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煉獄の焔  作者: yukke
第二章 放浪
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第十七話 迫る包囲網 ⑤

 花凛達は、今林の中に隠れ潜んでいた。

辺りは警察官達が花凛達を探す音が聞こえる。

この田舎町は、海の近くにあるがすぐ近くには小さな山もあるのだ。

つまり、山と海に挟まれるようになっている。

なので、山の近くにはちょっとした林もあったのだ。


「はぁ、はぁ……夏場だから、これだけ走ったらさすがに暑い……」


 花凛は座り込み、着ていた丈の短いチャイナ服を手で伸ばし、もう片方の手でパタパタ扇いでいた。ズボンは、短めのホットパンツで動きやすくしていた。


『でも、その扇ぎ方。気をつけないと見えるわよ』


 花凛のその姿に、リエンが上から覗き込む様にしていた。


「見ないで……」


 花凛は慌てて胸元を手で隠した。

すると、何人かの足音が聞こえ声がした。


「いたぞ! こっちだ!」


 警察官に見つかってしまったのだ。

慌てて立ち上がり、林の中を駆け抜けていく。


「もう~!! 毎回的確に隠れてるとこを当ててきてるし、どうなってんの~!」


『優秀なブレインでも付いてるのかしらね~』


 リエンが警察官達を見て、考え込むように真剣な表情をしていた。

しかし、花凛はそれどころではなかった。ただ、必死に走ってこの町から出なければと考えていた。




 その頃、パトカーの中ではスーツを着たオールバックの髪型の刑事が警察官に指示を飛ばしていた。そして、隣にいる女性に話しかける。


「美沙さん、あなたの言うとおりこの林に隠れていましたね。確かにこんな町以外で隠れるなら、こういう場所しかないですね」


 隣の女性は、なんと妹の美沙だった。居ても立ってもいられずに、自ら母の実家である、この田舎に来ていたのだ。


「でも、これくらいなら刑事さんでもわかるんじゃ……」


 美沙が聞いてきた。刑事なら、一般人にこんな事を聞くのはあり得ない事である。


「いえいえ、私はここの土地勘がないですからね」


 だったら、地元の警察官に聞けばと美沙は思った。だが、ここからの行動はもし兄だったらと考えれば、警察官では思いつかないのだろう。

無理やり自分で納得させた美沙は、刑事に兄であればこう行動するはずと告げた。


「多分、兄であれば警察官が居なくなるまでその町にいるでしょう。そして、またおばあちゃんの家に戻ってるはずです」



 辺りは再び夕焼けに染まっていく。

そのおばあちゃんの家では、車で親戚が迎えに来ており、おばあちゃんが車に乗り込んでいた。

その様子を、向かいのちょっと小さめの市役所の屋上から覗いてる花凛の姿があった。

そして、辺りをキョロキョロと見渡す。

どうやら、巡回の警察官まで自分を追うために駆り出されているのだろう。警察官の姿は今の所確認は出来なかった。


『うまくまいたわね。でも、何でまたここに戻ってるの?』


「ふっふ~ん。まさかまたここに舞い戻るなんて、思わないでしょう?」


『どうかしらね~犯人は現場に二度戻るって言うしね』


 花凛の自信満々な態度を見て、リエンが不安そうな顔をしていた。


「うるさいな~それは殺人事件でしょうが。ここは、絶好の隠れ家なんだから」


 おばあちゃんを乗せた車が発進すると、すかさず2階の窓に飛びうつり、鍵の壊れてる窓に手をかける。

カラカラと窓を開けると、そこには信じられない光景があった。


「やぁ、今晩は。良ければお茶でもどうかな?」


 2階には、何とあの刑事が後ろで手を組み、仁王立ちをしていた。

他にも両サイドに警察官もいた。


「あ、急いでるのでご遠慮します……」


 花凛は、カラカラと再び窓を閉めた。


「いやいや、待ちたまえ。話だけでも」


 そう言いながら、刑事が再び窓を開け花凛の手を掴もうと手を伸ばした。


「……っ!!」


 何とか、ギリギリ手を掴まれずに下の砂利道に飛び降りる。

しかし、周りの家の隙間から、先の路地裏からゾロゾロと警察官が出てきた。

どうやら、パトカーは別の場所に止め、見つからない様に家の周りに潜んでいたのだ。

そして、砂利道と繋がっているアスファルトの通りから、美沙も姿を現した。


 その姿に花凛は目を疑った。

何故ここに居るのか、そんなことが頭の中でぐるぐると駆け巡った。


「美沙が、刑事に俺の行動パターンを言っていたのか……」


『だから、言ったのに』


 リエンが呆れた様に、「覚悟きめたら?」というような顔をした。


『だいたい、警察から逃げるほどあなた悪いことしたの?』


「だって、鬼化したとはいえ人を殺してるし、死んだ人間が生き返ったなんて誰も信じない。絶対精神病患者として病院に放り込まれるよ」


 リエンの問いに、淡々と警察官に聞こえないようにつぶやく。


『言ったでしょう? 鬼となった人は人ではなくなるのよ』


「でも……法律ではそんなことにはなってない、鬼化しても人扱いしてるかもしれない」



 花凛達がそんなことを言ってる間に、じりじりと警察官達が詰め寄る。


「待て! 刺激するな」


 おばあちゃんの家の玄関から、刑事が出てきて警察官達をなだめた。


「やれやれ、ゆっくり話をしたいと思ってるのに。お前らが刺激するから逃げるんだろうが」


 そう言いながら、警察官達を退かしながら刑事が花凛に近づく。

しかし、その時。



「ん、なんだお前は? 今、取り込み中……ひっ!! うわあぁぁぁ!!」


 囲いの後ろに居た警察官が悲鳴を上げた。


「来るな! 来るな化け物ぉぉぉ!!」


 そう叫びながら警察官が発砲した。


「おい、どうした?! 何があった! 何を発砲している!」


 その様子に、刑事が慌てて囲いの後方に向かう。その時、妹の美沙には来ないようにと制止をしていた。


「……っ!! まさか!」


 花凛は、驚き刑事に続いて囲いの後方に向かった。


 後方では、花凛が想像していたものが飛び込んできた。

鬼化した人が警察官を襲っていたのだ。


「う、ぐぐ……憎い! けい、さつ……にくぅぅぅぅ!!」


 普通の鬼らしく、既に理性は無くなっていたが、何やら警察に対してただならぬ憎しみを持ってる様子だった。

最初に襲われた警察官は、腕からザックリと切られ大量の血を流し倒れていた。

そして近くの警察官が対応し、発砲していた。

しかし、弾丸は当たっているものの傷口は瞬時に消えていた。


「なっ!! こいつは!」


 刑事は、写真でその姿を何度も見ていたが、実物を見るのは初めてであった。


「刑事!! 何ですかこいつは! 銃が全く効かないです!」


『人間の武器なんて、利かないわよ』


 花凛は、ゆっくり手を広げ炎を出し形を作る。

手に偃月刀を出現させ、くるくると回しながらその場に近づいていく。


「これじゃないとダメなのね」


 リエンの言葉に反応するように、花凛は武器を出したのだ。周りの警察官が驚いた表情をしていたが。今はそれどころではなかった。

そして、柄の先を地面に強く打ちつけ、刃と柄の繋ぎ目にある鈴を鳴らした。

壮麗な鈴の音が辺りに鳴り響く。


 その瞬間、場が静まり返えった。鬼のうめき声だけが残る。

警察官達は、いつの間にか鬼から距離をとっていた。

そして、全員一斉に花凛に視線を向けた。


「君、何を」


 刑事が制止しようとしてくる。しかし、花凛は刑事を睨みつけきつめに言った。


「下がって」


 そのまま、鬼にゆっくり歩み寄る。


「う、ぐ……ぐおぉぉぉ!」


 理性を失った鬼が、こちらに突進し攻撃してくる。


「君! 危な……」


刑事がそう言うか言わないかの直後。

花凛は腰を落とし、鬼の攻撃を避け懐に飛び込んでいた。

そして、そのまま鬼の腹に刃を突き刺した。


「がっ! ぐぁ……」


「あなたはまだ浄化できる。でも、ごめんなさい」


 そう言いながら、花凛は手に力を入れた。すると、刃から炎が出てきて鬼の体を包んでいった。


「ありが……とう」


 どこからか聞こえてくるその言葉に、花凛は驚き顔を上げた。

燃え盛る炎の中で、鬼は苦しみから解放されたかのような安らかな顔をしていた。


「……っ!」


 花凛は、泣きそうになる顔を堪え武器を消した。

鬼はそのまま倒れ込み燃え続けていた。

周りの警察官達は絶句していたが、すぐに我に返り負傷した仲間の処置に当たっていた。

刑事は、それらを警察官達に任せ美沙と共に花凛に近づいてくる。

美沙は花凛のすぐ後ろで立ち止まり、そして声をかけてきた。


「お……にい? おにいなの?」


 その言葉に、花凛は胸が痛む。

美沙からは花凛の顔は見ないが、複雑な表情を花凛は浮かべていた。


 これ以上は逃げられない。

しかし、警察官がたくさん居る。

ここで正体を明かしても、情報規制が取れずに自分は身動きが取れなくなるだろう。

そうしてる間に鬼化した人は人々を襲う。

真鬼の奴らも止める事が出来ずに、被害を受ける人達が増えていく。

何より、自分の未熟さ故にまた怪我人を出してしまった。


 動揺、悲痛、怒り、様々な感情が花凛の頭を駆けめぐる。

いたたまれなくなった花凛は、その場から飛び上がり家屋の屋根伝いに、夕陽の沈む田舎町へと姿消した。


「待って! おにい!」


 美沙は必死に叫んでみるも、花凛には届かず静かな田舎の空にその声は響いていく。

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