第八話 ~ 悪の鼓動 ~ ④
花凛は、ゆっくりと目を閉じそしてこの体になってから今までの事を振り返った。
そして、目を開け豪徳寺の姿をしっかり捉える。
その目に信念が宿ったかは分からない。しかし、確かな想いを花凛は見つけていた。
「リエン、今はこいつを倒さないと。力を貸して」
花凛の言葉はさっきまてとは違い、焦りの色はなかった。
『OK、分かったわ』
リエンがそう言うと、花凛の体に炎が纏わり付く。そして瞳孔は縦に、纏った炎は背中に龍の翼となり、花凛は龍化した。
「ほぉ、ようやく本気ということですかか。ですが、いくら本気を出そうと私には勝てないですよ。クヒヒヒ」
豪徳寺は、両手を広げて挑発してきた。だが、花凛はもうその手にはのらなかった。
気づけば豪徳寺の挑発にのせられ、単調な攻撃になっていたからだ。
そして、花凛は大きく深呼吸をし偃月刀を構えた。
「火焔刃!!」
花凛はそう叫びながら、偃月刀を縦に振り上げる。
すると、偃月刀から炎の刃が飛び出し豪徳寺に向かっていく。
だが、豪徳寺は刃の様な指で軽々と受け止める。しかし、受け止めた瞬間炎が舞い散り豪徳寺の視界を閉ざす。
「むっ、つまらない手を……っ?!」
豪徳寺が、正面に居るはずの花凛の姿を捉えようとした瞬間。
「こっちよ」
花凛が、そう言いながら豪徳寺の視界の下から現れ顎を蹴り上げる。
「あまりに異様な腕でそっちに気を取られていたわ。他は生身じゃない、だったらそこを狙えばいい」
豪徳寺は、激しく後ろに吹き飛ぶ。しかし、途中で腕を地面に突き刺すように掴み、踏ん張ってきた
。
「クヒヒヒ、やりますねぇ。そうでなくては」
しかし、豪徳寺には焦りの色は見えない。
そして、豪徳寺が踏ん張った時の屈んだ状態から、地面を掴んだままの腕を使い反動を付けて、花凛に向かい飛びかかり腕を引き突き刺そうとしてくる。
しかし花凛は、その攻撃を読んでいたかのように偃月刀を反転させると、腕の攻撃を交わすと同時に、カウンターで柄の部分を豪徳寺の胸に向けて突き、豪徳寺の体を後ろによろめかせると偃月刀を再び反転させ、その勢いをもって斬りつける。
「ぐぉっ……」
豪徳寺が苦悶の表情を浮かべる中、リエンは花凛の攻撃にキレの良さに驚き声を上げる。
『ナイス花凛!! やるじゃない!』
しかし、豪徳寺は一瞬苦悶の表情を浮かべただけで再び気持ちの悪い笑みを浮かべる。
その表情に疑問をもった花凛が、豪徳寺の体に再び目をやる。
すると、先程の攻撃による傷が一瞬で消えて無くなっていた。
「クヒヒ、残念でしたね~」
だが、豪徳寺が喋り終わる前に花凛は動いていた。
そして、豪徳寺が自分の再生力を誇っている一瞬の隙に懐に飛び込む。
「あなたが、どんな力を持っていようと関係ない。私はあなたを倒す。火焔掌波!!」
そう言って、花凛は豪徳寺の腹めがけ掌底打ちを浴びせる。もちろん普通の攻撃ではなく、花凛の手は赤く熱くなり炎を纏いそれを掌で打ちつけたのだ。
「ぐぅおぉぉぉ!!」
炎の衝撃波と共に豪徳寺は、さっきより更に激しく後ろに吹き飛び地面に叩きつけられ、うつ伏せに倒れ込んだ。
「私は、あなたを許さない。あなたのせいで鬼化しているのなら、あなたを倒し鬼化を止める。あなたの理不尽な理由で勝手に鬼化されて、皆苦しんでいる。絶対に許さない!!」
花凛は、豪徳寺に向けて叫んだ。自らに宿した強い想いを確認するために。
「クク、クヒヒヒ。勝手にですか。果たしてそうですかね~」
そう言いながら、豪徳寺が起き上がる。
「ついでに言っておくと、私が原因ではないですよ。新エネルギーを生み出す装置を作ったのは別の人間。そして、広めているのは私の勤めている会社ですよ」
豪徳寺が言うには、会社ぐるみでこの事態を生み出していたようである。
「それに、全員が望まずに鬼化していると言えますかね~?」
『どういうことよ?』
豪徳寺の言葉にリエンが反応する。
「何、簡単です。私と同じ事を彼等もしていたとしたら?」
そう言って、豪徳寺は懐から何かを取り出した。
それは、先程豪徳寺が使っていた物よりも、もっと小型の容器であり吸入口が付いていた。
「この中には、先程のエネルギーガスを薄めたものが入っております。これを吸えば誰でも特殊能力を使える。『アビリティルギー』として私どもが裏ルートで流しているのです」
『な……なんですって』
リエンが驚愕の表情を浮かべる。
「何のためによ?!」
リエンに続くように花凛は叫んだ。
「いえね、私達の作った新エネルギーの抽出装置はまだ未完成でして、資金がまだまだ大量にいるのです。暴力団の資金源だけでは足りないので、これを売れないかと考えつき、流してみたところ飛ぶように売れましてね。皆さん、やはり漫画やアニメの主人公の様な力が欲しいんでしょうねぇ。クヒヒ、下らな過ぎて笑えますよ。あなたが言ったのは間違いです、無理やりじゃない、大半の人が望んで化け物になってるんですよ!!」
「やはり、今回の暴力団の事件の犯人はお前か」
その声に花凛が振り向くと、神田が意識を取り戻していた。
「あなたもしぶといですね。えぇ、そうですよ。黙って金を出しとけば後で恩恵にありつけるものを、今すぐ見返りを寄越せと言うものでね。ついついやってしまいましたよ。まぁ、あの方からも消せと言われていたのでね」
点と点が繋がり、1つの線となっていく。全ての原因はこの豪徳寺のいる会社。NECの仕業だったのだ。
「じゃぁ、あなたとあなたの会社を潰す!!」
花凛は、豪徳寺に向かい叫ぶ。そして、偃月刀を握りしめ炎に変えていく。そして。
「煉獄の焔!!」
そう言って偃月刀を投げると、一瞬で炎の塊になり豪徳寺に向かう。
しかし、豪徳寺は変貌した右腕でその炎の塊を受け止める。
「クヒヒヒ、あなたに私達は潰せませんよ」
全くダメージを受けずに、右腕で炎を振り払った豪徳寺が、花凛達をあざ笑うかのように挑発してくる。
「自ら鬼化を望んだ? 化け物になるなんて知っていたら、誰も手を出さないわよ。結局あなた達がいるから、鬼化して苦しんでる人がいる。あなたの自分勝手な理屈はもう十分よ!」
花凛は、そう叫び再び炎を出現させるとそこから偃月刀を取り出す。
『良い感じになってるわね、 もう私が制御しなくても力を使いこなせてそうね。後は、体の方だけね』
リエンがそう呟いたが、花凛には届かない。それよりも目の前の敵を倒すことに集中していた。
「はぁっ!!」
花凛は、かけ声と共に豪徳寺に偃月刀の刃を振り下ろす。
豪徳寺は自分の右腕に余程自身があるのか、右腕の刃の様な指で受け止める。
だが、受け止めたと同時に偃月刀の刃から激しい爆炎が上がった。
「なっ?!」
その衝撃で豪徳寺は地面に叩きつけられる。
「何ですか、あなた先程とは全く違う」
さすがの豪徳寺も、この事態に驚きの表情を浮かべた。
「あら? ようやく表情が崩れたわね。あなたは少し傲慢過ぎる。それがあなたの敗北に繋がるのよ」
そう言うと豪徳寺に刃を向ける。
「言ってなさい!!」
豪徳寺は立ち上がると同時に、右腕を内側に振り抜き花凛の刃を払い退け、そのまま外側に振り抜いてきた。
しかし、花凛は全く動じずにそれ以上のスピードで豪徳寺の体を突き刺そうとした。
だが、豪徳寺もバカでは無くそれに気づくと咄嗟に後ろに飛び退いた。
「はぁ、はぁ。しぶとい人ですね」
豪徳寺が睨め上げるように睨む。
「それは、こっちの台詞よ」
花凛は、豪徳寺に比べ息も切れずに睨み返す。
すると、豪徳寺は内ポケットからもう一個カプセル型の注射器を出してきた。
「クヒヒ、しょうがないですねえ。こうなったらもう1本いきましょうか!!」
豪徳寺は、崩れた笑顔を向けそう言い放つ。




