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クソ弱勇者はチートつき!  作者: 甘味好き
一章 異世界召喚
8/30

告白と《悪魔化》

う~む回の撮影での一幕。


~休憩中~


魔王「う~む……」

カイザースネーク「どうしたんですか?」

魔王「何か俺様の名前、アヒルの鳴き声みたいじゃないか?」

カイザースネーク「作者がさっき、急いで作ったらしいっすよ。川の近くで」

魔王「絶対アヒルで名前つけたよな?」

「ま……おう?」


目の前の魔族の男は俺たちがこの世界に召喚された原因となった《魔王》と名乗った。


「いかにも。さて、貴様らは何者だ?」


目の前の男は先程の大蛇に睨まれた時よりは圧力が無かった。

いや、不自然な程に無かったと言っても良い。

何せコイツはあの大蛇を一瞬で殺せる程の力を持っているのだ。

力を隠しているのかもしれない。


「答えんのか。まあ良い。俺様の《鑑定》を使えば良いことだ」


《魔王》の目が少し光り、俺と姫様を見た。


「ほほう。ウィーンの王女か。そして、コイツは……ん?…………ククク、ハハハハハ!!」


《魔王》は姫様の正体を一瞬で見破ったかと思うと、俺を見て高笑いを始めた。

《鑑定》と言うからには俺達のステータスを見抜いたのだろうが、《魔王》からしてみれば低すぎるステータスだったのだろう。

解くに俺のは。

弱冠不愉快だが。


「いやはや、コイツは傑作だ。俺様並の潜在能力を持ちながら全く使いこなせていない」

「は?」


《魔王》が言っているのはどうやら俺の事の様だが、俺に隠された能力何て無かったはずだ。

《勇者》じゃ無い姫様の方が高い位だぞ?


「ククク、なるほど。ウィーンお得意の呪いか。見たところ、そこの腰抜け王女もかかっている様だが」

「あ゛?」


コイツ、姫様の事を腰抜けだと?

確かに姫様は今は黙っているが、それはお前に最大限の注意を払っているからで、別に事を何かじゃない。


「姫様は腰抜け何かじゃありません。取り消してください」

「ほほう。俺様に口答えするか?」


《魔王》がニヤリと笑って俺に一歩踏み出す。


「その根性。いや、無鉄砲さ、気に入った。貴様、俺様の」

「うがぁぁぁぁ!」

「五月蝿い」


何故か姫様がいきなり《魔王》に飛びかかって行き、《魔王》の腕の一振りで《魔王》に触れる事もなく吹き飛ばされた。


「姫様ぁ!!」

「呪いか……」

「貴様ぁぁぁぁ!!」


今の俺の力では足元にも及ばないはずだが、夢中で《魔王》に飛びかかった。

自分では無い何かが体を動かしている様な感覚だった。


「遅い」


《魔王》は俺がたどり着く前に俺の視界から消えた。


「《闇色雲(やみいろぐも)》」


俺の後ろに回り込んだ《魔王》が何やら黒い雲の様な物で俺を縛り上げる。

瞬く間に俺は顔以外の部分をそれ(・・)で埋めつくされ、首から上しか自由の効かない状態になってしまった。


「ぐぅぅ」

「無駄無駄。貴様のステータスでは万に一つもそれは破れない」


《魔王》は俺を雲ごと自分の方に向けた。

《魔王》の後ろには壁に衝突して瓦礫に埋もれかけている姫様がいた。


「姫様!」

「恐らく生きている。今はな」


《魔王》が嫌な笑い方で笑う。

いつでも殺せると暗に言っているのだろう。


「大人しくしていろ。……さて、先程の話だ。俺様は貴様をスカウトしている」


スカウト?俺が疑問に思うのは知っていたのか、《魔王》は気にせず続ける。


「先程は貴様のいわば性格が気に入ったと言ったと思うが、正確に言えば、貴様の潜在能力が欲しい」

「俺にはそんな力は無いです。お引き取り願いましょう」

「ククク、そう言うな。恐らく、ウィーンの奴等では気付けない程に深い場所にあるのだ貴様の力は。そして、貴様のその力は俺様の実験に使える」

「実験?」

「そうだ。俺様のとあるスキルで、《悪魔化》という物がある。これがまた厄介でな。成功すれば、《悪魔》という最高の俺様の眷族になるのだが、今までの実験体では殆ど気が狂うか、体が耐えきれずに死んでいたのだ」

「尚更お断りですね」

「いやいや、諦めんよ。高い潜在能力に、高い精神力、同族で無いから失敗しても俺様の良心は痛まない。この三つが揃った素晴らしい素材を逃すものか!」


今までのやり取りで、《魔王》の目には俺を、人間を搾取するための家畜の様にしか見えていない事がわかった。

やはりコイツは倒すべき悪《魔王》本人何だろう。

今まで半信半疑だったが、今核心した。


「お断りします」

「断れば殺す。と言ってもか?」

「勿論」

「なるほど……ますます良い。……ふむ、ならば」


《魔王》は俺から離れ、後ろに向かって歩きだした。

そして後ろには瀕死の姫様がいる。


「何をするつもりだ!」

「何を?《魔王》たる俺様が人間を生かしておくとでも?」

「くっ」


どうやら《魔王》は姫様を殺すつもりらしい。

どうする?


「まぁ、取引(・・)ならしてやらん事も無いがな」


元々こう言うつもりだったらしい。

確かに姫様を助けるには《魔王》が気紛れを起こすか、俺が条件を飲むかしか無い。


「……わかった。俺で良いなら条件を飲もう」

「ククク、やはり良い素材だ。貴様が《悪魔》になったら俺様の腹心の部下にしてやらん事も無い。では──」

「─ダ……メ………ゆ……ろ」

「!!」


《魔王》の条件を飲んで、《魔王》が姫様のいる場所から離れようとした時、瀕死の姫様が《魔王》のマントの裾を掴んだ。


「邪魔だ王女よ」

「うぐっ」

「姫様!!」


姫様が蹴られてまた壁に叩きつけられた。

《魔王》は跳ね返った姫様を更に蹴り続ける。

俺は咄嗟に止めた。


「止めてください!俺なら何でもしますから!!」


考えるより先に出てきた言葉だった。

姫様を何度も蹴っていた《魔王》は、ふと足を止めると、俺を不思議そうに見た。


姫様はギリギリの所で意識がある様に加減されていて、見るからにヤバい状態だった。


闇色雲(やみいろぐも)


《魔王》は姫様を俺と同じ雲の魔法で掴むと、治癒魔法で回復させた。


「貴様にはまだ死なれては困る。コイツが言うことを聞かなくなるからな」


ククク、と嫌らしく《魔王》が笑った。


「さて、貴様に一つ聞きたい。……何故この王女をそこまで気にかける?偽善か?それとも何か脅されているのか?」


《魔王》が本当に不思議そうに言った。

自分でも理由は良くわからない。

だけど、《魔王》の後ろでこちらを見ている姫様を見て、口が動いた。


「……俺を“信頼”してくれたからだと思う」

「はぁ?」

「姫様がいなかったら俺は迷宮へ初めて行ったあの日、挫けていたかもしれない」


あの日、もっと言えば、それ以前も。

姫様がいつも隣にいた。


「たぶんだけどな、俺は姫様が居なくなったらこれから先、生きていけない。能力的にもそうだし、精神的にもだ」

「……」

「俺はずっと誰かに信用して貰いたかった。“あっちの世界”にいた頃から。姫様はな、俺がやっと信用出来た相手何だ。居なくちゃいけない“大切な人”何だ。見捨てる何て論外だ。それだけだよ」


気づいたら思ったままの事を口走っていた。


「……」


何故か痛い沈黙を感じて俺はやっと気づいた。

……これって告白じゃね?

後ろの姫様を見ると姫様は顔が真っ赤になっていた。


「ゆうじ──」

「不愉快だ!!」


しかし、そんな時間はすぐに終わった。

《魔王》が怒り、《カイザースネーク》の時以上の圧力を俺達にかけてきたからだ。


「貴様ら人間がこの様な……」


《魔王》は何かに取り憑かれた様にぶつぶつと呟いていた。

俺は《魔王》から放たれる圧力に意識が危うくなったし、姫様は涙目になり、失禁していた。


「……不愉快だ。さっさと済ます」


《魔王》は雲の魔法で姫様の口を押さえて黙らせた後、俺の拘束を解いた。

そのあとすぐに感じていた圧力は無くなったが、《魔王》は不機嫌なままだ。


「今から貴様には《配下の儀式》をしてもらう。これは《悪魔化》するのに必要な事だ。何、すぐ終わる」

「その前に一つ良いですか?」

「……良いだろう。何だ」

「もし、姫様の人質の役目が終わったら姫様は生きたまま人間の所に返して上げてくれませんか?」

「……」


《魔王》は黙っている。

人間が心底嫌いなのだろうが、それでも俺には素材として価値を見いだしている。

条件を飲むとか言っていたし、《魔王》が姫様に何もしないとも限らないが、姫様が生きて帰れるのなら俺はどうなっても良い。


「……良いだろう。その条件は飲もう」

「ありがとうございます」


言い回しは怪しいが、これで姫様は生きて帰れる。

ウィーン王国とは違う国になるかもしれないが、王族という事が分かれば何とか便宜をはかってもらえるだろう。


「全く不愉快だが、これから貴様は俺様の腹心の部下になるのだ。その位は叶えてやらんとな」


殊更嫌らしく笑う《魔王》は幾分か機嫌が治った様だった。

気が変わらない内に済ませてしまおう。


「では、何をすれば?」

「ククク、覚悟を決めた目だ。実に良い」


《魔王》は俺の頬を撫でると俺より高い目線から見下ろして、色んな宝石が散りばめられた短剣を取り出した。


「そう恐がらなくても良い。今から貴様には誓いを立ててもらうだけだ」

「……」


《魔王》が言っている事は嘘だとわかったが、今は従うより他はない。


「どちらでも良い。手を」


《魔王》の言葉に従い、右手を差し出す。

すると先程短剣で手首の辺りを浅く斬られた。


「つっっ!」

「この血を俺様の血と混ぜる」


《魔王》も手首を斬って、短剣をに染み込ませる。


「では、誓いの時間だ」


《魔王》が血を吸った短剣を地面に突き刺すと俺と《魔王》の周りに赤紫色に輝く魔方陣と呼ばれるものが浮かび上がった。


「貴様は俺様の言葉に『誓います』とだけ答えていれば良い。『汝、我が剣となる事を誓うか?』」

「『誓います』」


言われた通りに答えると、俺の足下から新しい魔方陣が浮かび上がる。


「『汝、我が命に背かぬと誓うか?』」

「『誓います』」


また魔方陣が浮かび上がる。

この問答を幾つか繰り返し、その度に魔方陣が浮かび上がった。


そして七回目の問答。


「『汝、魂までも我に委ねる事を誓うか?』」

「『誓います』」

「『儀式は成った』」


最後の台詞と共に俺の足下から浮かび上がった魔方陣達が全て俺に向かってきた。

それらは俺の体の各所に当たり、体の中に何か異物が入った感覚を俺に与えた。


「何をし!!──」


呆けていると体の中から激痛が走った。

細胞の一個一個を握り潰されている様な痛みだ。

俺は悶えた。


「ぐあああぁぁぁぁぁ!!!!」

「クハハハハハハハハハハハハハハ!!」


俺は崩れ落ち、地面を転げ回った。

それでも痛みは変わらない。

いや、更に酷くなっていく。


「んー!!んん゛ー」


姫様のくぐもった声を尻目に俺は段々意識を手放していく。


「気分が良いから教えてやろう。《悪魔化》とは対象の体内に《悪魔》の魔力を注入し、対象の魂や、体の全てを食らって《悪魔》にさせる。いわば“転生”なのだ!……さて、貴様が《悪魔》になったとしてもあと四日はかかるしな。……長居する理由も無い。ここら一帯は俺様が“結界”で魔物が来ない様にしておいてやろう。貴様が生き残って、また会えるのを楽しみにしておく」


《魔王》が去っていく音と、姫様のくぐもった声、自分の口から出ている悲鳴が洞窟の中に反響していた。



本日三話目です。

トラブルがあって、この話を間違えて消してしまった時は焦りました。

急いで書き直しましたが、その分文がいつも以上に拙いです。

いつか改定します。

どの部分がおかしいのかアドバイスくれたら嬉しいです。

誤字脱字の指摘、感想などあったら受け付けております。

次は8時に更新します。

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