94.社長命令?
「さて、みんなに集まってもらったわけだが。」
ジャンさんが話始める。
ここ、応接室にいるのは、プリシラ、リン、レン、ニールさん、イグニスさんと私。
リンの弟、レンには今日初めて会う。
リンと同じ白い髪の癖毛だが、瞳の色が違う。レンは金色だ。
「リン、これから巫女の儀を行なってもらう。」
「え?!本当に!!」
リンが顔をくしゃくしゃにして笑う。レンも我がことのように喜んでいる。
可愛いなー。あんな酷いこと言ってた子と同一人物とは思えない。
横でプリシラが少し微妙な顔をしている。確かに複雑な心境だろう。
自分の護衛もいなくなっちゃったし活動がどうなるかもわからないもんね。
「これからの話をする。3週後に行われるオーサの港の催事が行われることは
前にも伝えてあったと思う。それに皆出てもらう。」
「え、リンもですか?!」
プリシラが反応する。見習い期間スキップしてるもんね。
正しい反応だよ。
「そうだ。1人ではなく、リリア、プリシラと一緒に、だ。」
「えっ!リリアさんだけじゃなくてプリシラも一緒なの?!
えーヤダなー。」
「嫌なら護衛に戻ってもらう。」
リンが「うっ」と言って黙る。プリシラも浮かない顔だ。
やっぱり誰も得しないな、このグループ…。
「あの…やっぱり…」
そう口を開こうとしたら、ジャンさんが遮るように言う。
「リリアさんはプミロア様の神託により
5大陸の大きな踊り場で演目を行うことになっている。
2人はリリアさんと一緒に大きな踊り場で演目をしてみたくないか…?」
2人ともピクリとなった。やはり巫女になった以上、
大舞台というのは憧れだろう。緊張はするだろうが。
「リリアさん、複数人で演目を行う巫女はあまりいません。
さらに言うと、獣人の巫女も。
新しい物好きのブレイ大陸の人々ならきっとすぐに人気が出るでしょう。
ブレイで大きい踊り場を借りるのも早くなると思います。」
ジャンさん、みんなに損がないことをアピールしてきたか。
抜け目ないな。
「更にクラリティ大陸はプリシラの故郷でもある。多少土地勘もあるでしょう。
地道な活動がしやすいかと。」
プリシラは曖昧な顔で頷く。んー、なんか怪しいな…。
でも、もうみんな3人でやっていくのは決定事項って感じだ。
私1人がゴネてもしょうがない。何よりプリシラとリンが納得してれば問題はないはず。
「各大陸を回る順番ですが…
リリアさんがお願いしているラフィティは返事待ちですね。
地道な活動を先にしますか?あとにしますか?」
「先で!」
これには被り気味で答えた。
地道に活動して慣れてから大きいところでやった方がいいに決まってる。
私も、他の2人もだ。
「では、最初にクラリティ大陸へ。次にミナ、ブレイ、 その間、返事次第でラフィティ。
最後にホーリーテイルの順で。
大陸間の移動や大きな踊り場で行う時はイグニスも同行出来るようにしましょう。
イグニスは巫女探しをしながら、同じ大陸へ行くように。
指示は手紙で送る。リリアさんは手紙送れましたよね?連絡は手紙で。
私は魔法使えませんが、教会にいる魔法使いに手紙を送ってもらうので、
やりとりは船便より断然早く行えますから。
まずは3週後のオーサの催事までにそれなりの演目をお願いします。」
「演目の指定は…」
「ないです。各自巫女に任せていますので。
全く経験がない子でしたら引退した他の神様の巫女などから
教えを乞うこともあるんですが、リリアさんはキアバで演目をやってましたし、
複数人の巫女は指導出来る人材がいません。」
イグニスさんが言う。
自分で考えろってことか…3週間で。辛いな…
しかも2人も練習してもらわないと。間に合うかしら…。
「では、リンは巫女の儀を。リリアさん、補助をお願いします。
護衛の2人は残って今後の予定をイグニスから聞くように。」
「「はい。」」
なんかレンくんとニールさんすでに仲よさそう。なんかあったのかな。
「では、これを。終わったらイグニスに渡しておいてください。
私はこれで。」
ジャンさんは行ってしまった。任されても困るんだけどな…。
プミロア様、ちゃんとでてきてくれるかな、色々心配。
とりあえず、小部屋でリンを着替えさせ、白い部屋へ連れて行く。
「ここで歌を捧げるんだけど…あの歌じゃなぁ…」
「どうするんです?リリア。」
プリシラが言う。私もここを考えてなかったんだよね。
巫女の仕事は歌と踊りを神様に捧げるんだった…
神様が喜んでくれないといけないんだった…忘れてたわー。
あ、歌と踊りだ。リンは踊ればいい。
「リン、私が歌うから、それに合わせて出来る範囲でいいから派手に踊って!」
部屋に入らず、歌う。
プミロア様がどんな人だかわからなかったからこないだは遠慮したけど、
あの人ならどの曲での大丈夫な気がする。
リンもわかる曲の方がいいので、昨日の笑う曲にしとく。
2人とも一瞬ビクッととしたが、発動しないのですぐ安心したよう。
リンは曲に合わせて即興で踊る。踊りの才能はあるよね、本当。
歌えたら最強なのになー。などと思っていると少し光がパァと広がり消えた。
「今、声が聞こえた!これでいいの?!」
「そうね、多分大丈夫よ。私もそんな感じだったし。」
プリシラが答える。え、あんなんで完了なの?イグニスさん、焦る訳だ。
リンを着替えさせて装束を返しに行く。
護衛2人はまだ話中だった。
「イグニスさん、これ返しにきました。ニールさん、終わったらちょっといい?」
「おう。」
「じゃ、後で。イグニスさん、私達は?」
「3週後ですので、練習をしておいてください。
私は明日にでも出発してしまうので、初舞台は見られませんが、頑張ってくださいね。
出発したらキアバで合流することになると思いますので、よろしくお願いします。」
「あ、わかりました。イグニスさんもお気をつけて。」
そう言って部屋を後にした。
プリシラが普段練習している広場で練習することにして移動の途中、
プリシラがいきなり
「ねぇ、あの護衛の彼は誰?!親しいみたいだけど!」
と詰め寄ってきた。おや…?
「あぁ、ニールさんって言って、私の護衛で、兄みたいな人だけど?」
じゃあ、あの人ともずっと一緒なのね!あぁ嬉しい。彼女はいるのかしら
と騒ぎ始めた…。
なんだか頭痛がするわ…。
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