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煉獄の焔  作者: yukke
第六章 正義の復讐者
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第七話 龍王と四天龍

 屋上の駐車場に突如として現れたその人物は、見た目は完全にヤクザである。

肩がけでファーのついたロングコートに、白いストライプの入った黒スーツがそれを物語っていた。

だがこの人物は、正真正銘NEC日本支社社長の豪徳寺源十郎その人である。


「なんだお前は、邪魔をしやがって」


 戦いを中断されたことにより、当然朽木は不機嫌になり源十郎を睨みつける。

だが、そんな人物を幾度となく相手をしてきたかの様な余裕の態度で、源十郎は朽木に向かい話かける。


「まぁ、落ち着け。私は豪徳寺源十朗という。NEC日本支社の社長だ。我々はお前を探していたのだ」


「俺を? どういう事だ?」


 源十朗の予期せぬ言葉に、その場の誰もが眉をひそめた。


「お前は、他の者達とは違う特殊な人材だ。我々の元で働かないか? そうすれば、こいつらを圧倒できる力を手に入れる事ができるぞ。今、ここでこいつらと戦ってもお前は無残に散るだけだ」


 朽木は、その言葉に更に不機嫌になり、もはや怒りでターゲットが源十朗に変わりそうになっていた。


「黙れ、俺が勝てるか勝てないかは関係ね~んだよ。俺の、この胸の中にあるもやもやを消すことが出来ればそれでいいんだよ!」


「その為に、人を殺すか。何とも効率の悪い奴だ」


「何だと!!」


 朽木を逆なでしてるとしか思えない、源十朗の言葉に紫電達は意図が読めずに、ただ呆然と立ち尽くしていた。

しかしそれは、源十朗という男がどの様に攻撃をしたのか分からず、下手に仕掛けることが出来ずに様子を見るしかなかったからである。

見たところ源十朗は武器を持っておらず、凶器になるような物も見あたらなかった。


「ちっ、どうなってんねん。あいつも制御装置とやらで力を使っているタイプなんか?」


 紫電が2人の様子を見ながら、リエンやアシエに状況を伺っている。


「む~、分からないです」


「だが、状況は最悪だな。逃げられるなら逃げた方が良いだろう」


 気を失っている花凛を抱え、神田がそう提案してくる。

だが、今のこの状況を作り出したのは神田本人であるため、紫電とアシエが「どの口がそれを言うか」と言わんばかりに神田を見ている。


「んっ? ま、まさか。覚えてないが、この状況を作ったのは俺か?」


 紫電とアシエが同時に頷く。


「うっ、すまん……」


 神田は、申し訳なさそうにうなだれている。

しかし、そんなやりとりは気にせずにリエンが言葉を発する。


『朽木とか言う真鬼が動いたわね。何かする気?』


 その言葉に紫電達が構える。

そして、目の前の朽木は少し落ち着いている様に思えた。源十朗の言葉が挑発だと感じたのだろう。

自ら落ち着きを取り戻し、当初の予定通り紫電達と戦う事を選んだのだ。


「全く危うく挑発にのるところだった。良いか? 俺は力が欲しいんじゃねぇ! 俺のこの欲望を、もやもやする気持ちを満たせればそれでいいんだよ!!」


 そう言いながら、朽木は紫電達に向かい走り出し気流の弾を作り出す。

そして、同時に手にナイフも持っている。

しかし次の瞬間、朽木の前に源十朗が現れると首元を掴み持ち上げる。


「なっ?! 邪魔をするな?!」


 朽木は、源十朗から逃れようと暴れ出す。


「やれやれ、何とも手に負えない猛犬だ。手荒な真似はしたくなかったがな」


 そう言うと、源十朗は掴んだ手に力を入れて首を締め上げ朽木の意識を奪う。


「ぐっ……!」


 小さなうめき声と共に、朽木はぐったりと動かなくなった。

そして、手に持っていたナイフも下に落ちると源十朗はそれを拾い上げ、そして朽木を片腕で担ぐ。


「待てや、そいつをどうする気やねん」


 さすがにこのままではまずいと思った紫電は、源十朗を止めようとする。だが、源十朗は紫電達に振り返らずにそのままの向きで話始める。


「こいつを、このままお前達に消されるわけには行かないのでな。 悪いが、この場はひかせてもらう。毒ガスも消えた事だ、これ以上は無益ではないか?」


「ふざけんな、鬼化した奴を浄化するのが俺達の仕事や。無益やないわ」


 紫電は、源十朗を睨みつけている。しかし、そこでリエンが紫電と源十朗の間に立った。

まるで、紫電を止めるかの様に。


『落ち着きなさい。紫電。そして、久しぶりねグラディウス』


 その言葉に、紫電もアシエも言葉を失った。


「そうだな、リエン。何時ぶりだ」


『前回の龍王の臣下会議以来だから、20年ぶりよ』


 2人の会話は、まるで友人と何十年ぶりかに再会したようなそんな雰囲気を出している。


「ちょっと待てや、リエン。そいつまさか、龍か?!」


『そうよ。刀刃龍 グラディウス。龍王の直属部隊、四天龍の1人よ』


 リエンの言葉から察するに、この源十朗ことグラディウスはどうやら龍王に近しい人間の様である。


『あなた達は、会うことが叶わない存在だから分からないのも無理ないわね。でも、私のパパはねこれでも龍王の次に位が高いから、臣下会議にも出られるのよね。前回の会議にパパと一緒に会議に行った事があってね、だから私はこいつを知っていた。そして、あなたがいるということは龍王はやはり』


「その通りだ、リエン。父から聞いている様だな。龍王は、あの会議の場で言った通りのことを実現させる気だ」


 その言葉に、リエンの表情が曇る。

さすがに、紫電達も龍王が何か企んでいる事くらいは理解していた。

そして、その場の緊張感はピークに達していた。


「今はお前達と争っている場合では無い。だが覚えておけよ。我々に逆らうと言うことは、龍王に逆らうと言うことだぞ」


『その言葉、そっくりそのまま返すわ。勝手な事をして、神龍の怒りでも買わない様にね』


 リエンの言葉に、何やら不敵な笑みを源十朗は浮かべるが、そのまま朽木を担ぎ屋上駐車場から下へと飛び降りた。


「な、なんや。さっきの去り際の殺気は、尋常やないで……」


「ご、ごめんなさいです。アシエ怖くて震えちゃってました」


『仕方ないわよ。私ですら、最後の気迫に強がりで言い返しただけ』


 リエンが、疲れた様子で紫電達に言葉をかける。

そして、遠くからパトカーや救急車の音が近づいてくる。


「とにかく、街の人達の安否を確認するぞ。死者が出てなければいいがな」


 神田はそう言いながら、花凛を担ぎ上げ屋上駐車場を後にしようとする。

そこで、紫電達は神田に聞かれないように小声でリエンに話しかける。


「おい、神田のおっさんやけど」


『えぇ、恐らく父方か母方のどちらかの祖父母が闘気龍だったみたいね。そして、今回の家族を殺した殺人犯を前に怒りで覚醒したってところね』


 紫電の言葉にリエンが、自分の見解を述べる。

どうやら、龍の中にはは昔から人間達と親密な関係をとっている龍もいたようである。

ただ、それに何か目的かあっての事なのかは今となってはわからない。


『それとグラディウスだけど、彼は現代龍王の考えに賛成だからね。これから厳しくなるわね』


「マジかよ……四天龍を相手にはさすがにきついで」


 リエンの言葉に紫電が愚痴をこぼす。そして、アシエも不安そうな顔をしている。


『大丈夫よ。四天龍の全員が、現代龍王に賛同しているわけじゃないわ。少なくとも四天龍のうち2人は、先代の龍王に仕えていたから今の龍王の考えについていけず、失脚させようと動いているみたいよ』


 その言葉に紫電とアシエの目に、少なからず希望の光が灯っていた。

しかし、それでも現状は厳しい状況である。どこかで仲間を増やさなければならない、そう考えたリエンはあごに手を当て唸っている。 

四天龍のうち今の龍王に反対している2人と、なんとかコンタクトを取れないかと考えている。

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