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クソ弱勇者はチートつき!  作者: 甘味好き
一章 異世界召喚
6/30

狂った《勇者》

前回の撮影での一幕。


磯貝「おっ、《クソ弱勇者》の空閑君じゃないか」

雄次郎「……何か語呂悪くね?」

作者「確かに……別にタイトルに合わせなくても良っか」

磯貝「……じゃ、テイク2」


磯貝「おっ、《ダメダメ勇者》の……」

雄次郎「長い」

作者「テイク3やろうか」

磯貝「……」


磯貝の後日談『この後、テイク72までやって何とか今の形に収まりました』


「おっ、《ダメ勇者》の空閑君じゃないか」


正直、呆れたね。

自分の運の悪さと磯貝の小物加減に。

だって、俺が訓練場に行くタイミングにちょうど迷宮から帰って来たんだぜ。

迷宮は最初の時以外は普通、国から支給される金で迷宮近くの街の宿とかに泊まる筈だ。

一々移動していたら効率が下がるからだ。

たまに奴もいるが帰って来る奴もいるが、殆どの奴は呼び出されない限り帰って来ず、レベリングをしている。

訓練をしたり、王宮で魔法を習うよりも迷宮でレベリングしている方がずっと強くなるからだ。

迷宮の方にもこちら程大規模では無いが、魔法について教えてくれる教官がいる。


なら何故迷宮組の磯貝がここにいるのか。

恐らくだが、レベルが上がり過ぎてこれ以上上げる作業に嫌気が差して、魔法に乗り換えに来たのだろう。

ちなみに《ダメ勇者》とは一ヶ月前の迷宮へ行った後、磯貝が勝手につけたアダ名だ。


……しかし、強くなったとは言え、小物感は拭えないな。


「どうも」

「いやぁ~、一ヶ月ぶり?仲間に見捨てられて迷宮に来なかったから、てっきり諦めて引きこもってるかと思ったのに元気じゃん?どうよ調子は?」


コイツが仲間と言ったのは成人達の事だ。

初めて迷宮へ行った後、、成人達は迷宮でレベリングをすると言っていたが、俺にはあまり意味が無さそうなので、一緒に行こうという誘いを断り、王宮に残った。

命の危険を犯す迷宮と、王宮(ここ)で死ぬ危険性のない訓練を受けるのとで同じ成長率なら普通は後者を選ぶだろう。

なら俺達も残るとか言い出し始めたので、三時間かけてやっと説得した。

成人の足を引っ張りたくは無いし、俺に合わせてくれる様な良い奴らには早く強くなって欲しい。

その方が命の危険が無いだろうからな。


レベルアップによって更に強くなれた《勇者》の磯貝には、俺がアイツらに見捨てられた様に写っているらしい。

別に磯貝の見方なんてどうでも良いけどな。


話を続けるのも億劫なので横からすり抜けようとする。


「おいおい、ちょっと待てよ。俺さぁ、王宮に残った《勇者》の実力も見てみたいんだよなぁ。だからさぁ」


俺の肩を掴みニヤニヤしだす磯貝。

はっきり言ってキショイ。


「お断りします。今から訓練ですから」


きっぱり断って磯貝から逃げる。


「逃げるのかぁ~。流石《ダメ勇者》だな!ハハハハハハ!」


ヤバいどうしよう。

磯貝が完全に小物に見えてきた。

強さは小物じゃない筈なのに。


━━━


「災難だったわね」

「本当ですよ」


現在、魔法の訓練と夕方の姫様訓練を終えた俺は姫様と一緒に夕食を取っている。

メニューはカボチャのスープに、魔物の肉のステーキ(ミノタウロス見たいな魔物。俺からしたら少し強い)、みずみずしい野菜を使ったサラダ、そしてフワッフワなパン。

日本人な俺だが、米よりパン派だ。

このメニューは素晴らしい。

異世界で文明はあまり発達してないため料理も……何て思っていた自分が恥ずかしい。

この味なら銀座で店をだしても大繁盛するぞと言いたくなる旨さだった。

どうやら現代に追い付かない科学の部分を魔法に頼っているらしい。

ヘタしたら現代よりも凄い素材(魔物の肉とか)があるからこっちの方が良いのかもしれない。


「ご馳走さまでした。美味しかったぁ」

「ご馳走さまでした。美味しかったですね」


姫様と食事を終え、風呂には既に入っているので後は寝るだけ……という所で磯貝(小物)登場。


「空閑、お前、そこの女と一緒に訓練をしているらしいな」


何故そこに突っかかるのかもう見えた気がした。

コイツ確か、第三王女に手を出そうとして近づいたら婚約者がいるからと遠回しに拒否られたんだったな。

第一王女も婚約者がいるからと断られてたし、姫様が政略結婚を嫌がって、まだ婚約者が居ないという事をそこら辺の使用人にでも聞いたんだろう。


「ちょっと俺と代わってくんね?俺最近動きに問題があってさー」

「行くぞ」


そう言って姫様が立ち上がった。

口調も訓練の時と同じになっている。

少し怒っているのか、表情も厳しげだ。


「ちょっと待てよ」


磯貝が何かを言っているが無視をした。

が、ステータスにモノを言わせて回り込まれた。


「釣れないねぇ。そこの《ダメ勇者》何かより俺と楽しい事しない?訓練も楽しくするからさぁ」


ギャハハハと、笑いだす磯貝とその取り巻き達。

あまりのバカさ加減に頭が痛くなってきた。


「貴様何かより彼の方がずっと見所がある」

「おい、聞いたか?俺より《ダメ勇者》の方が良いってよ」


また笑いだす磯貝、正直もう付き合ってられない。

姫様も同じ意見なのか、横をすり抜けて行こうとした。

が、磯貝が俺の肩を掴んだ。


「無視すんなよ。聞いたぜ、どっかのビッチの子でここでも居場所がねぇんだろ?俺が可愛がってやるよ。さっきの言葉も俺の女になれば許してやるよ。どうせお前も母親見てぇにビッチ何だろ?」

「っ!!」

「ゲホォ!!」


気づいたら体が勝手に動いていた。

姫様を侮辱したコイツに心底ムカついて姫様にならった鳩尾蹴りで、黙らせただけだ。

ステータスに差がある俺が磯貝に一発入れられるのは不意討ち位なので、全力でやった。

ただ、それで磯貝はノックアウトした。

ステータス差があろうとも、急所への一撃はダメージがあったか。


「おい、磯貝!」

「てめぇ、調子に乗るなよ!」

「《ゴミ勇者》の分際で!」


アダ名が増えたな。

と、場違いに考えていたら磯貝の取り巻きが飛び掛かってきた。

伊達に迷宮に潜っていた様では無く、動きが洗練されていた。


いくら訓練を積もうと、圧倒的なステータス差は覆せない。

そんなのは姫様との訓練で見に染みていた。


このままではやられると覚悟していると、真横から球体の熱湯が取り巻き達に襲いかかった。


「あっつ!」

「んだこれ!」

「うわっ、離れろ!この!」


取り巻きを重点的に狙う熱湯の球体。

俺は誰がそれをやったのか直ぐに理解した。

訓練で何度も見ているからな。


「ひめさ──」

「早急にそこのバカを拾って立ち去れ」

「「「ひいっ!」」」


止めようと声を掛けようとしたが直ぐに黙る事になった。

姫様が殺気を放っていたからだ。


ステータス差が俺ほどでは無いにしろ、ある筈の姫様が殺気だけで取り巻き達をおののかせていた。

場数の違いなのか、その殺気は近くにいるだけの俺でも足がすくむ程だった。


「王族に手を出してここにいられると思うなよ?今回は勘弁してやる。……ゆけ!」

「「はいっ!」」

「あ、待てって!」


遅れた一人が磯貝を抱えて逃げ出した。

お前達の気持ち、少しだけわかるぞ。

今の姫様はヤバかった。


「……」

「……帰ろう」


姫様が何も無かったかの様に魔法の熱湯を消してから言った。


「姫様」

「何?」

「……ありがとう」

「っ!」


内心、姫様を怖がっていると思う。

だけど、今のは確実に俺を助ける為にやってくれた事だ。

それを俺が怖がって礼も言えないのは、人としてどうかと思った。


姫様の驚いた様子を見たとき、「ああ、いつもの姫様だ」と思ったら恐怖何て消えた。


「……さ、行きますよ」


何と無く気恥ずかしくなって、姫様を待たずに広間を出ていった。

広間には俺達の他に誰も居なかったので、姫様だけポツンと取り残された。


「……やっと敬語じゃなくなったわね」


━━━


翌朝。

俺はいつも通りに訓練を受け、魔法を学び、夕方の訓練を受けていた。


「それにしても、昨日から磯貝にアクションがありませんね」

「そうだなぁ~」

「……」


何故か姫様は今日、機嫌が良い。

正確には昨日の夜からだと本人は言っている。


今は訓練の合間の休憩中。

話題は昨日から見かけない磯貝達についてだ。


「何だか今朝から誰かに見られてる様な気がしないでも無いような感じがするんですが、気のせいでしょうかね?」

「奇遇だな。私も朝の訓練の前まで同じ様な感じがしていた。今は……あるな」


……どうやら誰かに監視されているらしい。


「……もしかして」

「まぁ、そうは言ってもここは王宮だ。国を仕切る場所でもあり、色んな欲望が渦巻く場所でもあるのだ。一概にはそうとは言えんよ」


俺は殆ど磯貝だと思っていたが、姫様は半信半疑の様だ。


「……じゃ、警戒しておくに越したことは無いですし、カマかけて見ます?」

「そうするか」


見られてる気配がする所へ向けて、大きく息を吸い込む。


「そこにいる奴っ!!!出てこいっ!!!!」


俺が叫ぼうとしたら姫様が先にやってしまった。

そういえばこの人、初めて会った時も同じ様に叫んでいたな。

ただ、やるなら先に言って欲しかった。

耳鳴りがヤバい。

俺が睨んでいると、姫様が手を合わせてゴメンね♪のポーズをした。


「……うるせぇ奴」


予想通り、建物の影から人が出てきた。

相手は勿論、


「磯貝君か……」

「……」


磯貝はフル装備だった。

恐らく迷宮と、迷宮の近くにある街で手に入れたであろう装備で、所々魔法で強化されていた。


装備は魔法で、強化、及び、弱体化されると、その目を凝らさないと見えない程の属性の色を放つ。

磯貝の装備は火、水、風属性の光を放っていた。


「何のつもりだ?」


姫様が俺を庇う様に前に進み出た。

ここは俺と姫様以外は誰も来ない筈の訓練場だ。

近くには磯貝が様のある様な場所は無いから俺達をつけていたのは磯貝で間違いない。


……他に誰も居なければの話だが。


「……何。ちょっと、そこの世間知らずに教育(・・)をな」


そう言って腰に差していた両手剣を抜く磯貝。

その剣は火属性の強化が施されており、ヘタをせずとも、まともに当たったら死ぬ筈だ。


「……教育にはその剣は過激過ぎないか?」

「大丈夫だよ。寸止めするから」


見れば磯貝の目には凶器の色が漂っていた。

恐らく、迷宮で強くなって調子に乗っていた所を()に見ていた俺にやられたからだろう。

となると、磯貝は何をするかわからない。

本気で俺を殺しに来るかもしれない。


「此処でやりあって、怪我でもしたら問題になるぞ?」

「大丈夫だって。寸止めするし、何なら……ほら」

「っ転移石!!」

「転移石?」


磯貝が取り出した、拳大の青色に輝く石を見て姫様がおののいた。

いや、転移石とは何だ?

いや、名前で何と無くわかるけどさ。


「転移石とは迷宮の奥深くで手に入る入手困難な魔法石の事だ。使用した相手を相手の意思と関係無しに無作為に飛ばす。ある意味最大魔法よりも強力だ。使い捨てだが」


最大魔法よりも強力なのは相手の意思と関係無しに無作為に飛ばす事だろう。

いきなり魔物の巣に飛ばされる可能性もあるわけだしな。

恐らく、磯貝は俺達を死体にした後(・・・・・・)、転移させるつもりの様だ。

死体は転移出来ないという縛りは無い筈だ。


「そういう事だぜ。偶然迷宮35層で見つけてなぁ。回収も大変で、ここまで持ってくるのに魔力で覆うのが大変だったんだぜ」


見れば転移石の回りは何か半透明な物で覆われていた。

直に触れれば転移させられるという事なのだろう。

いや、それよりも魔力をあんなに精密にコントロールするって、姫様から聞いたけど、そんなの長年修行を積んだ仙人クラスしか使えないって言ってたぞ!

勇者補正どんだけだよ!


「さて、逃げられても面倒なんでな……さっさとくたばれ」

「下がって!」

「逃がすかボケェ!」

「「っ!!」」


飛び込んできた磯貝に反応出来ずに固まっていたら遅れて反応した姫様が俺を庇って吹き飛ばされた。

俺も吹き飛ばされた姫様に巻き込まれて一緒に吹き飛んだ。

気づいたら訓練場の柵をつき破って王宮の建物の壁に二人してめり込んでいた。


「あれれ~?二人とも弱すぎんじゃないかぁ?迷宮のシャープベアーよりも弱いぞ?」


吹き飛んだ俺達にゆっくりと近づきながら磯貝が近づいて来る。

しかし恐らく、全身骨折で意識を失った姫様は勿論、耐久が低い俺は攻撃の余波と、壁にぶつかった衝撃だけで骨が折れまくり、ヘタに動けなかった。


「う~ん、もう殺しちゃおっかな♪」


完全に頭のネジが外れた磯貝が戦闘体勢を解いて考えるそぶりをする。


俺は自分に言い聞かせて死なない手段を考えた。

命乞い?ダメだ。

今のコイツには何を言っても効かなそうだ。

普通の思考が出来なくなっている。

恐らく、迷宮で生き物を殺し過ぎた性か、装備しているモノのどれかが呪われでもしていたのだろう。

なら、逃げる?どうやって?ステータス差よりも体の怪我で動けないのだぞ?怪我を一時的に治す方法はあるが、姫様も抱えて逃げるとなるとそれは無理。

となれば、俺を差し出して姫様だけ助けて貰う?今のコイツは俺を痛め付けたいだけだ。

その目的だけなら姫様は見逃してくれるかもしれないが、俺が死んだ場合、口封じに殺される可能性が高い。

そうならなくても、姫様が磯貝のオモチャになってしまう。

それは俺が嫌だった。


考えろ考えろ!何か手がある筈だ!俺も姫様も助かり、今後の手出しを避けられる方法が!


磯貝が後数メートルという所に来て、やっと閃いた。

しかし、この方法は……いや、他に無いのだ。

やるしかあるまい。


磯貝が目の前で立ち止まった。もう時間は無い。


これだけは嫌だったんだが、二人とも死ぬよりはマシだ。

幸い、磯貝は油断仕切って俺に近づいて来ている。


「姫様、スイマセン」


意識の無い姫様に一言謝って、手を繋ぐ。

これを逃したら後は死ぬしか無いのだから。


「《根性》発動!」


訓練(・・)の時だけ、体力が大幅に上がる《根性》、それは体力回復=怪我の回復という事も知っていての事だ。

そして、ここはいつもの訓練場の延長だと考えれば、自己暗示で《根性》は発動する。

恐らく、こんなに無理矢理発動させたら後で身体への負担がヤバそうだが。

そして一瞬で怪我を回復させると、磯貝に飛び付く。


「ぬっ!」


しかし、流石に二回目の不意打ちは効かない様で、体を強張らせたが、ダメージは期待出来なくなってしまった。

そもそも、体の回復も万全じゃない。


しかし、それでいい。

狙いはダメージを与える事じゃない。

狙いは無防備に晒された転移石(・・・)だ!


今なら磯貝は油断してさほど警戒はしてないし、直ぐに奪いとれるだろう。

危険な場所に転移するリスクがあるが、命には変えられない。

気絶している姫様は、ここに残して置いたら証拠隠滅の為に殺される可能性があるから一緒に連れて行こうと思う。

手を繋いでいるから恐らく一緒に転移出来るだろう。

定員一名ならアウトだが。


そして、手が…………届いた!


「なっ!!」


転移石を奪い取られた磯貝は一瞬唖然としてから、次の瞬間俺の意図に気づき、攻撃体勢に移った。

が、もう遅い。


磯貝が攻撃体勢に入る前に俺の体は姫様と一緒に魔力に包まれ消えていた。


「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

お楽しみ頂けましたか?

昨日に引き続き更新します。

今日も五話更新します。

後、四話です。

誤字脱字、感想など受け付けております。

待ってま~す。

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