第四話 共に過ごす一夜
夕飯時になるまで、花凛はひたすらに神田との事を問い詰められていた。
だが、知られるのが恥ずかしい為に、花凛はそれを上手くごまかしていた。
「全く、花凛はバレバレなんだよ~」
「何が?!」
花凛なりに上手くごまかしていたと思っていた様だが、3人は見抜いてしまっていた。
「ふふ。あっ、そうそう。リエンさん、いつまで隠れているんですか?」
すると、突然美穂が姿を隠しているリエンに、姿を見せるように促してくる。
『何よ、私は姿を見せない方が良いんじゃ無いの?』
無言で花凛の近くをふわふわと浮いていたリエンが、美穂に返事をする。
その時に、どうやら姿を見せたようで3人はリエンを眺めている。
「あら、昔のあなたならそんな事を気にするような方ではなかったはずよ」
『む、昔は昔よ』
リエンは、あからさまに顔を背けている。
何やら、恥ずかしがっているところを見ると、昔の自分の行動を恥じている様である。
「花凛と会い、花凛と過ごす事で。あなたの性格も変わってきた」
その様子を見た志穂が、リエンに話しかける。
それがトドメとなったようで、リエンはそそくさと部屋を出ようとする。
「あら、今のあなたは嫌いでは無いですよ。だから、姿を消さなくてもいいわ」
『……』
その言葉に、リエンが途中でピタッと止まった。
そして、ゆっくりと花凛の近くへと戻って行く。
「よかったね、リエン。昔何があったかは知らないけれど、今のリエンが、私にとって大切な友達なんだからね」
『わ、わかったわよ』
リエンはごにょごにょと恥ずかしそうに呟きながら、花凛のそばで浮いていた。
すると、お手伝いさん達がやって来て夕飯が出来た事を伝える。
いつの間にか、そんなにも時間が立っていたようで、辺りは少し暗くなっていた。
そして、1階のある1室へと花凛は通されると、そこにはまるで宴会でもするのかといわんばかりの、大量の料理が並んでいる。
上座にはもちろん3人の父親が座っている。
「え、えっと。これは、いったい?」
花凛が不思議そうに、亮蔵に確認をする。
この歓迎ムードにはさすがに面くらっているようである。
「何、そちらが龍であるとは関係無しに、娘達が初めての友達を連れてきたのだ、お手伝いの人達が歓迎したいと言いだしてな。私は不本意ではあったが、あいつらがあそこまで強く主張するとは思わなくてな。こちらが、折れることにしたのだ」
「皆……ありがとう」
3人はそれぞれ思い思いに、お手伝いさん達に礼を言っている。
父親といるときは全くの別人のようだが、恐らくお手伝いさん達といるときは学校で見せる、あの態度なのだなと花凛はそう感じていた。
「あ~美味しかった。でも、あんなに沢山ご馳走になってよかったのかな?」
様々なご馳走で歓迎された花凛は、お腹も満たされ満足していた。
「宜しいのです。お嬢様達のあんな楽しそうな顔は、久しぶりに見ましたから。あなた様が、普段からお嬢様達によくしてくれているお礼です」
「そんな、私は何もしていないよ」
お手伝いさんが片付けをしながら、花凛の質問に丁寧に答えている。
花凛は、逆にお世話になっている感じだったので、お手伝いさんの返しに手を横に振り否定する。
『そうね、逆におもちゃにされているものね』
リエンが横から余計な事を言ってくるが、今のリエンは姿を消している為に、それに反応するのは不味かった。
「そうそう、お風呂の用意も出来ていますので。お嬢様達と一緒に入って来て下さい」
「はい、分かりました」
いつもなら、ここは「よし、私がいっぱい洗ってあげる!」と言いそうな所だが、父親の前である為に夏穂は静々と答えている。
花凛はその姿に、普段の夏穂とのギャップを感じていた。
「さ、行きましょう。花凛さん」
美穂がそう言うと、夏穂と志穂と共に花凛を担ぎ上げる。
さすがに、そんなことをされるとは思わずに花凛は目を丸くしていた。
「えっ? あれ? な、何コレ?」
『あらあら、たっぷりと可愛がられてきなさい』
リエンがにやにやと、小悪魔の様な笑みを浮かべ、花凛にトドメの言葉を浴びせてくる。
「あの、3人共。別に逃げないからね。生贄みたいにして連れて行かなくてもさ」
そう言うが、3人は無言のまま浴室へと連れて行く。
ほんとにここに居る時の3人は、いつもと違う為何か調子が狂う花凛であった。
そして、浴室に着くと花凛を下ろす。すると、3人の目がいつも通りの目に戻っている。
「ふっふっ。いつも通りだと、絶対に逃げると思ったからね」
「さ、もう逃げられないですよ」
「うんうん、こんなに羽目を外せるのは花凛だけ」
夏穂、美穂、志穂のいつも通りの反応に、花凛は少しだけ微笑む。
3人が、別人の様になっているのは少し怖かったようである。
「ふふ、だから私は逃げないって。さ、一緒に入ろう」
そう言うと、花凛は制服を脱ぎ出す。だが、3人がそこで花凛を止めてくる。
「あ~!! だめ! 花凛の服をぬぎぬぎさせたかったの!」
「そのために、担いで連れてきたのですよ!」
「そうそう、私達に脱がさせろ」
3人の真剣な目に、花凛は少し後ずさる。
「い、いや。さすがに、それは自分でやるから。恥ずかしいから」
花凛は、服に手をかけ3人の魔の手から逃れようとするが、既に脱衣所に連れてこられている為、逃げ場がなかった。
「観念しなさ~い!!」
「あ~! ダメぇ!!」
しかし、花凛の抵抗むなしく夏穂を筆頭に、次々と服を脱がされてしまう。
そして再び担ぎ上げられ、浴室へと連れられていく。
「ちょっと、待って体も自分で洗うからぁ!」
もちろんそ、れも聞き入れられなかった。3人共嬉々としながら、花凛の体を何ともいやらしい手つきで洗っていく。
「ブクブクブク……」
一通りの事を、3人にお世話され花凛は顔を真っ赤にして、広い浴槽に顔の半分まで沈んでいる。
「いやいや、可愛いかったよ。花凛」
夏穂が、花凛の隣に浸かり満足そうにしている。
最近、気の休まる時間がなかったのか、3人のはっちゃけっぷりは相当であった。
「いや、あなた達が楽しければそれで良いけどさ」
3人の事を聞かされた後なので、尚更花凛は3人の絡みを無下にする事が出来なかったのは、事実である。
「ふふ。普通こんな事をされたら嫌がりそうなのに、私達に気をつかってます?」
夏穂の横に浸かっている美穂が、花凛の心中を察したような事を言ってくる。
その言葉を聞いた花凛は、少しばつの悪そうな顔をする。
「正直だな、花凛は」
夏穂達の反対側、挟む様にして花凛の隣にいる志穂が、嬉しそうな顔をしながら言ってくる。
「だって、3人共。楽しそうだもん」
花凛は、素直に思っている事を口にした。
その言葉に、夏穂達は満面のエミレーツ浮かべる。
「ありがとうね。花凛」
『私も、それくらいの仲になれば良かったのかな』
その様子を見ていたリエンが、遠慮がちに隅っこにいながら過去の自分を悔いていた。
「リエンさん、あなたはまだまだこれからでしょう? 花凛さんとこれからも一緒にいてあげて下さい。そうしたら、あなたは変われるわ」
しかし、美穂のその言葉にリエンは難しい顔をして呟く。
『もう、無理なのよね……』
「えっ? 何か言ったリエン?」
しかし、リエンは顔を俯かせたまま、目線は美穂の胸にいっていた。
『それより、その大きさは卑怯よね。浮くなんて』
どうやら、美穂の浮いてる豊満な胸を羨ましがっている様子である。
それに同調するかのように夏穂の目が光ると、美穂の胸を突き始める。
「そうなのよねぇ。美穂のこの胸は、同じ血筋とはとても思えないわ」
「ちょっと、夏穂。止めなさい!」
「もしかして、美穂にだけ多めに神龍の力をもらっているんじゃないの?」
「そんなわけ無いでしょう!」
しかし、その後ろから志穂も加わるように胸を鷲づかみにしている。
楽しそうなその雰囲気に、花凛もさっきの仕返しとばかりに、美穂に近づいて行く。
「ほんとほんと、どうやったらこんなに大きくなるの?」
「ちょっと、花凛さんまで?!」
どうやら、意外な伏兵だったらしく美穂は慌てて胸を隠そうとする。
しかし、もちろん後ろから志穂が両手を掴みそれを阻止する。
「ふっふ。ちょっと、どうやったら大きくなるか調べさせてもらう」
「おぉ、花凛が珍しく乗り気に! よ~し、花凛に続け!!」
『お~!』
最後にはリエンまでも同調し始め、皆で一斉に美穂を取り囲む。
「ち、ちょっと、待って下さい。花凛さん、さっきの謝りますから。だからね、止めてくれます?」
「だ~め~」
何だか、美穂の困惑している顔が凄く可愛くて、花凛はちょっと嬉しくなっていた。
ささやかながら、幸せな一時が過ぎてゆく。
そんな中、花凛はずっとずっとこの時間が続けば良いのにと願っていた。




