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煉獄の焔  作者: yukke
第五章 学園祭襲撃
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第十四話 チーム結成

 あれからしばらくして、生徒や一般の人達は意識を取り戻し学校の惨状を目の当たりにし、呆然としていた。

中には、怪我をしている人も居たが軽症で済んでいた。


 勿論夏穂、美穂、志穂も目を覚まし花凛の元に走って来て、花凛の無事を確認していた。

3人が、無事だった事の方が花凛にとっては嬉しかったらしく。3人を抱きしめると涙を流していた。


 その後3人も含む生徒達や、一般人達は念のために検査をすることになり救急隊員達や警察官から色々聞かれていた。

花凛は、3人に警察署に報告に行くことを告げると神田の車に紫電達と共に乗り込み、学校を後にした。

その時、マスコミの車が多数来ているのが見え「今日のニュースのトップこの事件だろうな」と花凛は考えていた。





 署に着くと、神田が真っ先に署長室に呼ばれ花凛達を残して向かう。

玄関の待合室で、花凛達は一旦待つことになった。


「あれは、絶対。きつい、処分を受けることになるやろうな」


 紫電の言葉に、花凛は心底不安になっていた。

この件に関しては、全くの無関係である神田が何故ここまでするかは分からなかったが。

自分のせいで、神田の人生が狂ってしまうのではと思ってしまっていた。


 すると、そこに谷本家の家族がやって来た。どうやら、神田から連絡を受け心配して来てくれたのであろう。

だが今ではもう、花凛の元家族となっていた。

しかし、この表現もおかしいであろう、何故ならこの家族は今でも花凛の事を自分達の家族だと思っているからである。


「花凛!! 大丈夫なの?!」


 谷本家の母親が、心配そうに駆け寄ってくる。

谷本家は、学園祭1日目は都合が合わずに2日目に来ることにしていた。

そのために、学校襲撃を免れていた。


「あっ、えっと。母さん……ってこの人達の前で言うのもな~」


 花凛は、頭を抱えてしまう。紫電達に、家族の事をどう説明するべきか。

紫電達には、まだ言ってないのだ。自分が元男だったことを。


「なんや、花凛の家族か? えっ、でも。あのおっさんが親なんじゃ?」


 紫電が、腕を組みながら首を傾げている。勿論、アシエも同様である。


「えっと、どう言えば良いのやら……」


 花凛が、悩んでいると亮であったときの妹美沙が紫電達に話しかけてくる。


「えっと、花凛のお友達?」


「友達と言うよりは、同士に近いな」


「その通りです!」


 紫電の言葉に、アシエも元気よく手を上げて同意している。


「花凛。もしかしてこの人達には、言ってないの?」


 花凛の様子に、母親が気づいたらしく。花凛に耳打ちをしてきた。

容姿が変わり、戸籍上も家族ではないにしろ。心配してくる姿は家族そのものであった。


「う、うん。言う機会が無くて。でも、誤魔化せないだろうから説明がてら言っちゃうね。リエン良い?」


『まぁ、良いんじゃ無い?』


 リエンに確認を取ろうとすると、またしても花凛の中からリエンが出てきた。

どうやら、花凛の体の状態を調べていたらしい。

そして、花凛は紫電達に過去の自分の事を話し始めた。






「なるほどな~そう言うことかい。だから、どうしたって感じやけどな~」


「そうです、花凛ちゃんは花凛ちゃんですよ」


 紫電もアシエも、花凛の話に全く動じずに接していた。

それに花凛は驚き、2人に聞き返す。


「えっ? 気持ち悪くないの? 元々男だったのに」


 すると、紫電が真剣な顔で花凛に向き合い頭を掴むと、ぐるぐると回し始める。


「あのなぁ! 考えすぎやで花凛。生まれ変わって女になっただけやろう。それのどこが気持ち悪いねん!」


「あうぅぅ……ちょっと、紫電。目が回る~」


 その言葉に、ようやく紫電は手を離す。しかし、既に結構頭を回されたらしく、花凛は目が回ったかの様にフラフラしている。

その様子を見て、アシエもクスクス笑っていた。


「ふふ。良い仲間ね。花凛の事、どうか宜しくお願いします」


 そう言って、谷本家の母親が紫電達に頭を下げる。


「当たり前や。俺等の中では花凛が一番最年少やしな。世話したらなあかんねん」


「その通りです! アシエ達に任せてくださいです!」


 その時、奥の扉が開きそこから神田と署長が出てきて、花凛達の元にやってきた。どうやら、神田への処分が決まったようである。しかし、その前に神田も署長も谷本家に気づくと、まずはそちらに挨拶をした。


「これはこれは、来られていたのですね谷本さん」


 まずは神田が頭を下げ、続けて署長が頭を下げた。


「それよりも、賢治さんの処分は?!」


 花凛が、我慢出来ずに立ち上がり神田に聞いてくる。

その顔は、非常に心配している様子が見てとれる。


「3ヶ月の謹慎処分です」


「えっ? それ、だけですか?」


 江本署長の言葉に、花凛が目を丸くして聞き返していた。

だが、それもそのはず。化け物に近い状態になってしまい、人々を襲いまくっていたとはいえ、まだ人である人達を殺したのだから普通はもっと重い処分が下されるはずである。

すると、江本署長の後ろからもう1人人物が現れた。


「神田君は、正しい事を。市民を守る為に取った行動なのです。とは言え、許可をとらずに撃ったと言うことで、謹慎にしているのです」


「総監、少し甘くないですか?」


 神田が、今しがた署長の後ろから現れた人物に文句を言っている。

総監という言葉からして、警視総監なのであろう。


「これからの事を考えれば、妥当だと思いますよ。おっと、失礼致しました。私は、警視総監の岸と言います」


 そう言うと、総監は花凛達に挨拶をした。かなり厳つい風貌が見てとれる。目に傷が入っている所を見ると、様々な修羅場をくぐってきたのだろう事は容易に想像出来た。


「さて、少し移動しましょうか。ここでは話にくいことがありますので」


 花凛は家族に帰る事を伝え、心配してくれた事に素直に感謝をした。

そして、この近くの神田のマンションに向かうことにした。






  神田のマンションに着くと、花凛は紫電とアシエと共に神田の部屋へと入る。

そして、テーブルに総監と神田と顔を合わせる様にしてイスに座る。


「で、俺等も関係があるからこいて言うことやったけど? 言っとくけどな、俺はあんまり警察官と馴れ合いたくないねん」


『その割には、普通に警察署にいたよね? 紫電』


「なっ! あれは、花凛がいたから仕方なくや!」


 紫電が神田達にふてぶてしい態度をとっていたが、リエンのその言葉に慌てふためいていた。


「はっはっ、我々を嫌っていても構わんよ。それに、警察に協力してくれという話では無いのだよ。そして、神田君。君を謹慎処分にしたのも、この者達への頼み事と関係があってのことだ」


 さすがは警視総監である。紫電の様な人の扱いも慣れたものなのだろう。

そして、警視総監の頼み事というもので気になり花凛は警視総監に聞き返す。


「頼み事って、いったい何ですか?」


「いや難しいものではない、君達にはいつも通りに行動して欲しいだけです。それと、ここにいる人達は皆が花凛君に協力したいと集まっているのですよね?」


 その総監の言葉に花凛以外の全員がこくりと頷いた。


「当たり前や、でないと一緒にはおらん。他の龍と違い、謙虚で一生懸命やしな。手伝ってやろうって気になったわ」


「アシエちゃんもです! 花凛ちゃんが可愛いから協力してあげるです」


「ありがとう、2人共。でも、アシエのはあんまり理由になっていないよ」


 花凛は、2人の返事に胸が熱くなり自然と感謝の言葉が出ていた。

こんなにも心強い味方はいない。そう思える程頼りになる2人だからだ。


『よかったわね、花凛。気に入られて~』


 その様子に、リエンも嬉しいそうに顔を綻ばせていた。


「ふむ、そうですか。なら丁度いいですね。どうです、皆さん。このメンバーでチームを作ってはどうですか? 神田君を司令塔にしてね」


 総監のその言葉に、皆がそちらに顔を向けて驚きの表情をしている。

しかし、神田は謹慎処分を受けているので動けないはず。それを不思議に思った紫電が総監に聞き返した。


「総監のおっさん。神田のおっさんを謹慎処分にしてるんやで、それやのにどうやって司令塔に?」


「私も立場がありましてね。そういう決定をしました。しかし、神田君にも君達にも、警察は関係無しに動いて欲しい。これは、私からの“最初で最後”のお願いです。どうか、裏で動く者達を潰して欲しい」


 総監の口調は、非常に重く。しかし、強い想いの乗った言葉であった。

その異常さに、神田が気づき言葉をかける。


「総監。最後というのは?」


 その神田の言葉には答えずに、総監は続けた。


「警察の言うとおりに動いても、事態は最悪の方向に進むだけです。警察内部にNECの内通者が居る限りね。そのせいでか、警察内部でもNECに感化されている者達が増えておりましてね」


「なっ?!」


 その言葉に神田が立ち上がり、驚きの声を上げた。

しかし、総監の言葉に花凛はどこか納得していた。

それは、いくら何でも警察が動かなさすぎたので疑問に感じていたからであった。

いくら、画期的とは言えネットや世論に目を向ければ、おかしな事象が多々起こっているのだ。なのに警察は何の捜査もせず、挙げ句の果てにNECを批判する者達を、次々とデモを扇動する危険有りとして捕まえていたのだ。


「さすがに、この事態に私個人で動き内通者が居ることは突き止めたのです。しかし、誰が内通者かは突き止める事が出来なかった。不甲斐ないよ、人々を守るはずの警察がこんな……!!」


 総監は両手を握りしめ震えていた。それは、悔しいからか怒りからか。どっちともとれない表情をする総監を、神田は真剣な顔つきで見ていた。


「私は、君達の言葉を信じている。どういう訳か、君達の報告はこちらに回って来なくてね。担当ている神田君に直接聞いたのだよ。その上で、私は君達の方を信じる事にしたのだ。君達の行動を見ていれば、一目瞭然ではあるからね」


 淡々と、総監は続ける。これが、本当に最後の言葉。遺言を残すかの様な話し方に、花凛達も黙って聞いていた。


「3ヶ月後だ。3ヶ月後、奴らは何か巨大な実験をするつもりのようだ。君達の話を総合すると、その実験でタルタロスとやらへの道を完全に開くつもりではないのか?」


『そんな……3ヶ月後。年が明けた直後にあいつは自分の目的を達成するつもり?』


 総監の言葉に、リエンが呆然としている様である。余りにも短い期間である。花凛達は未だに、その人物の最終目標が分からずにいる。


「時間がないんだ、私にも君達にも。だから、長いとは思ったが神田君に3ヶ月の謹慎処分を与えたのだ。それは、相手に邪魔者が動けなくなったと思わせると同時に、君達には警察とは関係無しに自由に動いて貰いたかったのだ」


「でも、それやったら何で神田のおっさんやねん? たまたま銃を無断で使ったからか?」


 紫電が、総監に疑問をぶつける。

神田は、この件に関しては無関係ではある。花凛の保護者とは言え、そこまでする必要はないはずである。


「俺も、自分の意思でお前達に協力したいと思っているんだ。何より、あいつらが許せないからな。絶対に潰してやる」


「ありがとう、神田君。そう言ってくれて」


 神田の言葉に安心したのか、強ばっていた表情が少し緩んでいた。

しかし、それはどちらかというと自分の最後を悟ったかの様な表情でもあった。


「総監。出来たらお逃げ下さい」


「ありがとう、神田君。あぁ、出来るだけあらがってみるさ。私もまだまだ引き下がるつもりは無い!」


 総監は、力強く頷き花凛達を順番に見ていく。

そして、花凛達に向かい敬礼をした。


「君達に、私とそして嘆き悲しむ人々からのお願いだ! 悪しき企みをする者達に正義の鉄槌を下してやって欲しい!!」


「了解!!」


 花凛達は、勢いに負けたのかそれとも情に流されたのか。神田と一緒に総監に敬礼をしそう返していた。紫電も同様であった。














 そして、その日の夜。




 港に浮かぶ警視総監の遺体が発見された。

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