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プロローグ

「あー、なんで来ちゃったんだろ…。」


私、結城遥(ゆうき はるか)は安物の浮き輪で海に浮かんでいた。


クラスメイトで美人の松永さんに誘われて調子に乗ったのがいけなかった。

私は容姿は中の中。成績は中の上。

辛うじてクラスの人気者が集まるグループに混ぜて「もらって」いる状況だ。


「来年は受験だし、みんなで海にでも行こう?男子も何人か誘って!」


そんなことをクラスで一番の美人に言われたら断れる訳もないんだけど。

誘われなければ、家で新刊の小説読むか、ゲームして遊んでるつもりだったから、

暇といえば暇だったんだけど。


「でも!でも!」


「あの状況が楽しめるほど、私の心は広くないよ…」




浜辺では一緒に来た男子たちは松永さんの水着姿に釘付けでそばを離れようともしないし、

近くの見知らぬ男子も松永さんに群がっている。

当人はそんな男子たちにも目もくれず、

女の子たちと新しい海の家のメニューを楽しそうに眺めている。

周囲の男たちの「取り巻き邪魔だ!」オーラと

女たちの「お前らこそ邪魔だ!」オーラが戦っている。

当事者になるのがまっぴらごめんの私はこうして海に避難してきたのだ。

しかし、逃げて来たはいいがカナヅチの私は

安い浮き輪でプカプカ浮かんでいるというわけで。



「はー。にしても松永さんはすごいなー。アイドルにでもなればいいのに…

私自身があんな美人で人気者ならアイドルになるけどなー。」


プカプカ浮かびながらひとりごとをつぶやく。

私も小さい頃はアイドルや有名人に憧れた。

しかし、小さい頃から自分の容姿が優れていないことに気がついていた私は

早々にそんな夢は捨てていた。

もっと歌が上手かったら、

そこそこの容姿でも夢は捨てなかったかも、とも。



「お、陸に変化あり。あー、やらかしてるねー。

あ、空手部の陽子に撃退されたっと。そりゃねぇ…」


ちょっと手荒な奴に松永さんがナンパされ、

ツワモノ女子に撃退されたところで、

私の視界が奪われた。



「もがぁ、うぅー…」


苦しい。波に呑まれて、浮き輪ごと転覆したらしい。

足もつかない。もうダメだ…。

陸の人たち私になんか気付いてないだろうし、

このまま死ぬのかしら…

そう考えながら、私の意識は遠のいていった。


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