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煉獄の焔  作者: yukke
第九章 邪悪との邂逅
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第七話 『龍王』 冥界龍

 花凛が、大人しくしているのは違和感があるのだろうか。

神田や家族が必死になだめている。


「ご、ごめんなさい」


 しかし、先程から出る言葉はそればかりである。

闇に囚われていた花凛は、ある意味皆の期待を裏切る発言ばかりを、していたからである。


「花凛、俺だってお前と会う前は相当酷かったんだぞ。闇に囚われたお前以上に、荒んでいたぞ」


 神田が、フォローを入れてくる。しかし、それでもなかなか花凛は納得しない。

そんな中、美沙も花凛に必死に謝っている。


「花凛、ごめん。あなたを戻すためにはと思って、結構酷いこと言いまくっちゃったよ」


 花凛よりも、逆に美沙の方が花凛に対して申し訳なさそうな顔をしている。

花凛は神田のスーツを羽織り、ペタペタと裸足で美沙の元に向かうと、美沙の頭を撫でた。


「そんなこと無いよ、美沙。実際、その通りなんだから」


 その言い方は、どことなく男であった時の亮のしゃべり方に近かった。

その目も、年上である美沙を姉として見る目ではなく、妹として見ているようであった。


「でも、花凛……」


 花凛は、ゆっくりと首を振る。家族である皆は、何も悪くないと。

そう伝えたかった様である。そして言葉にしなくても、ちゃんと家族には伝わっていた。


「花凛、あまり自分を責めるなよ。また、闇に飲まれるぞ」


 そう言って、神田が花凛の後ろに現れ肩に手をやる。

すると、予想外の反応を花凛がしてくる。体をビクッとさせると、何と神田から離れていくのだ。


「おい、どうした? 花凛」


 その様子に、もちろん神田はキョトンとしている。

そして近付こうとすると、また離れていくのだ。


「お、おい。花凛」


「あっ、うっ……ご、ごめんなさい。な、何でか分からないけれど、顔が見られないの」


 花凛の顔が、今どういう状況かは分からないが。首まで真っ赤になっている事だけは、確かであった。


「全く、こういう事には慣れてないのか? 花凛」


 その神田の言葉に、花凛は小さく頷く。


「そりゃ、男の時でも彼女出来たこと無かったものね~」


「あ~!! 美沙、そういう事言わないで!」


 花凛は、慌てて美沙の口元に手やるが、既に言葉は発せられており無意味であった。


「なら、これから知っていけば良いだろう。俺でな」


 神田は、そう言うと花凛を後ろから抱きしめてくる。

再び、体をビクッとさせる花凛だが、あまりの神田の態度の急変に目を細めている。


「賢治さん、性格変わってない?」


「恋をすれば、男も女も変わるものなんだ」


「変わってたまるか~!!」


 神田の、名言臭いセリフを花凛は両断した。

自分が、今の現状で乙女になるわけにはいかないと、言い聞かせてきているようだが、それ以上にどんどん神田を好きになる自分も居て、戸惑っていたのだ。


 すると、亮の両親が神田と花凛の前に出てくる。


「花凛、俺達ではもうお前をどうすることも出来ないのかも知れない」


「私達は私達で、自分達の事で精一杯だわ。ごめんなさい」


 花凛は、頭を下げる元両親に対して少し残念な気持ちでもいた。

その残念な気持ちとは、また心の支えになって欲しいとかそういうものではなかった。

ただこの人達は、もう今の世界では生きるだけで限界なのだろうと、そこまで弱ってしまった元両親を見たくなかった、そんな思いがあった。


「大丈夫。父さん、母さん。今は生まれてきて良かったって、そう思える。育ててくれてありがとうって、ちゃんと言える。だから、弱い姿は見せないでくれ。両親には、いつまでも元気でいてほしいからさ」


 あえて花凛は、頭の中を男だった時の亮にして話した。

今は、その方が良いだろうと思ったからである。


「ありがとう」


「やっぱり、あなたは優しいわね」


 両親の目には大粒の涙がこぼれていた。

いつもいつも、両親は悩んでいたのだろう。自分達が育て損ねたと、そうかんがていたのだろう。

だからこそ、花凛のこの言葉は両親の胸に深く刻まれる事になった。


「何だか、お兄ちゃんを見たって感じだね。今は、もう女の子なのにね」


 美沙が、懐かしいそうな顔で花凛を見ている。

昔の亮を思い出している様にも見える。


 そして、次に両親は花凛を抱きしめている神田に顔を向けると。

丁寧にお辞儀をして、また丁寧な言葉で神田に挨拶をする。そう、改めて挨拶をしたのだ。


『神田さん。不出来な娘ですが、どうか宜しくお願いします』


「はい、わかりました」


「分かりましたじゃな~い! 娘は良いとして、お嫁には行かないってば!!」


 花凛は、神田に抱きしめられたまま足をばたつかせて、逃れようとしていた。


「なんだ? 俺じゃ嫌なのか?」


「はぅ?! うっ。い、嫌じゃ無い……」


 花凛は、消え入りそうな声で呟く様に言う。

だが、神田は再び聞きなおす。だが、至近距離なので聞こえているはずである。


「ん? 何と言った?」


 花凛は面白いくらいに、顔が真っ赤になっていく。


「い、嫌じゃないです」


「そうかそうか。それなら、俺の事が好きなんだな?」


 続け様に質問をする神田に、花凛は小さく頷く。

しかし、それもわざとなのだろうか。またしても、神田が聞きなおしている。


「ん? ちゃんと、言葉で言うんだ」


「うっ。う~! い、言わなきゃダメなの?」


「あぁ、そうしないと離さないぞ」


 その言葉に、花凛は観念したのだろうか。口を開けて、気持ちを言葉にしようとするも、中々声が出なかった。

声が喉まで出ているにも関わらず、中々その先へと進んでくれないのだ。


「あ、ぅあ……うぅ」


 それでも、何故だか分からないが、花凛は伝えたくてしょうがない気持ちになっている様である。

今は、それどころではないのだろう、だが逆に大切な者が増える事の方が、この後の戦いへの強い希望になると、花凛はそう考えていたからだろう。


「はぅ……くっ、す、好き……です」


 花凛は、消え入りそうな声で必死に言葉をひねり出す。

そしてその瞬間、花凛の顔は更に真っ赤になり、湯気まで出ていそうな位になっている。


「ありがとう、頑張ったな。花凛。俺もお前の事が好きだぞ」


 そう言って、神田は花凛の頭を撫でる。

花凛が、あれだけ必死になって出した言葉を、こうも簡単に言えるなんて。

年の功なのか、女たらしなのだろうか。花凛は、複雑な気持ちになっていた。





「さて、イチャイチャ恋愛ごっこはもう良いか?」


 すると、突然。寺の屋根から、そんな声が聞こえてくる。


「誰だ!」


 神田が、咄嗟に寺の屋根に目をやる。

すると、その屋根から誰かが飛び降りてくる。


 それは男性であった。しかし、決して大柄では無く、日本人の平均身長とほぼ同じである。

だが、装いは普通ではなかった。


 整った顔に、癖っ毛のある漆黒のセミロングで、目はつり目で花凛達を睨みつける。

その視線は冷たく、全ての者をその視線で凍り付かせる程のものである。


 そして、漆黒の軽鎧に身を包み、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。

その鎧の肩部分は龍の顔の形になっており、体を動かし安いように、肘や膝の周りには鎧は無く、布で出来た様な物を鎧の下に着こんでいた。


「ふん、先程から見ていたら。反吐が出るような事をしているな。こいつが、俺の子孫とは情けない事だ」


 その男は、そう話しかけてくる。

その言葉に、花凛も神田も驚きその男を警戒している。


「あなたが、私の先祖? まさか、あなたは……」


「お前の想像通りだ。誰か、俺の力に目覚めそうな気配がしてやって来たら、この有様とはな。ほんとに情けない。同じ“冥界龍”として、これほどに恥かしい事はないな」


 神田は、既に花凛を離していた。

花凛を抱きしめている場合ではない、こいつは危険だと直感していた。

それは花凛も同じであり、神田のスーツを脱ぎ捨てると炎を体に纏い、コルセットを作り出す。

そして、同時に翼や角を出していた。そう、花凛は危険性を察知して咄嗟に龍化したのだ。


「まぁ、待て。落ち着け、少し話をしに来ただけだ。そう、殺気立つな」


 そう言うと、冥界龍は両手を前にし花凛達をたしなめる。

冥界龍。あの、邪悪な亮の言葉が本当ならば。

この男が龍王であり、四天龍を二分する原因となり、そしてNECと結託して、何か良からぬ事を企んでいる者である。

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