第一話 激変する世界
「はぁ、はぁ。3人共、大丈夫?!」
花凛は、走りながら後ろの3人を気にしている。
「大丈夫よ、花凛!」
「このまま、学校へ行きましょう!」
「学校なら安全」
花凛の言葉に夏穂、美穂、志穂が返事をする。
そして、その後ろを鬼化した人物が10人。いや、明らかに死体も入っている為生きている人間は2人、残りは死体が鬼化したものであった。
「また、ちょっと数増えてきたのかな? 数減らすね!」
そう言って花凛は、3人を先に行かせると拳を作り構えをとる。
「もういい加減にしてよね!!」
花凛は拳を前に突き出すと、そこから炎の塊が現れて鬼化した者達に向かっていく。
「ぐあぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁああ!!」
何体かの悲鳴が聞こえてくる。
死体が鬼化したものだろうか、その悲鳴はどこかくぐもっているようである。
「はぁ、はぁ。急いで学校に!」
3人に、追いつき再び一緒に走って学校へと向かっていく。
先程の攻撃で5体は倒したものの、2体程が何処からともなく現れ追加されていた。
「何なのよ! これは~!」
この異変は、以前神楽家で激戦をした後の数日後から起こりだした。
突然、墓場から化け物と化した死体が出てきたり、飼っていたペットが化け物になったとか。その様な現象が相次いで報告されていた。
もちろん普通に鬼化したという人や、『アビリティルギー』を飲んで化け物になったという人も相次いでいた。
この1週間で、花凛が浄化した鬼は30体を超えていた。
それだけの異常事態にも関わらず、政府も警察もろくに対処をしなかった。
それどころか、NECの新薬『アビリティルギー』を積極的に世界にアピールしようと、芸能人や俳優達を使い政府公認のCMを作り、どんどん放送していたのである。
もはや、その政府の行動に人々がキレないわけはなく。
抗議デモや、国会議事堂の前に座り込みをした。
だが、政府は強硬策を取った。
NECの『アビリティルギー』、その元となる新エネルギーと言っている
怨念のオーラを、そのデモを起こした人々に直接まき散らしたのだ。
もちろん、あっという間にデモを起こした人々は鬼化してしまい、地獄絵図となっていた。
それを、政府は放送。人類を新たな人類へと進化させる、素晴らしい薬なのだと強調。
世界は素晴らしいと同調。
既に、この世界はおかしくなっていた。
そんな中、必死に対抗する。煉獄王フェーゲ率いる花凛達一向は、神龍復活と『アビリティルギー』の流出を止めるため、その生産先である工場と研究所の破壊。
これを同時に行う事にしたのだ。
だが、それでも普通に学校には登校しようとする人達の前に、鬼化した人々が暴虐の限りを尽くしていた。
それでも、花凛や四天龍の2人が頑張ってくれた為、花凛達の住むこの辺りは比較的安全になり、2日前から休校になっていた学校も再開されたのだが、登校しようとしたらまた鬼化した人々に襲われていたのである。
「花凛! 学校が見えてきたよ!」
「急ぎましょう、花凛さん」
夏穂と美穂にそう言われ、花凛はより一層足に力を入れて走りだす。
そして、先生達が手招きしているのが見えてくると、花凛達は全力で走りだす。
そして一斉にその門になだれ込む様にして、学校の中へと入っていく。その瞬間、先生達が咄嗟に門を閉めた。
何とか無事たどり着いた花凛達は、皆座り込んで息を整えていた。
「はぁ、はぁ。もう、何なのよこれは。リエンが居たら何か分かるんだろうけれども、居なくなったから自力で何とかしないと」
今まで、解析や分析はリエンに任せていたので、いざ自分がそれもやらなきゃいけないようになった瞬間、その難しさを思い知らされた。
「学校は、固い門や塀かあるから平気だろうけれど、帰りがまた大変そう……」
夏穂が不安そうに呟いている。
それを聞いた花凛が、安心させるように夏穂に声をかける。
「大丈夫だよ、帰りは賢治さんに車出してもらって、送ってもらうつもりだから」
一応、鬼化した人達が異常に出てるとは言え、ゾンビ映画の様な状態にはなってはいない。
警備を増やし、街に沢山いる警察官に言えば何とか助かる。
なので、人々はいつも通りの生活を続ける事は出来ていた。
そして、現在の鬼化の一日の発生件数は、全国で死体も合わせ約100人。
対処出来るレベルではあったのだ。
それでも、確実に一桁は増えているこの状況に花凛はしかめっ面をしていた。
「タルタロスへの、道がより大きく開いているのかな?」
そんなことを考えながら、花凛は3人と一緒に校舎へと入っていく。
だいたい、2日に一度のペースで登校中に鬼化した者に襲われていたら、3人を危険にさらしてしまう可能性も出てくる。
それも悩みの種であり、花凛は頭を抱えて唸っている。
「花凛、あまり焦ってもしょうがないよ」
「そうですよ花凛さん。やれることをちょっとずつやっていきましょう」
「私達も頑張るから」
夏穂、美穂、志穂が花凛を励ますように言ってきた。
花凛は、3人の言葉に頷きながら返事をする。
授業中は、特に何も異常はなかった。
ただ、数人のクラスメイトは休んでいた。
外に出るのが怖い。という理由である。
「ん~。こりゃテストは散々かな~?」
夏穂が伸びをしながら、辺りを見渡して言ってくる。
実は、3人の席と花凛の席は隣同士になっている。
花凛の席の左右と前に座っているのだ。
「う~ん、やっぱり皆この状況を怪しんでいるのに、政府のお抱え企業になってしまったNECには打つ手なしか」
花凛が、スマホでニュースサイトを見ながら呟いている、
リエンが居なくなったために、自分で解析や分析をしないといけなくなったので、こうして情報収集をしていた。
「花凛さん、熱心なのはいいですけれど、そろそろ次の授業が始まりますよ」
「あっ、ご、ごめん」
美穂にそう言われ、慌てて花凛はスマホをかばんにしまう。
少し集中し過ぎてしまい反省をしている花凛に、志穂が優しく微笑みかける。
「花凛は、頑張り屋さんだな」
「え? そんなことないよ! 志穂」
花凛は、慌てて首を横に振っている。
しかし、3人共花凛をそんな風に思っているのか、頑張っている花凛に対して、微笑ましく感じているかのように優しい笑みを浮かべている。
「う~、そんなじゃないよ。ただ、リエンが戻ってきた時に、1人でもしっかりとやれているところを見せたくて」
「そう言うのを頑張り屋さんって言うんだよ」
夏穂のトドメの言葉に、花凛は顔を赤くして俯いてしまう。
そして、その時ちょうど次の授業の先生が入ってくる。
しかし、その先生も暗い顔をしている。まるで、今の世の中を憂いているかのような表情である。
真剣にこの状況を打開しなければならないと、花凛は気を引き締めていた。
「ほんとに?! 紫電!!」
昼休みになった途端に紫電から電話が入ったので、花凛は慌ててトイレに駆け込み電話に出た。
すれ違った何人かの人に、「どれだけ我慢していたの?」という顔をされていた。
『あぁ、間違いないで。一見すると研究所に見えへんかったから、見落としとったわ。でも、ちらほらとNECの社員が入っていくのが見えたし、何より街で見つけた沢村を尾行して見つけた場所なんや。ここは、研究所の方やと思うで』
紫電からの電話は、どうやら研究所らしきものをを見つけたという電話である。
まだ、中に入って確認していないらしいが。沢村が入っていったという事は、おそらくバイオロイド開発に関係した場所であるのは間違いなかった。
「あっ、でも。私3人の護衛があるから」
『あぁ、そうやったな。とりあえず、ネーヴァさんやネブラさんに連絡して、増援を送るように言ってもらえるか? 後はこっちで何とかしてみるわ』
「あ、うん。分かったわ。気を付けてね2人とも」
花凛はそう言うと急いで電話を切り、ネブラかネーヴァに電話をしようと電話帳を探る。
「あっ、でも。ネブラさん携帯持っていなかったんだ……」
花凛は思い出すように呟く。
そうネブラは面倒くさがりな為、面倒事を頼まれないように携帯を所持していなかったのだ。
「あ~もう! ちゃんと上に立つ人間……じゃなかった。上に立つ龍なら、いつでも連絡取れるようにしといてよね!」
花凛は、唸るように文句を言うがここで文句を言ってもしょうがないないので、トイレから出てネーヴァさんを探すことにした。
しかし、探す必要はなかった。トイレから出た所にネーヴァが立っていたからである。
「わぁ!! びっくりした~。でも、丁度良かった。ネーヴァさん、紫電達が」
「研究所らしき場所を見つけたのでしょう? 聞いていましたよ」
いったい何処から聞いていたのか、疑問に思った花凛だったが、想像すると怖いので止めておく事にした。
「丁度良かった、ならすぐに紫電達に援軍を。手を貸してあげて下さい」
「そうですね、かなり重要そうなので。あの人に行かせます」
花凛は、増援は多い方が良いのではと疑問に思い聞き返す。
「あの、1人だけですか? もっと多い方が」
「いえ、あの人に行かせるとなると、逆に大量に仲間が居るのは危険です。何せ、瘴霧龍ですからね」
その言葉に、花凛は誰を行かせるのか分かった。
ネブラである。実力は知らないが、瘴霧龍というからには何か危険な力であることを匂わせている。
「連絡先も私だけが知っています。何せ、あの人は私の言うことには逆らえないので。フフフ」
ネーヴァと、ネブラの間に何があったのだろうか。
聞きたくても、聞いてしまうとネーヴァさんのイメージが崩れそうだったので止めておいた。
何故ならネーヴァの顔は今、とても楽しそうにしていたからである。
怖くなるほどの素敵な笑顔。それを見た花凛までも、冷や汗が出るほどになっている。
恐らく、本人は今頃寒気を感じくてしゃみを連発していることだろう。
そんなことを花凛は想像していた。




