義父母と鬼嫁のドリフな毎日~おやつ編~
義父の退院からまもなく2か月になろうとするある日、義母がうれしそうに言った。「お父さんね、体重5キロ増えたが。」「な~にぃ!?」思わず胸中にクールポコ的セリフがこだまする。
入院中、義母と義姉は義父が痩せてきたと心配していた。たしかに入院前と比べると、顔も肩も足も細くなった感があった。
だがそれは、もともと義父が肥満ぎみだっただけのこと。若い時から腎臓を患っていた義父は、蛋白質を1日あたり45グラム、塩分を6グラム以下に抑えた病院食を提供されていた。加えて毎日のリハビリ。食事と運動の相乗効果で、言わば入院中に5キロの減量を叶えていただいたのだった。
身長が165cmなので、体重57キロならBMI20.9で基準値以内。不自由な体を支えるには軽量な方が負担が少ない。チームを組み、緻密な食事メニューや運動プログラムを組んで下さったスタッフの方々に、私は心から感謝していた。
それが体重62キロとなればBMIは22.7に跳ね上がり、さらに5キロ増えれば上限の25ギリギリになってしまう。スタッフのみなさんのご努力が水の泡だ。
リビングでは私たちの目がある手前、間食は控えめにしているように見える。だが寝室の掃除に入ると、ごみ箱から出てくるのは大福の包装、カステラの包装、ビスケットの包装……。最近、心なしか顔が丸くなったような気がしていたが、まさか5キロも増えていたとは――「だめだこりゃ。」
「いいですか、5キロ増えたということは、常に5キロのおもりをしょっているのと同じことですよ。私たちでさえつらいですもん、お父さまにとってはなおさらだと思います。おやつを少し控えられた方がいいと思いますよ。」黙り込む義父。「な~ん、おやつちゃあんまり食べとらんがだけどねぇ。」と義母。どこがじゃ!!
そういえば最近、体の動きが鈍り、転びやすくなった印象もあった。入院中は毎日だったリハビリが週3回に減り、家では座って過ごすことが多いせいだと思っていたが、原因はそれだけではなかったようだ。
不自由な体を抱えた義父にとって、食べることが唯一の楽しみなのはわかる。けれどツケは自らに回るのだ。おやつによる蛋白質や塩分の過剰摂取は、腎臓への負担も大きくする。むくみは体重増加を加速させる。
食べたがる義父と、言いなりになってしまう義母。夫唱婦随……でもだめなものはだめ。せめて鬼嫁が防波堤にならなければ。