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煉獄の焔  作者: yukke
第七章 全てを託され前へと進む
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第六話 神楽家急襲 ~ 凶刃の刺客 ~ 

 今、神楽家の庭は夜のサバンナの如く、周りに潜む猛獣達の殺気で溢れているかの様に、空気が張り詰めている。

しかし、この場合の猛獣は『ブーンドック セインツ』の刺客達である。


 花凛は、神経を研ぎ澄ませると『触れたものを見えなくする能力』で仲間の2人と、己自身も消した3人の刺客の気配を探り当てようとする。


『どうやら、相手もバカじゃ無いようね。動くと、あなたに気配を察知されるとふんで、一切動かないみたいね』


「うん、どうやらジッと機会を伺っている」


 リエンは、生身の体ではないために気配を察知出来ないらしい。

花凛の感覚だけが、頼りであった。


 すると、突然。刃が空を切るような音がし、その音が花凛に猛スピードで近づいてくる。


「っ?!」


 咄嗟に、音のする方に偃月刀を立て防ぐ様に構えると、何かが刃にぶつかり、鉄と鉄が当たる音が辺りに鳴り響く。

どうやら、透明化したナイフを投げてきたようである。

そして、1本だけではなく次々と鋭利な刃物が風を切る音が、花凛の研ぎ澄ませれた聴覚に伝えてくる。


「ふっ! くっ……この!」


 花凛は、見えないナイフを次々とその感覚だけで防ぎ落としていく。

すると、次の瞬間。今度は草を踏みしめ、こちらに走ってくる音が聞こえる。

あまりにも稚拙な策である。

見えないナイフで足止めをし、姿を消した2人のどちらかが見えないをのを良いことに、堂々と突撃をしてきていた。

だが、花凛にはその様子が気配で丸わかりであった。

稚拙な策で、攻撃出来ると高をくくった相手を、花凛は容赦なく吹き飛ばす事にした。


「舐められたものね。その程度で、私に勝てると思ったの? 火円刃!」


 花凛がそう叫ぶと右脚を軸にし、体を回転させ、同時に炎を纏わせた偃月刀で、飛んでくる大量の見えないナイフをなぎ払う。同時に、円になった炎の刃も広がる様に広がり、遠くからまだ飛んでくるナイフすらもたたき落としていく。


「ぐぁ!!」


「なっ……あぁぁ!!」


「ちぃ! バカ共が!」


 飛んでくるナイフを落として、反撃するつもりだった花凛だが。

悲鳴から察するに、どうやら先程の攻撃で突撃していた敵の2人が、一度にその刃をくらったようである。


「あれ? 何やってんの? あなた達、自分の力を自負しすぎじゃない?」


「くっ……はぁ、はぁ。黙れ」


 透明化させる能力の人物も、何やら苦しそうに話している。

花凛の考えが当たっていれば、3人共花凛の近くにいた可能性がある。


「あぁ、そこね」


 そして、花凛は徐々に自分から離れていく気配を感じた。

予想通り、自分からさほど離れていない位置で、花凛の周りを取り囲む様にしていた様である。

自分の能力に溺れ、そして花凛の事を甘く見ていた3人は哀れにも、花凛の力の前に一蹴されてしまう。


「ひっ!! バカな!! がはぁ!!」


 距離を開けて仕切り直そうとしていた相手を、花凛は跳び上がって距離を詰め、その勢いのまま下に足を振り下ろしかかと落としを叩き込んだ。


 花凛の事を油断せずに対峙し、自分達の能力を自負していなければ、強敵であったであろう。

透明化の能力の人物が気絶したため、透明化の能力が解除されたものが、辺りに現れ始めた。

ナイフは、十数本が円の様に散らばっている。

花凛の前には、気絶した人物が1人。

ナイフの近くに、血を流し倒れている人物が2人。

息はしているようで、命に別状はなさそうである。


『やれやれ、緊張して損したじゃないの』


「待って、リエン。まだ……殺気が消えない」


 リエンが、戦いは終わったものだと思い、リラックスしていたが。

花凛だけは感じていた。


 異常な殺気。まるで、獲物を狩ったライオンから獲物を奪うような、ハイエナやジャッカルの様な殺気が。


『嘘でしょう。まだいるの? 私からは何も見えないわよ』


 リエンが驚いた様にキョロキョロと辺りを見渡す。

もちろん、花凛はずっと油断せずに警戒している。

2階の夏穂、美穂、志穂にも気を配っていた。

3人共、父親のそばで不安そうに花凛を眺めている。

すると、突然花凛の左手の、出入り口の門の方から声が聞こえてくる。


「やれやれ、やはりその程度か」


 花凛は、咄嗟に声のする方を振り向くと。

そこには、NEC社長の豪徳寺源十朗の姿があった。


『グラディウス!! まさかあなたが来るなんて!』


「えっ? グラディウス? この人、テレビで何度か見かけるNECの日本支社社長だよね? 倒すべき敵だけど」


 花凛は、驚いてリエンに聞いている。

以前、ショッピングモールの屋上駐車場で、花凛意外は全員源十朗と会っていた為、彼が龍であり四天龍であることまで知っていたが。

花凛だけは気絶していた為、分からないのは当然であった。


「そうだったな、貴様だけはあの場で気絶していたからな。初めましてと言うべきか。私が、NEC日本支社社長であり、刀刃龍 グラディウスでもあり、四天龍の1体でもある。だが、こちらの名はあまり好きでは無いないのでな。源十朗と呼んでもらいたい」


 花凛は、四天龍という名を聞き即座に偃月刀を握りしめる。

その言葉だけは、リエンから聞いていたからだ。その実力も。

龍王に仕えている為、生半可な奴とは違う。

そいつから発せられるオーラは、花凛を震え上がらせるには十分であった。


 すると、源十朗は倒れている3人のうち、透明化させる能力の人物の腹を蹴り上げる。


「ぐっ!! がっは!」


「さっさと起きろ。そして、今俺が援軍として連れてきた、10人の『ブーンドック セインツ』を透明化させろ」


 源十朗がそう言うと、辺りの殺気が一斉に濃くなり始め、ザワザワと落ち着きのない様子になっているようである。


「血の気の多い奴ばかり連れてきたからな。戦いたくてウズウズしている様だな」


「なんで、そんな奴ばっかり連れてくる!」


 どうも、不満があるようで透明化する能力の人物が、源十朗に不満を言っている。


「貴様は、俺のいう事を聞くだけで良いんだよ。早くしろ」


 源十朗はそう言うと、今度はその人物の顔面を思いっ切り蹴りつける。

想像以上にこの人物は恐ろしいと、花凛そう感じていた。


「うっ……ぐぅ」


 そして、その人物はフラフラになりながら仲間が潜んでいるであろう、塀の周りに植えてある木々に向かい歩いていく。


「くっ! させないわよ!」


 さすがに、それだけの人数の『ブーンドック セインツ』を透明化されるのだけは不味かいと思い、花凛は止める為に走ろうとした瞬間。


「わっ?!」


 花凛の目の前を剣閃が走る。

瞬時の立ち止まった為に、花凛の顔ギリギリのところをかすめていく。


「俺が居る以上。もう、お前に勝ち目は無い。死にたく無ければ、神龍の巫女を差し出せ。そいつらから、神龍の加護を貰ってから殺してやる」


 やはり、神龍の加護を狙ってさらおうとしていた様である。

だが、彼等は知らないようである。加護はとっくに、たったり1人の為に与えられている事を。


 しかし、花凛はそれを言わなかった。言ったら、今この場で巫女である3人が殺される。

例え敵わなくとも、花凛は3人を守るために必死に対策を考えている。


『花凛、とにかく3人を守るために動くのよ。あいつを倒そうとしたら、最悪あなたが殺されて巫女の3人も殺されるわよ』


「分かってる。でも、透明化能力の奴だけは何としても止めないと」


 花凛1人では、この状況はきつかった。

すると、源十朗が花凛に向け歩みを進める。

その手には、どこから出したのか木であしらわれた日本刀を握りしめている。

そして、その日本刀を抜くと何と逆手に持ったのだ。

花凛は、源十朗の独特の握り方に一層気を締める。が……。


「!!!!」


 花凛には見えなかった。源十朗が何をしたのか。

ただ気づいた時には花凛の体は切り刻まれ、宙に浮いていた。


「うぐっ!!」


 そして、花凛は地面に倒れ込むと悲痛なうめき声を上げ、体に走る激痛に耐えている。


 すると、花凛の立っていたすぐ後ろに源十朗が立っている。

どうやら瞬時に移動し、花凛を斬りつけていた様である。


「花凛!!!」


 2階から、3人の悲鳴が聞こえてくる。

このままでは、3人は……。

そう思った花凛は、必死に立ち上がり源十朗を睨みつける。


「ほぉ、まだ立つか」


 すると、今度は花凛の腹に蹴りを入れ様とする。

しかし、足を良く見るとつま先から足の甲まで、まるで刀の刃の様に変化していたのだ。


 それを見た花凛は、咄嗟に避ける。

しかし、蹴りを避けた瞬間。源十朗の蹴り抜いた足から、剣閃が飛び出し花凛を斬り裂く。


「がっ……!!!」


 身構える間もなく、花凛は血を流しながら激しく後ろに吹き飛ぶ。


『花凛、しっかりして!!』


 リエンが叫ぶと同時に、今度は見えない何者かが花凛を殴打してくる。

どうやら、先程の透明化能力を持った人物が、援軍の透明化を終えた様である。


「くっ、うぐっ!!」


 花凛は、咄嗟に身を守りその猛攻を防ごうとするが、その威力は凄まじく、装置による鬼化制御から能力だけを巧みに使っているのが分かる。


 その隙に、源十朗がゆっくりと神楽家へと歩いていく。

2階に居る、3人に目をやりながら。


「くっ! 止めて!! 私が、相手よ!」


「ふん。貴様の様な雑魚は、そいつらに殺されておけ」


 しかし、花凛の言葉に一切振り向かずに、歩みを止めない源十朗に花凛は焦りを感じている。

このままでは、3人は殺される。


 だが、そこで源十朗が足を止める。


「ちっ、なるほどな。そう簡単にはやらせんと言うことか」


 その言葉の直後。

源十朗の周りを一瞬にして、氷の壁が張られ源十朗を囲っていく。


「残念ですが、グラディウス。そこから先は行かせませんよ」


 すると、今度は花凛の周りを紫の雷が取り囲む。

それと同時に、何人かの悲痛な叫び声が上がる。


「すまん、花凛!! 遅くなってもうて。大丈夫か?!」


 すると、花凛の前をいつものスカジャンを着た紫電が立ち、その横にワンピースに、ショートパンツを履いたアシエの姿もあった。


『ちょっと! 遅いわよ!』


「だから、謝っとるやんか。この人が、なかなかにおっとりした性格の奴でな。時間かかってもんたんや!」


 紫電はそう言うと、いつの間にか源十朗と対峙している1人の女性を指さした。

その女性は、一言で言うなら美麗であった。


 スラッとした体型に、抜群のプロポーションでモデルか何かを思わせる程であり、髪は腰より長いウェーブのかかったアクアブルーのロングヘアーをしている。

そして垂れ目がちな青い目をキリッとつり上げ、源十朗を睨むその姿は頼もしさもにじみ出ていた。


「ふん。久しいな。ネーヴァ」


「えぇ、あなたのその禍々しい顔つき、正直見たくなかったのですがね」


『やっと、来たわね。絶氷龍 ネーヴァ。四天龍の1体でもあり、先代龍王から仕えていた人物よ』


 そして、花凛の周りにはアシエと紫電。門からは、神田が猛ダッシュで花凛の元に走ってくる。


「花凛!! 大丈夫か?!」


「賢治さん。もう、遅いよぉ」


 花凛は、フラフラになりながら仲間に支えられ何とか立ち上がる。


「すまん、途中でこいつらに会ったんだが。まぁ、何というかだな。凄くのんびり屋な人でな。俺が無理やり引きずっていたんだ」


 そんな人が四天龍で大丈夫なのだろうかと、不安な花凛を他所にネーヴァは、その手に氷の塊を出現させ、その中から壮麗な弓を作り出した。


「さて、グラディウス。お前には聞きたい事が山ほどある……が。先ずは、お前を戦闘不能にしなければならないようだ。でも、その前に……えっと。この巫女の3人を……っ?!」


 戦いを始めるのかと思いきや、のんびりと巫女を守る壁を作ろうとし始めたネーヴァに、源十朗が逆手に持った日本刀で瞬時に斬りつけてくる。


「少し、待っていてもらえませんか?」


 だが、グラディウスの刃は途中で小さな氷の塊で阻まれている。

何と、ピンポイントで空中を漂う水分を凍らせて、刃を防ぐ程の強度を持った壁を作っていたのだ。


「ちっ、相変わらずののんびり野郎が。俺は、お前みたいな奴が大嫌いなんだよ」


「そうですか、同感ですね。私もあなたは嫌いです」


 そう言うと、ネーヴァは神楽家の前に巨大な氷の壁を作りだした。

夏穂、美穂、志穂はもう何が何やら分からない様な顔をしている。


「花凛、いけるか?」


 支え無しで、何とか立てるくらいまで回復した花凛に、紫電が声をかける。


「えぇ、大丈夫よ。絶対に、3人を守って見せる!」


「花凛ちゃん、気合いは良いですけれども、リエンさんから聞いた透明化能力の相手がまだ残っているですよ」


 アシエも心配そうに花凛を見ると、次に辺りをキョロキョロと伺いだす。

未だに、辺りには姿は見えない敵が何人かいるようである。


「そっちは、俺達がやればええやろ! 神田のおっさんもいけるか?」


「あぁ! 俺は、空手や柔道は一通りやっているからな、それでやらせて貰う」


 そう言うと、神田はスーツの上着を脱ぎ捨てると、両手の指を鳴らし始める。だいぶ、気合いが入っている様である。


「花凛を傷付けた奴は、片っ端からぶん殴ってやる」


「えっ?!」


 神田の意外な言葉に、花凛は一瞬戸惑ってしまう。


『花凛、戦闘中!!』


 しかし、リエンのその声を聞き我に返ると、煩悩を振り払う様に頭を横に振り、気合いを入れ直し皆に号令を出す。


「行くよ、皆。反撃開始!!」


「おう!!」「……です!」

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