということにして、魔法学校に通い始めた。
最初は浮きがちだったが、徐々に友人ができ、
今では友人とキアバに巫女の演目を見に行くほどになっていた。
彼はある巫女のために国に手紙を書き、
巫女のために踊り場の許可が降りるようにとお願いをした。
ただ、彼の誤算は巫女達がその許可を取りに来るのが時間がかかり、
空いている日が少なかったということだろう。
11歳の彼にそこまで求めるのは酷だ。
第四王子エリオット・プリンツ・フォン・クラリティに。
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