第九話 鉄心龍 アシエ VS 三つ子の処刑人 吾郎 ①
校門前広場ではアシエが、ハンマーを担ぎ目をしばたかせていた。
「う~、やっと見える様になってきたです。紫電さんの、バカ野郎です!!」
どうやら、アシエは先程の紫電の雷光で目をやられてしまっていたようであった。
「おかげで、閉じ込められたです……」
アシエの周りには何も無いように見える。
しかし、目を凝らすと光の反射の加減で、薄い膜の様な物がみてとれる。
そして、良く見るとアシエはドーム状のバリアの中に居るようである。
「グフヒヒヒ、ちょこまかと動きやがって。だが、ようやく捕らえたぞ!! まぁ、俺も先程の閃光にはびっくりしたがな」
「う~、紫電さんは後で百叩きの刑です」
どうやら、アシエはその体の小ささからバリアを避け、捕まらずにちょこまかと逃げ回り、吾郎に攻撃を浴びせていたようである。
しかし、相手は『バリアを張る』能力であり、アシエの攻撃は見事に防がれていた。
しかも、このバリアは入る事は簡単に出来るが出られないと言う、一方通行のバリアであり、大きさを自由に変更する事が出来た。
つまり、バリアに捕まったら押し潰されてしまうのだ。
「グフヒヒヒ。あっという間にチェックメイトだ。死ねぇ!」
校舎前にいる吾郎がそう言うと、伸ばした右腕の手をゆっくりと窄めていく。
すると、アシエを閉じ込めているバリアが徐々に小さくなりアシエを潰そうとしてくる。
「む~、させないです!!」
そう言って、アシエはハンマーを振りかぶり思い切りバリアに打ちつける。
だが、何度やってもバリアは壊れずにどんどん小さくなっていく。
「ほえ~なかなか、頑丈なバリアです。よ~し、ハンマーで無理ならこっちです!!」
そう言うと、アシエはハンマーの形状をぐにゃぐにゃと変化させていく。まるで、スライム見たいな動きをするそれは、鉄とは思えないくらいである。
そして、今度は1本の長い槍になった。今度は装飾が施されている。
「鉄心槍 “アシエちゃんランス”!!」
そう言うと、アシエは目の前のバリアにその槍を思い切り突き立てた。
すると、ガラスが割れる様な音と共にバリアが弾けたのだ。
「ほよ? 壊れたですか?」
「なっ?! くそ!」
吾郎は焦り、再び右腕を前に突き出し直すと右手の手のひらから、壁の様たバリアが飛び出してきた。
そして、吾郎は右腕を上げるとバリアも上に上がりドーム状に変形すると、アシエの上からそれを落としてくる。
「そう、何度もかからないです!! やぁ!」
アシエは、再び槍を突き出し上空から落ちてくるバリアに刺す。
すると、先程と同じようにガラスが割れる音と共にバリアが弾けて割れる。
「はっは~ん、分かったのです。このバリア、ハンマーみたいな打撃には強くても、槍みたいに突き刺すタイプには弱くて、すぐに割れちゃうですね?」
「ちっ、クソが。ハンマー以外にも変形するのかよ」
「アシエちゃんは、鉄心龍ですからね。鉄はアシエちゃんのおもちゃです!!」
アシエは、槍を上に向け地面に突き立てたると左手を腰に添えて、ちょっと、偉そうなポーズを取っている。
「し、か、も~自分自身をそのバリアで守ることが出来な……いことは無いですね? あれ?」
アシエは自慢気に答え様としたが、実際はそうではないことに違和感を覚え、首を傾げている。
「グフヒヒヒ、そこまでは分かっていないのか。ならば余裕だな、雑魚ドラゴンが!」
吾郎が得意気に言ってきた。
しかし、現に不可解な部分があるのも確かであった。
このバリアは、入る事は出来ても出る事が出来ない。つまり、バリアに向かって来る物を防げないはずである。
なのに、アシエの攻撃はきっちり防がれていた。
「む~!! でも、そんなの分からなくてもバリアは潰せるのですよ!! でやぁぁああ!!」
そう言うと、アシエは槍を構え吾郎へと突進する。
そして、そのまま吾郎に向けて槍を突き刺そうとする。
しかし、破れるはずのバリアに槍が防がれてしまう。
鉄と鉄がぶつかる激しい音を響かせて。
「ほぇ?! 何でですか?」
「グフヒヒヒ、残念。俺の出すバリアには属性を付けることが出来るのさ。つまり、今のはバリアに鉄の属性を付けさせてもらったんだよ!」
「え~!! 鉄は、アシエちゃんの専売特許ですよ~許せないです!」
少し怒りどころがズレているアシエの言葉を聞く気もなく、吾郎は再び右腕を伸ばす。
「くらえ!!」
そう言うと、先程アシエの攻撃が壁となり向かって来るが。
何処か様子がおかしかった。何故か熱を持っていたのだ。
「ぐっ!! なっ、何ですかこれ?! あっついです~」
アシエは、槍を変形させると盾を作りそれを防いでいる。
しかし、バリアから発せられている高熱がアシエを苦しめている。
それどころか、徐々に盾も溶けてきていた。
「グフヒヒヒ、真っ正面ばかり見ていて良いのか?」
そう言うと、吾郎は腕を上げもう一つバリアを作るとドーム状にしアシエの上に落として来た。
「きゃぁぁああ!」
そのバリアも熱が発せられており、閉じ込められたアシエは何故か炎に包まれていた。
「グフヒヒヒ。炎の属性を付けてやったのさ!」
吾郎は、自慢気にしており。もはや、自分の勝ちが揺るがないことを悟った様な表情であった。
「あっついですねぇ!!」
だが、アシエも龍である。この程度の炎ではビクともしていなかった。
そして、盾を槍へと変化させるとバリアに向かい突き刺す。
「甘い甘い!」
炎の暑さが無くなったと思えば、アシエの槍の攻撃はバリアに防がれていた。
どうやら、属性を変化させて再び鉄にしているようである。
「くす、アシエちゃんの力の事聞いて無かったですか?」
すると、ドーム状のバリアに突然ポッカリと穴が空くとそこからアシエが、吾郎に突撃していく。
「なっ?! しまった!!」
「そうです! アシエちゃんは鉄を操れるのですよ。バリアに鉄属性を付けても無駄なのです!」
そして、アシエは槍を構えると吾郎に向けて真っ直ぐに突き出す。
しかし、防ぐ方法等それしか無かった吾郎は、再びバリアを張り鉄属性で防ぐ。
だがその瞬間、その鉄のバリアの一部が拳に形を変え、突然吾郎に向けて飛び出してくる。
「ぐあぁぁ!!」
鉄のバリアから打ち出された拳が、吾郎の顔面に直撃する。
どうやら、アシエが鉄のバリアの一部を組み換え拳の形にして打ち出した様である。
そして、バリアは壊されたり形を変えられたりすると消えてしまうらしい。存外、危うい存在のようである。
だが、もう一つ問題が残っていた。
「これで後は、一方通行のはずのバリアが、攻撃を防げたりするのは何故なのかです!!」
アシエは、槍を吾郎に向けて叫び格好良く決めていたが、アシエの服は先程の炎属性のバリアに包まれた時に、あらかた燃えてしまっていた。
しかし、そこは人間と違って龍であるからか。恥ずかしがっている素振りは一切見せていない。
「グフヒヒ、そんな格好で凄んでも怖くも無いわ。この、チビっ子が!!」
吾郎が起き上がりながら、アシエに向かい怒号を飛ばす。
むしろ、吾郎の方が小さなアシエに吹き飛ばされた事により、怒りが沸いていきているようである。
「む~、アシエちゃんはこれでも80年は生きてますよ!」
龍の寿命は約1000年くらいであるため、80年はまだまだお子様ではあったが、人間からしたら十分アシエの方が年上であった。
しかし、そんな事は関係ないとばかりに吾郎は次々とバリアを張っていく。
「ほえっ?! バリアが沢山!!」
「1つしかバリアを張れない、何て言った覚えはないぞ」
そして、そのバリアは次々と球体の様に丸まっていく。
多数の球体型のバリアを作ると、吾郎はそれをアシエに向かって一斉に放つ。
「む~、そんなの全部打ち返すです!!」
すると、アシエの握っている槍が今度は鉄バットに変形し、球体バリアをそのバットで打ち返していく。
「ちっ、しつこい!」
そう言って、吾郎は自身の前に壁の様なバリアを張り防いでいる。
そして、防きながら次々とバリアを作り出すと球体にして放っていく。
さながらそれは、野球選手の打撃練習の様になっていた。
すると、アシエが打ち損ねた球体型のバリアが何故かアシエの背後から、アシエに襲いかかる。そして、そのバリアからは電気が発生しており、アシエに襲いかかる。
「あわわ、何ですか!! って、外したバリアが跳ね返って来てるです。まさか、あそこにもバリアがあるですか?」
どうやら、アシエの背後数メートル先にバリアが張られており、それがバリアを跳ね返していたのだ。
「不味いです、このままじゃ防戦一方です。なら、一か八かです!!」
そう言うと、アシエは複数の球体型バリアをその目に捉えると、2~3個同時に打ち返す。
そして同時に、アシエは吾郎へと突撃していく。
「グフヒ、何個返そうが同じ事だ!!」
吾郎は、アシエの打ちかえした球体型バリアを、自身のバリアで防ぐ。そして、動き出したアシエを閉じ込めようとした。
だが、アシエは既に後ろに回り込んでいた。
「貰ったです!!」
いつの間にか、アシエはバットをハンマーに変えており吾郎を叩こうと振りかぶる。
「ちっ!!」
しかし、アシエが叩くと同時に吾郎は正面に飛び出し、自身の前に作っていたバリアをすり抜けて回避していた。
バリアを作って防ごうとしても、時間が無かったようである。
「まだです~!!」
アシエは、吾郎を追撃するために再びハンマーを振り上げ吾郎に飛びかかる。
だが、今回はギリギリで吾郎がバリアを張る方が早く、アシエのハンマーを防いだ。。
「グフヒヒ、少し焦ったが。所詮雑魚なドラゴンだ、これが限界だろう!!」
「ぬ~うるさいです。その口をすぐにふさいで……ほよ?」
アシエが言い切ろうとした瞬間、アシエの目に不思議な光景が映った。
アシエのハンマーを壁の様なバリアで防ぐ吾郎。だが、その後ろから自ら打ち出した球体型バリアが、これまた自ら作り跳ね返して不意打ちを狙う為のバリアに跳ね返って、吾郎の後ろから襲ってくる。
しかし、大きく外れていた為に吾郎に当たる事はなかったのだが。
アシエのハンマーを防ぐバリアの内側をすり抜けた。
「……あ~、そう言うことですか」
アシエが、バリアからハンマーを離し地面に降りる。
そして、ハンマーを肩に担ぎ自慢気に吾郎に指をさす。
「見切ったですよ~そのバリアの力!!」




