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煉獄の焔  作者: yukke
第八章 嘲笑う者、欺く者
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第四話 ~ 生物兵器開発を止めろ ~ ②

 周りに大量の死体や人やらが転がる廊下で、紫電は怪物と相対している気分になっている。


 今、目の前には人でありながら数多の兵をなぎ倒し、その名を轟かせた猛将が目の前にいた。


 呂奉先。

君主を転々とし、最後には自ら天下を取ろうとしたが三日天下に終わってしまい、放浪しながら様々な戦いに巻き込まれ、最後は曹操によって殺されたという。中々悲劇の人生を歩んだ武将である。

ただ、今目の前にある体は呂布であるだろうが、魂は呂布なのかは分からなかった。


「はっ、たとえ強い武将であっても記述じゃ割と負けとるし、策には疎かったらしいからな。強いだけじゃ、戦いは生き残れんで!」


 果たしてそれは、自分自身にも言い聞かせている様にも聞こえる。

だが、目の前の呂布は聞く耳持たずに雄叫びを上げる。


「ぬぉぉぉおおお!! 曹操~!! 許さ~ん!!」


「うぉ!」


 その怒号からか気迫からか、物凄い突風の様なものが吹き荒れた。

そして、言葉からして魂も呂布本人のもので間違いないようである。


「おいおい。やばいで。というか、以前死体が真鬼化してた時は、ぎこちなかったから体とは別の魂が入っとたが。今回はちゃんと本人のものって。もはや怨念ですらないで。タルタロスに封じられていた魂が、現世にやってきとるやないかい」


 しかし、ここで紫電は1つ疑問を感じた。


「鬼神と言われたかて、何で人間の魂如きがタルタロスに封じられとんねん?」


 だが、次の瞬間。呂布が持っていた戟を振りかぶり、横になぎ払ってきた。


「うぉわ!!」


 すると何と、とてつもない衝撃波と共に斬撃が飛んでくる。そして同時に、斬撃が通った部屋のガラスが一気にに割れた。


 紫電は何とかしゃがんで回避をしたが、その破壊力に背筋が凍っている。

いくら龍とは言え、この異常な腕力には敵いそうになかった。


「あかん、タルタロスの中にどんだけおったか知らんが、神族の怨念を浴び続けて完全に神格化しとるやんけ。悪い方のやけど」


「はぁぁああ……!」


 すると、再び呂布が戟を振りかぶる。

さすがにそんな攻撃を何度もされるわけにはいかず、紫電は右腕に紫の雷を纏い呂布に突撃する。


「んな、何度もさすかい!!」


 そして、紫電は右腕で呂布の体を殴りつけ激しい電撃を浴びせる。

だが、呂布はビクともせずに振りかぶった戟を紫電に向けて、縦に力強く振り抜いた。


「あっぶ!!」


 紫電はまた、ギリギリの所を体を縦に向けて回避する。

その時、斬撃が少し鼻をかすめていく。


「何で、ビクともせ~へんねん。ほんまにこいつ人か?」


 そう紫電が文句を言うが。確かに今目の前には、三国志の武将の中でも最強の武将が立っている。

そして、生きていたころよりも確実にパワーアップしていた。


「この野郎が。これでどうや!! 紫死雷槍!!」


 そう叫ぶと、紫電は左手に紫の雷を発生させて槍に変化させると、呂布目がけて雷槍を投げつける。

だが、呂布避ける事無く戟を構え、紫電の雷槍を切り裂く様になぎ払う。

すると、紫電の雷槍は無残にかき消えた。


「ほんまもんの、化け物かい!!」


 だが、その雷槍は囮だったらしくこの隙に、紫電は呂布の懐に潜り込んでいる。


「くらえ!」


 そして、雷を纏わせた右足で回し蹴りを叩き込む。

すると、見事に綺麗に決まったのである。どうやら、呂布には避ける意思はないようだ。

全ての攻撃を受け止め、それ以上の攻撃で敵を排除しようとしている。


「貴様は曹操の配下の人間か?」


 紫電の足を、しっかりと片手で受け止めビクともしていない呂布は、紫電にそう言い放つ。


「なっ、くそ! 俺はそんなんちゃうわ! 今は、お前達の生きていた時代とは違うねん!」


「なら、何故俺を攻撃する! 敵なのだろう!!」


 目覚めた直後なのだろうか、状況が把握出来ていない様子の呂布は、ただ暴走するだけ暴走していた。

そして、足を掴んだまま紫電を横に振り回し、ガラス張りの部屋に放り投げた。


「ぬぉっ?!」


 紫電は咄嗟に首元をガードし、そのままガラスに突っ込む。

簡単に割れた所を見ると、強化ガラスではなさそうである。

しかし、生物兵器の人体実験をするなら強化ガラス等を使った方が、暴走した時に外に逃がさずに済むはずである。


 そして、紫電が辺りを見渡すと、ここが実験をする場所では無いことを理解する。

何故なら、その部屋の壁際にはズラッと檻が並んでおり、それ以外は何も無かったのである。

つまり、ここは実験をした者を閉じ込めておく場所であった。


「なんなんや、この非人道的な実験は……。って、それどころやない! あの野郎!」


 檻の中で苦しんでいる者達を見た後、すぐに紫電は今優先すべき事を思い出し、奥に進もうとする呂布を止めに行く。


 そして、廊下を出る時に紫電はスカジャンを脱ぎ、紫の雷を纏い龍化していく。

全力でいかなければ、呂布を止めることは出来ないとふんだのだ。


「待てや!! お前は、とっくに死んどるんや! そやから、死者は再び眠らなあかんねん! 大人しくせぇ!」


 紫電のその言葉に、呂布は足を止めた。

そして、後ろを振り向かず紫電に言葉を投げかける。


「俺が、死んでいる? あぁ、そうか。あの時曹操の手によって……。なるほどな、あれから長い年月が立っているのか。なら、曹操も死んでいるのか?」


「あぁ、とっくにな」


「なら、何故今俺は蘇っている? この時代の力か?」


 呂布は、何かを確認したいらしいのか、次々に紫電に質問をぶつけてくる。


「ちゃうわ、何者かの策略や。自分勝手な野望を達成しようとしとるねん」


 紫電は、今までとは違うこの真鬼化した死体、呂布に対し油断を見せることなくゆっくりと質問に答えていく。


「そうか。なら、俺のこの内から沸いてくる怒りはなんだ? これが曹操への怒りなら、死んでいるという時点で怒りは落ち着くはずだろう。なのにふつふつと沸くこの怒りは? 戦いたいというこの衝動は、いったいなんだぁぁぁあああ!!!」


 呂布は再び叫ぶ。その怒号で残ったガラスが全て割れる。

とてつもない気迫。他の龍と対峙している時の感覚とは違う、猛獣いや神獣とも呼ぶべきか。ただの、猛獣ではないその気迫に紫電は少し後ずさりをした。


「俺が……恐怖しているやと?」


 紫電は、その自分の行動に驚きを隠せなかった。

今までどんな相手と敵対しても、決して怯むこと無く立ち向かってきた。

初めてだったのである、紫電が恐怖で後ずさりをしたのは。


「なら、この怒りと衝動を。人間ではないお前が、解消してくれるのか?」


 呂布は、そう言いながら後ろに立つ紫電に振り向いた。

目は、真っ赤につり上がりその顔は、もはや人では無く鬼神と呼ぶにふさわしい顔つきになっていた。


「あぁ、えぇで。その代わり、負けたら大人しく墓に戻って貰うで!!」


 紫電は、まるで自分の中の恐怖を振り払うかの様に、声を張り上げた。


「そうか、良いだろう! これは俺の肉体じゃなさそうだが、不思議と自分の肉体以上に馴染み、そして力が沸いてくる!! おい貴様、名はなんと言う?」


「雷光龍 紫電や!! それより、今なんつった?!」


 しかし、呂布は紫電の言葉には耳を貸さずに、紫電に攻撃をしかけてくる。


「はっ! まぁ、ええわ!! 死人は死人らしく、大人しく寝とけ!!」


「かかってこい!! 紫電!!」


 紫電は、呂布の戟による攻撃を真正面から、その龍と化した腕で受け止める。

その瞬間、激しい雷光と衝撃波が発生し辺りに広がっていく。









「あのバカは、いったい何をやっているんだ。これは遊びじゃね~んだよ。時間がたつにつれて、こっちが不利になるのが分かんね~のか?」


 その廊下の奥、突き当たりの部屋にたどり着いたネブラが、しかめ面で文句を言っている。そしてどうやら、強敵を巻いてこちらに合流するであろうつもりで、部屋の前で待っていたのだ。


 確かに、敵の基地を襲撃する場合。時間がたつにつれて増援がやってきて、攻める側の状況が不利になるのだ。

特に今回のように、少数で攻める場合は時間をかけずに短期決戦が基本である。

そして、強敵に出会った場合ある程度戦った後、すぐにネブラに合流するようにするべきである。

しかし、紫電は本気で戦ってしまっていた。


「後で説教だな」


「ネブラさん、とにかく進むです。待っていても紫電さんは来ないと思います」


 アシエがそう提案すると、ネブラは面倒くさそうに頭を掻きながら何かを呟き、部屋の扉を脚で蹴って開いた。

どうやら、かなり不機嫌になっているようである。

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