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煉獄の焔  作者: yukke
第一章 現世への帰還
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第一話 突然の死

 亮の住む寂れた商店街からは、10分程の所に川が流れている。

 その川の対岸から、何やら淡く光る紅色の物体が必死に漂っていたが、弱々しくフラフラと動いている。


 そして、その光源から何かが聞こえてくる。


『はぁ、はぁ。こんな所で、力尽きるわけには……』


 どうやら、その物体は何かの生命体らしかった。しかし、かなり弱っており既に消えかけている。


『う、もう。はぁ、はぁ。げほっ! ダメ、なの?』


 謎の生命体が諦めかけたその時、前方の商店街からゆっくりと何かが上っていく。


『え、あれは……まさか、人の魂? 誰か死んだの?!』


 謎の生命体は、ひどく驚いている様だ。しかしどちらかというと、「こんな時になんてタイミング!」という喜びの方が強かった。


『一か、八か! あの人の魂を、げほっ、使わせて……貰おう』


 その生命体は、最後の力を振り絞り、その魂に向かって飛んで行く。


『はぁ、はぁ……よし、天国に行く前に間に合った』


 そして謎の生命体は、その魂の元にたどり着き、光を触れ合わせる。


『上手くいくかは、わからないけど。このまま消えるよりは。はぁ、はぁ……ごめんね、どこの誰かはわからないけど、協力して』


 そう言うと、二つの光の物体は重なり、最後の力を出し尽くすかの様にして光り始め、そして消えた。





「暑いなぁ、くそ。節電とか言って、クーラーも扇風機も付けてないが、それにしてもおかしいぞ」


 自室で寝ていた亮は、そのあまりの暑さに目が覚める。

 だがしかし、亮の目に映し出されたのはありえない光景だった。周りは地獄のような業火に包まれ、他には一切何もない大地。


 さながらそこは、地獄と呼ぶにふさわしかったが、何かが違っていた。

 そう、地獄と言うには地獄の鬼とかが居なかったし、阿鼻叫喚の悲鳴も聞こえない。ただ静かに、炎の燃え盛る音だけが耳に響く。


「ど、どこだなんだ? ここは?! あぁっ?!」


 亮は驚きの声を発したのだが、その自身の声に更に驚いた。声が女の子みたいに可愛かったのだ。


「え、な……なに? この声」


 亮は手を喉に当て、必死にいつもの野太い男性の声を出そうとした。


「あ~あ~あぁぁ~」


 しかし、どれも可愛い声しか出ない。


「なんだこれは。どこだここ?」


 さすがにどんな人でも、普通の家で普通にベッドで寝ていたのに、目が覚めたらこんな所に居て、しかも声が変ともなればパニック状態になる。そして、更に体にも違和感があった。


「嫌な予感がする。今俺の体に起こっている事に、一つだけ説明がつく事象があるけど、ありえないありえない……」


 亮はそう考えるとブンブンと頭を横に降る。

 しかし、今度は短髪のはずの亮の髪が、何故かバサバサと肩に当たり、長くなっている事に気がつく。

 さすがにこの違和感は、亮の頭の中にある絶対にありえない事を、更に強く訴えかけていた。


「そうだ。さすがにこれは、ないだろう……」


 そう言いながら胸に手を置く。

 勿論、フニュッとした感触が返って来る。そう、男性では絶対に無いはずのものがそこにはあった。


「はっはは。いやいや……これはあるだろ」


 混乱している状態で、亮は未だに信じたくないという気持ちが入り混じり、何ともいえない表情になっていた。そして、恐る恐る下半身に手をやる。

 勿論そこには、粗末ながらも男性の象徴とも言うべきものが無かった。


「あははは、痛い。夢じゃない」


 認めたくない、これは夢だと言わんばかりに、亮はほっぺを思い切りつねる。


「うそだろ。女の子になってる……」


 そう、亮の今の体は誰がどう見ても、女の子の体になっていたのだ。


 髪は、腰までの長さでツインテールになっており、黒と紅色のメッシュがかかっていた。

 顔は小顔で、目は二重で少しつり目、誰が見ても美少女であるのは間違いない。


 そして胸は、大きすぎず小さすぎず、手のひらに収まる程度であり、細い手足にすべすべの肌、それにしっかりとくびれもある。150センチあるかないか程度のその小柄な体型には、抜群のプロポーションであった。


 亮であるその少女は、驚いた表情でペタペタと体を触りまくっていた。


「嘘だ、嘘だ……嘘だろう」


 亮は女の子になってしまった事を受け止めきれず、真っ青になっており、パニック状態が続いていた。そんな中、突然どこからともなく声が聞こえてきた。


『はいは~い、そろそろ良いかな? ずっと見てるのも良いんだけど、いい加減に飽きてきちゃった』


 亮は突然の声に驚き、ビクっと体を強ばらせると、声のする方に向かって叫んだ。


「だ、誰だ!!」


『はいはい、ちょっと待って今姿を見せるから~』


 亮の声に反応するように、上から紅色の光の玉が降りてくる。


「ひっ!! な、なんだこれ!」


 当然、目の前に異形の物体があれば、誰だってそうなるであろう。そんな典型的なびっくり顔を亮は披露している。すると、その光の玉は徐々に発光を強めていく。


「……っ?!」


 あまりの眩しさに、咄嗟に目を細める亮だが、彼の頭の中はもはやパニックを通り越しており、パンク寸前である。


 そして、光の玉は徐々に形を成していく、そう人の形の様に。


『ふぅ……こんなものかな?』


 亮は、恐る恐る細めた目を開けると、何とそこには綺麗な少女が浮いていた。


 その少女は、ウェーブのかかった腰までのロングヘアーに、紅色の髪をしている。

 そして、目はつり目で少しきつめな感じが見てとれる。胸はお世辞にもあるとは言えないが、小柄な少女のその体型は、ロリコンが好みそうだった。


 しかし大きく違うのは、頭の両サイドに生えた大きな角に、背中にはドラゴンの様な厳つい羽根が生やし、お尻にはこれまたドラゴンの様な尻尾が生え、人間離れしている事である。

 そして、体には胸と下半身の大事な所にだけ、鱗で出来た薄い鎧の様なもので覆っていた。


『ちょっとちょっと~なんでアホみたいな顔してるの~? 私どこかおかしい? まだ体直ってないのかな~?』


 その姿を見て絶句している亮に、少女は声をかけながら、自分の体を再度確認し始めている。


「いや、そうじゃなくて……」


 亮はすでにパンクした頭を必死で修正し、現状を把握しようと言葉を絞り出す。


「あんた、誰? で、ここどこ? 後何で俺女になってんの?」


 とにかく今起こってる事を知りたい、そんな思いで亮は矢継ぎ早に質問をぶつける。


『ちょっとちょっと一気に質問しないで~』


 少女は困った顔をしながら右手を前に出し、亮を制止する。

 それは、亮があまりにも矢継ぎ早に質問をするものであり、落ち着いて欲しいと言う意図があった。


『緊急事態だったんだから、私もいろいろ現状把握しないといけないの。そうね、まずは自己紹介からね』


 そして、少女は右手を胸に当てると、まるで演技の中で自己紹介でもするかのような振る舞いで、自らの名前を言う。


『私は煉獄龍 リエンよ』


「え? 龍……って、ドラゴンのこと?」


 現実的では無いその正体に、亮は思わず聞き返す。


『その龍よ? それ以外何があるの?』


 その亮の言葉に、リエンはバカにしたかの様にフンッと鼻をならした。


「ご、ごめん。あっ、俺は谷本亮。男性だ」


 彼女が自己紹介したので、自分もしなくてはと思い、亮は礼儀正しく自己紹介をした。


『え? 男性? あちゃぁ……』


 すると、リエンはがっくりと項垂れ、顔に手を置きわざとらしく、「失敗した」という風な態度をとった。


「え? おい! なんだそれは? 俺が女になってんのはお前のせいか?!」


 亮は思わず問い詰める。その顔は、ようやく現状を把握出来るとあってか必死だ。


『きゃぁ~そんな怖い顔しないで~』


 だが、リエンはわざとらしく腕を前に出し、身を守るポーズを取ると、瞳をうるうるさせ始める。


「あっ、ご……ごめん」


 亮は、リエンのその態度に焦ってしまい、謝罪をする。


『まぁ、必死になるのは分かるし、しょうが無いけどね~』


「おい……」


 しかし、リエンがあっけらかんとした態度に戻した為に、亮は少しイラつきながら突っ込んでしまっていた。


『ま~ま~とりあえず現状把握が先でしょう?』


 リエンはそう言いながら、両手を前にし亮を制する。


「で? 一体なんで俺は女に?」


『そうね~とりあえず最初から説明するとね、私が現世である相手と戦っていたんだけれど、そいつにコテンパンにされて、殺されちゃったのよね~』


 重い話なのにそれをあっけらかんと話すリエンに、亮は少し戸惑ってしまう。


『まぁ、私は肉体を失っても魂さえあれば、何とか復活させる方法があるからね~』


 リエンは当たり前の様に話してくるが、亮にとってはとんでもない事である。彼の目が丸くなるのは致し方ない事だった。


『でも、私は油断してた。相手の攻撃が、魂すら砕く程の威力を持ってたの。何とか即死は免れたけど、魂までボロボロになってしまった私は、もう消えるしかなかった』


 しかしそれでも、亮はいつの間にか真剣な表情で、リエンの話を聞いていた。


『その時、私の目の前に霊界に行こうとする魂があったの。それがあなたよ』


「ちょっ?! なんだそれ? どういうことだ?!」


 亮はあまりの言葉に驚き、リエンに聞き返す。


『だから、あなたはその時に死んだのよ。原因はわからないけどね』


 リエンのその言葉に、亮は絶句した。自分は死んでいる。その言葉に。

三人称視点で書く練習してます。描写や絡みなどめちゃくちゃですがちょっとずつ練習していくので温かい目で見てください。

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