95.言わなくちゃ伝わらないこと
「ねぇ、ニールさん。大事な話があるの…」
「なんや?リリア。畏まって。」
「あのね…」
上目遣いでニールさんを見る。時間がない、早く言わなきゃ。
「…お金貸してください…。」
盛大にずっこけるニールさん。
「なんや、そないなことか…。」
ニールさんが眉間に手を当てている。いやいや、大事な話ですよ!
なにせオーサの催事までに演目を形にしないといけないのだ。
練習も去ることながら、大事なこと。
衣装だ。
3人分の衣装が欲しい。しかもかわいいやつ!
ケイさんに頼むっていう手もあったのだが、時間がなさそうなのと、
さっき3人で話した結果、やはり元手があまりない…。
2人は見習いだったので、あまりお給料もでていなかったらしい。
寮住まいで食費や雑費程度だったため、なんとか暮らせたらしいが、
かわいい服を買うなどの贅沢な事は出来ないようだ。
ケイさんの服、購入すると何気に高いのだ。オートクチュールってやつだからだと思う。
なので、布を買って私が作ることにしたのだが、3人分の布や糸買うにも結構な金額がかかる。
というわけで、冒頭のやりとりに戻る。
はぁーーーと盛大なため息をつきながらニールさんが言う。
「貸さん!!!」
「えーー!!!困る!!」
「買うてやる!!返さんでええ!!」
「え…でも…」
「なに水臭いこと言うとるん?妹の初舞台やで?それぐらいはせんと。
それにな、オカンから支度金も預かっとる。それは自分のために使い?
他の人やのうて自分のためにな。」
そう言って私の頭を撫でるニールさん…は!視線を感じる!
後ろを振り返ると、やはりプリシラだった。
「あ、ありがとう…とりあえず、今日はお店もそろそろ閉まるし、
買い物は明日にするね!あと、リンにアレ教えて欲しいの。バク転。」
「おー、お安い御用や。レンー!おまえも来いやー!」
「リンー、ニールさんが教えてくれるってー。」
リンレンが揃ってニールさんに駆け寄る。レンは尻尾まで振って…
レンとはちゃんと話したこと無いけど、その様子は完全に犬だ。
ニールさんが私から離れた事を確認して、プリシラが近寄ってくる。
「リリア、確認ですけど、ニールさんとはなんともないのですよね?」
「少なくとも、恋人とかそういう関係ではないよ?本当に兄みたいな人で。」
「そうならいいの。恋人は…いるのかしら?」
「さぁ…聞いたことはないけど、モテるみたいだよ?」
そういえばニールさんの恋人などの話は聞いたことがない。モテるみたいだけど…。
今度聞いてみようかな…あ、なんで私まで気にしてるんだろ?
「先に言っておくと、あの人はクラーケンだよ?」
「クラーケンだからって何です?愛があれば種族など!!」
そういうもんなんだな、やっぱり。好きなら別にいいのか。
「それより、私もちゃんと紹介してください!」
「あ、そうだったね。これから一緒に世界巡りするんだしね。」
そう言って、バク転練習中の3人のところに向かった。
リンは補助ありでもうバク転ができていた。さすがだ。
補助をしながら、
「あれやなー、裾の長いスカートでやるもんやないな…。」
ちゃんと視線を外しながらいうニールさん。この人、変に真面目。
「姉ちゃんをそういう目でみないでくださいね!!」
レン君がちょっと怒り気味にいう。
「俺は子どもには興味ないっちゅーねん!」
「ちょっと!誰が子どもよ!」
「えっと。お取り込み中悪いけど。
そういえばちゃんと自己紹介してないからしようと思うんだけど、いいかな?」
揉めそうだったので割って入る。
「じゃあ、言い出しっぺの私からするね。リリアです。種族は人魚。歳は多分17歳。」
さっ、と隣にいたニールさんに振る。人魚だと言ったことにニールさんが戸惑っている。
「え、俺?!ニール、種族は…言ってええんか?クラーケン。歳は26。
種族は違うけど、リリアの兄で護衛や。」
それなりに一緒にいるけど、歳初めて知ったわ。26なんだ…。結構歳離れてたんだな。
「リン、種族は狼獣人。歳は14。」
「レン、種族も歳も双子だから同じ。姉ちゃんの護衛。」
犬じゃなかった。白い狼か。そう思うとカッコいいな…。
「じゃあ最後に私ね。プリシラです。種族はエルフ。歳は内緒です♪」
「エルフ!!本当にいるんや…初めて見た…。ところで、何で種族バラしたん?」
私の方を見ながらニールさんがいうので、昨日リンにされた説明をする。
「じゃあ、昨日の手合わせは俺がクラーケンだって分かっててやってたんか。」
ニールさんはレンの方を見ながらいう。
「ええ。普通の人じゃないからほぼ全力出しました。それで負けちゃったんだから、
しょうがないです。」
「いや、まだまだ伸びるやろ。自分まだ14やし。」
昨日のうちに男同士、肉体言語で会話していたようだ。仲がいいのはそれでなのか…。
何だかな。ドラ◯ンボー◯みたいな人たちだなぁ。
それはさておき。
「ねぇ、リン。長いスカートだと派手な踊りしづらいだろうし、
衣装どんなのがいいかな?護衛の時はなに着るつもりだった?」
「できれば足が出ない方がいいなぁ。護衛の時…長いパンツとか?」
「えー、それじゃ可愛くない!ぴたっとしたパンツならいいけど、
素材が手に入るかわからないし…。そうだ!こういう長い靴下履けばいいかな?」
少しスカートをたくし上げてみせる。
「落ちてこない?」
「落ちてこないようにね、ベルトで留まってるんだけど…
どうなってるかは寮で説明するね。」
これ以上は外ではちょっと問題があるのでやめておく。
リンの衣装はキュロットスカートにしておこう。
「プリシラはー?どんなのが着たいっていうのある?」
「特にありませんわ。強いて言うなら、ニールさんにアピールできるので。」
うーん…どんなのだ?
読んでくださってありがとうございます!リン、レンの元ネタはアレです。
なのに歌が下手っていう設定…。