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煉獄の焔  作者: yukke
第六章 正義の復讐者
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第一話 最凶社長と殺人犯

 小雨の降る中、花凛は神田のマンションでニュースを見ていた。

トップはもちろん、警視総監殺害の件である。

昨日会った人が、目の前で生きていた人が死んだ。恐らく、NECの事を独自で調べていた所を、狙われて消されてしまったのだろう。

犯人は間違いなく、NECの誰かである。だが、報道されているのは通り魔の可能性大とされていた。


 警察は、完全にNECの手中に落ちている。これはもう間違いなかった。


「ちっ、解せんな。なんで、あんなはっきりと分かる所に遺棄するんや? まるで、見つけて下さいって言ってるようなもんや」


『見せしめ。でしょ』


 紫電の疑問にリエンが自分の見解を述べた。

恐らく、発見されても自分達に疑惑がかかることがないと分かっていての事であった。


 今、神田のマンションには紫電とアシエも居た。

神田は、もちろん警視総監の通夜と葬式に出席するため、今日明日はマンションには帰らない。

そして、本来なら学園祭2日目の今日。あのような事件があったために、中止になり自宅から出ないように学校から指示されていた。

学園祭の襲撃事件も、テロとして片付けられており犯人は自ら命を絶った事にされていた。


「む~、警察はもう宛てにならないですか……」


 アシエが、足をぱたつかせて不機嫌そうにしていた。

結局、個人個人で動いていた事により花凛達は完全に後手に回っていた。

ようやく、チームとして動く事になったとはいえ、相手は世界レベルの巨大組織である。全く対策案が出てこなかったのだ。


 New Era Corporation。略してNECは、本社をアメリカに置くベンチャー企業が先駆けである。

始めはこじんまりした、製薬の販売をする会社だった。


 しかし、サディアス・H・ネビィルが代表取締役社長になってからというもの、アメリカの大企業の株を片っ端から回収しまくり、自身の会社の株すらも還元率を高めに設定する事により、株主を確保しまくる。

そうして一気に世界レベルの大企業になってから、新薬の開発を次々と行い、それが世界的にも認められるレベルの新薬であったために、アメリカ政府どころか、EUや中国、日本までもがこの企業に注目をしていた。


 そして、この前のあの記者会見である。

世界は、NECの『アビリティルギー』開発プロジェクトに協力する姿勢を示したのである。

もはや、サディアスの手腕は人のそれを凌駕していた。


「胸くそ悪いわ、うかつに動くと世界を敵に回すで。俺らはただ、こいつらのアホな行動によって繋げられたタルタロスへの道、そっから漏れ出る怨念に充てられ鬼化した者達の処理、後は『アビリティルギー』で鬼化した者を処理。それしか、出来んのんか……」


『漏れ出る怨念の濃さによっては、真鬼になることだって有り得るわ。その薬で鬼化した者は、まず間違いなく真鬼になるわね。何せ、神族の力も多少混じっているからね』


 部屋の中は但ならぬ空気が漂っている。

花凛達の作戦会議は思った以上に難航していた。











 時同じくして、ここはNEC日本支社の会議室。

ここでは今、役員会議が行われていた。

ぐるりとテーブルが円を描く様に並べられ、上座には日本支社の源十朗社長が高級な椅子に深々と腰掛けている。そして、後ろのモニターにはアメリカ本社からテレビ電話によってその会議に参加している、サディアスの姿が映し出されていた。

源十朗の態度には良い印象を持っていない者もいるらしく、ピリピリとした空気がその場に流れている。


 いや、態度だけでは無かった。今朝の新聞の記事、警視総監の殺害の件それをやった者が誰なのか、この場にいる役員達は皆知っていた。


「源十朗社長。さすがにやり過ぎではないか?」


 おもむろに役員の一人が口を開く。


「確かに、警視総監は邪魔ではあった。我々のプロジェクトの真の目的に気づき始めていた。だからと言って、殺す事は無かったのではないか? いくらでも、止めて置く方法はあったのだ」


 役員全員、険しい顔つきで源十朗の睨んでいた。

今までも、宗次朗部長等や沢村等かなり危ない事をしている者達も居るが、それは全て揉み消せるレベルではあった。

だが、今回のはそれでは済まされないレベルの事である。

しかし、源十朗はそれに動じず淡々と役員達の言葉をきりかえした。


「警視総監だけなら、殺す必要は無かっただろう。だがな、我々の目的に気づき水面下で動く者達がいる。そいつらにこれ以上好き勝手にさせない為には、見せしめが必要なのだよ。ほんの数人で、我々の邪魔をする事がどういう意味か分からせるためにね」


「それは、今世間を賑わしている女ヒーローとその仲間達の事か?」


 役員の一人が、そう口にすると他の役員達もざわつき始めていた。

そう、花凛達は学園祭襲撃を解決したとしてネット上で話題になっていた。


「しかし、我々の計画は人類の輝かしい未来の為に行っているはずだ。そうではないのですか? サディアス氏」


 役員全員が、今回の源十朗の行動に不信感を抱いていた。


「そうですとも。私が見つけた異空間にある、新たなエネルギー。それを、使い人々の体を進化させ新人類を誕生させる。しかし、それには犠牲が付きものです。ですが、世間はその先を知らないですからね。反対する者が出るのは当然てしょう」


 モニター越しにサディアスが答える。

その表情に一切の同様を見せず、淡々と答える所を見ると嘘を言っている様には見えない。

役員は全員、サディアスの言動に何ら不信を抱いてはいなかった。

今朝までは。


「ですが、どうもこの『アビリティルギー』を使い化け物になって暴れているという話も、私達は聞いています。これもあなたが話ていた事とは違いますね。どういうことですか? それとも、これが新人類と言うわけですか?」


 さすがに、役員達も一般人の様々な情報から自分達のやっている事が本当に正しいのか疑問を抱き始めていた。


「既に、このプロジェクトは世界レベルでの国家プロジェクトとして動いています。新たなエネルギーを得て、無限の発展と新たな進化を遂げるか。このまま衰退していくのかですよ。それに、『アビリティルギー』を使った症例は、恐らく副作用でその様な事になっているのでしょう。新人類に進化させる為のこの薬は、それ程の薬だということです」


 サディアスの言葉に、皆が静まり返えりただ聞いているだけだった。

しかし、もちろんこれはサディアスが役員達を納得させる為の嘘である。

実際は、進化でも何でも無く怨念に取り込まれ体を乗っ取られているだけである。

うまく理性を保てたとしても、その体は人間ではなくなっている。

しかし、サディアスが何故この様な薬をばらまいているのか、それは現時点では誰も気づいていなかった。


「サディアス氏、その言葉が嘘でないのであれば。私達はいくらでも協力しましょう。しかし、もしそうでなかった場合はそれ相応の事は覚悟しておいて下さ……」


 しかし、役員がそう言い切る前に源十朗が立ち上がった。


「ぐちゃぐちゃとうるさいんだよ、てめぇら。自分の欲望の為だけに、人を駒の様に使い挙げ句死に追いやる。そんなやり方をしているお前らが、文句を言える立場か? 黙ってついてくりゃいいんだよ。完成した『アビリティルギー』を使い、新人類になって永遠の命を手に入れたければな!!」


「ぐっ……それは」

「しかし、化け物になるなんて聞いては……」

「人間として新たな進化を遂げなければ意味が」


 役員達が、それぞれ口にしている。

どうやらサディアスは、完全な『アビリティルギー』を使えば化け物にならずに新人類になり、永遠の命が手に入ると言ったのだろう。

だが、それをするにはもっと大量のエネルギーがいる。その為に3か月後、異空間への道を広げる為の実験をする。

役員達はそうふきこまれていた。


「とにかく、俺達のやる事に一般の奴らがどう思おうがバックに世界という巨大な組織がついているのだ、誰も邪魔できん。そして、お前等の地位や名誉が汚される事もない。安心しておけ」


 役員達は、黙り込んでいた。もう、後戻りは出来ない。

この会議の場で、反対する者は既にいなくなっていた。

その後は、3か月後の実験についての話し合いが始まった。








 数時間後。

会議室から役員達が出て行き、会議室には源十朗とモニターに映ったサディアスだけになっていた。


「源十朗君。今回は何とかなったが、さすがに堂々と人殺しをされてはさすがの私でも対処仕切れなくなるよ。もう少し、方法は考えて欲しいね」


「そいつは悪かったな。昔からあいつには煮え湯を飲まされてきていてね、どうにも我慢出来なかったな」


 源十朗の言葉からして、どうやら殺された警視総監と源十朗は顔見知りの様であった。


「まぁ、良いでしょう。これで、警察も完全に私達の手中に落ちましたし、心置きなく計画を進められますよ。源十朗君。いや、刀刃龍 グラディウス君」


「その名で呼ぶな」


 サディアスの悪ふざけに、源十朗はモニターを睨みつける。その視線は見た者全てを切り裂く程の、鋭い眼光である。


「ふふ、悪い悪い。じゃ、引き続き頼むよ。3か月後に、またそちらに行かせてもらうよ」


 そう言うと、モニターは切れ画面は真っ暗になった。

源十朗は、それを確認すると背もたれに背中を預けテーブルに置いてある葉巻を手に取ると、口に加えてふかし始めた。


「ちっ、胸くそ悪い奴だ」


 すると、会議室の扉がノックされる。


「入れ」


「失礼します。社長、少しお話が」


 会議室に入って来たのは、学園祭を襲撃したときに現れた科学者、沢村であった。

手に封筒を持ち、源十朗へと近づいていく。


「何だ?」


「いえ、実はバイオロイド作成の為の素体ですが。素晴らしい人物が居ると言う情報を掴みましてね」


「誰だ? まぁ、どうせ他の奴らと同じで暴走して使い物にならんだろうが」


 源十朗はそう言うと、沢村が出した封筒の中を出し中を確認する。

そこには、一枚の写真と報告書の様な物が入っていた。


「いえ、それがこの人物。相当の精神力を持っているのか、既に漏れ出た異空間の濃いエネルギーに充てられているにも関わらず、暴走せず体の変化も無く、力を使いこなして居るのですよ」


「何だと?!」


 源十朗は、目を見開き必死に書類に目を通している。

そして、再度写真に目を向けるとにやりと不敵な笑みを浮かべる。


「なるほど、こいつは期待出来そうだな。よし、探し出してここへ連れてこい。念のため警察にも伝えておけ、こいつが捕まった場合すぐにこっちに寄越すようにとな。この連続殺人犯をな」


 そう言って、写真をテーブルに放り投げる。

そこにはパーカーのフードを目深くかぶり、獣の様な鋭い目つきをした殺人犯が映っていた。

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