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クソ弱勇者はチートつき!  作者: 甘味好き
一章 異世界召喚
19/30

迷宮最終層の主

今回は「感情移入がしづらい」とのご指摘があったので、「前回の撮影での一幕」はお休みです。

リクエストがあれば、他の所で復活するかもです。


「ここだな」

「ここね」


俺達は迷宮最後の階段の前にいる。

299層から最後の300層に繋がる階段だ。

階段に繋がる通路には誰が作ったのかは知らないが、色んな宝石を散りばめた三メートルはあるだろう扉があった。


今まで三十層毎に中ボス見たいなヤツはいたが、その時の扉もこんなに豪華じゃ無かった。

最後だから気合いが入っているのだろうか。

……だから誰の?


「これ、持って帰れないかしら」


何てシルヴィアが割りと本気な顔で言っていたし、やっぱり売ったら凄い額になるんだろう。


「外せ無いから無理だな」

「残念」


本気で残念そうな顔をしていたので、罪悪感がわいたが、仕方無い事なので我慢してもらう。


今はそれよりも、ボス戦だ。


「良いかシルヴィア。俺が相手をするからシルヴィアは《眷族化》した状態で後ろで待っているんだぞ。絶対戦闘に参加したり、相手を挑発したらダメだからな!」

「わかったわよ。雄次郎しつこい」


何を言っているんだ。

可愛いシルヴィアに怪我をさせない為には俺が嫌われようとも……いや、嫌われちゃ嫌だから、ギリギリで注意しているんじゃ無いか。

心外な。

例えシルヴィアが色仕掛けをしてこようとも俺は譲らないぞ。

三日三晩くどくど危険性を説明して最悪でもシルヴィアが戦闘参加だけはしない誓約書を書かせる。


こういうのが束縛に繋がっちゃうのかな。

……今度から自重しよう。


「今回だけはダメだからな。俺がまだ力を使いこなせていないからシルヴィアを守りながらでは……」

「わかったから。雄次郎最近過保護過ぎ」


仕方無く、シルヴィアには後ろで見てて貰う事になり、俺が出来るだけ早くボスを片付ける事になった。


「あ、出口」


階段の出口がすぐそこまできていた見たいで、最終層の床が見えていた。


「無理しないで」


シルヴィアがウルウルした目で見上げてくる。

それは反則だと思うが、無理をするまでも無いはずだ。


「じゃ、行ってくる」


━━━


「グオオオオオオオオーーーッ!!」

「……」


最終層のボスはドラゴンと言えば良いのか、見た目そんな魔物がいた。

最終層は通路や、壁など無く、一つの大きな部屋になっていた。

ここまでは普通のボス戦用の層と変わり無い。


「いや、でも」


コイツら(・・・・)を見たらやっぱり思ってしまう事がある。


「多すぎんだろぉ!!!」


体長十メートル近いドラゴン達が直径10キロもある最終層の中に恐らく100体いた。

しかもそれぞれがSSランクの実力を持っているだろう。

そんなのが、いる上に部屋の中央には三十メートルに届く位のドラゴンがいた。

恐らく、コイツらを纏めているのが、奴だろう。


「流石はSランク迷宮の最終層。鬼畜な条件だな」

「感心している場合じゃ無いでしょ!出口も閉まっちゃったし、コイツら倒すしか無いのよ!」


そうなのだ。

階段の出口は俺達が通った瞬間壁が崩れて階段ごと塞がれた。

逃げ道は無し。

あるとすればボスの撃破。


「やるっきゃ無いな《悪魔化(ルシファー)》!!」


今回は流石に本気でやった方が良さそうなので最初から《悪魔化》を使う。

《悪魔化》は《天使化》の時よりは破壊系のスキルと魔法が増えて、性格も攻撃的になる。


容姿は言わずもがなで厨二。

髪と光彩は黒のままだが、背中から羽が生えてくるのは同じ。

犬歯と爪も長くなり、耳も尖る。

何故か服は黒で統一していたのに、所々赤い紋様が出てきていて、それが服のデザイン見たいになっている。


ま、そんな事(厨二な外見)は今はどうでも良いわけで、


「《眷族化》!」


シルヴィアにも自分を守ってもらわなきゃいけなくなってきた。


「シルヴィア、自分を守る事に集中しろ。俺が狩る」

「不本意だけど了解」


シルヴィアの良い返事も貰えた所で相手も我慢の限界がきた様だ。


「オオォォォォォーーッ!!」

「ウオオォォォッ!!」


俺は目の前のドラゴンの大群の先頭集団に突っ込む。

ステータスに差はある物の、ちゃんと相手も俺に反応出来ている。


「だが甘い!」


《身体強化》を使って更にステータスに補正をかけて加速する。

流石にこれには反応出来なかった様で懐に入られても気づかない。


「まず一匹!」


首を下から脚力だけで蹴り上げる。

それだけでドラゴンの首と胴体は離れる。


今回は狩っても焼かない。

食料にするつもりが無いからだ。


すぐさま隣のドラゴンの首を手刀で叩き落とす。


「二匹目!」


同じ様に他のドラゴンの首を狩る作業を続けていく。


「三!四!五!六!七!八!オラオラどんどん来いっ!!」


近距離では勝ち目が無いと悟ったのか、口から火や、水を放ってくるドラゴンが出てきた。

中には攻撃力を内包した風や、光を放ってくるタイプもいた。


「全員能力が違うのかよ!厄介過ぎんだろ!!」


それらの攻撃を拳の拳圧で吹き飛ばしたり、結界を一時的に張って防ぐ。


「お返しだ!《イラプション》!!」


爆炎魔法で、最高クラスの威力を持つ隕石を打ち出す魔法でブレスを放ってくるドラゴン共を吹き飛ばす。


思ったより威力が出ていた様で二十体近く倒した様だ。


「もいっちょ!《イラプション》!!」


反対側にいたドラゴンも吹き飛ばす。

今回は防御魔法を使ったのか、はたまたブレスで相殺したのか、十体も殺せ無かった。


「ま、良い……ってうおっ!」


三十体以上すぐに倒せた事で油断していたら上からドラゴンが降ってきた。

いや、ドラゴンは飛べるんだからこの巨大な部屋なら上からでも来るわな。


しかも遠距離からも危険だと悟ったのか、降ってきたドラゴン達は全員《身体強化》の様な事をしており、先程の様に筋力ごり押しで倒せるタイプでは無かった。


「全員さっきの奴らより上だな。ステージ2って事か。上等!」


素手でドラゴンの爪を受けとめ、空いた胸元に手をかざす。


「《ラーヴァ・アイシクル》」


溶岩を纏った氷柱でドラゴンの胸を貫く。

一見矛盾している様なこの魔法は近距離では絶大な威力を誇る。


しかし、一匹倒した所で近くにまだ五体程いる。


「一気に決める。《テンペスト》!!」


大嵐属性の名前そのままの魔法は半径十メートルの対象を全て魔力を含んだ鎌鼬によってみじん切りにされる。

鎌鼬の威力は魔力量に左右されるので俺が使えばドラゴンだろうと、みじん切りだ。


「オオォォォォオオ……」


予想通り、周りのドラゴン達は断末魔と共に切り刻まれた。


周りに敵が居なくなったので残りのドラゴン達の方をゆっくりと振り返る。


心なしか、ドラゴン達が冷や汗をかいている様に見えるが、鱗が邪魔をして良く見えない。


「さ、続きをしよう」


そんなドラゴン達に、俺はいかにも悪魔な笑いをした。


━━━


「後はお前だけだぞ」


二時間後、他のドラゴン達を狩りつくした俺はいかにもリーダーのドラゴンと対峙していた。

流石に連戦で疲れているが、まだ大丈夫だろう。


リーダーのドラゴンは仲間が全て狩り尽くされてお怒りの様だ。


「グルルオォォォォ」

「俺に《威圧》は効かねぇよ」


ドラゴンはスキル《威圧》の様なものを使ってきた様だが、俺には《威圧無効》というスキルがあったので、それは無意味だ。


ドラゴンは俺が《威圧》で動けないと勘違いしているのか、真っ黒なブレスを放ってくる。

明らかに闇属性のブレスだ。

最後のドラゴンは闇属性または、それの派生だった様だ。


「《悪魔化》している俺に闇属性ブレスとかチャンチャラおかしいぜ」


俺は《悪魔化》状態の時は闇属性またはその派生属性の魔法は全て吸収して自分の魔力を回復する。

だからわざと食らって俺の魔力に変える。


「雄次郎っ!!」


後ろから俺を心配する声が聞こえる。


そういえばシルヴィアの存在を忘れていたが、ドラゴン達は俺に夢中でシルヴィアの方に行かなかった様なので結果オーライか。


「大丈夫だ!」


下手に心配をかけて全線に出られても困るので声をかけておく。


その間にもドラゴンのブレスは勢いをまして行くが、俺にダメージは無い。

唯一弊害があるとすれば目の前が真っ暗で何も見えない事か。


ドラゴンはブレスが俺にダメージを与えていない事にプライドを傷つけられたのか、一向にブレスが弱まる気配がない。

いや、更に強くなっている。

このドラゴンは恐らくSSSランクの魔物だろうが、これ以上ブレスを続けたら魔力切れで気絶するんじゃ無いだろうか。


「あ、消えた」


俺の危惧を他所に目の前を覆っていたブレスは途切れ、魔力を一割程回復した俺が出てきた。

予想通り、ドラゴンは魔力切れ寸前でフラフラだ。


「残念だったな。俺にお前の魔法は効かない」


一応種明かしをしておく。

何が何だかわからないまま死ぬのは嫌だろうしな。

ドラゴンに言葉がわかるかは俺の知ったこっちゃ無いが。


「オオォォォォォ」


ドラゴンはほうほうの体ながらも爪で襲いかかってくる。

最後の足掻きの様なものだろう。

しかし、


「終わりだよ」


俺はドラゴンの顔の目の前に《転移》して、《ブラックボール》でその命を絶った。


━━━


「終わった~」


ボス部屋を見回し、シルヴィア以外に生物の影が無かったので、《悪魔化》を解く。


「雄次郎っ!!」


シルヴィアが駆け寄ってくる。

今回、彼女は何もすることが無かったな。


「シルヴィア」

「雄次郎、大丈夫?怪我してない?凄いブレス食らってたけど」

「ああ、アレは大丈夫だったよ。それまでが大変だったかな。何せ100体以上いたからね」

「本当よ。私に少しは頼って欲しかったのに、雄次郎ったら一人で全部片付けちゃうんだもん」


拗ねた様にほっぺを、膨らませて避難してくるシルヴィアが可愛くて思わず抱き寄せる。


「あ……」

「ゴメンね」

「わ、わかってくれれば良いけど……心配なのよ」


耳まで赤くなって照れているが、本心なのだろう。

俺を更にぎゅっと抱き締めてくれた。


「あ」


俺の目の前であのリーダーのドラゴンの死体が魔力の粒になって砕け散る。

あのドラゴンの肉美味しいのかな。

何て思っていると、散らばっていくはずの魔力が一つに纏まり始め、一つの形を成して行く。


それは一振りの剣になった。

刀身は色が無く、硝子の様でありながら確かな輝きを持っていて、持ち手は黒と白の鮮やかなコントラストを生み出していた。

鞘は無いが、地上でいくらでも手に入るだろう。


この迷宮のクリアの証であり、あのドラゴン達のドロップアイテムでもあり、この世界に一つしか無い名剣だ。


「綺麗……」


シルヴィアが月並みながらもそうとしか言えない剣の存在を表していた。

アレに触ればこの迷宮は消え、俺達は地上に戻るだろう。


俺はゆっくりと剣に近づいて行く。

シルヴィアも隣についてきてくれる。


「終わったな。長い一ヶ月が」

「色々あったけど、私は楽しかったわ」

「迷宮が楽しいか。シルヴィアは変な人だな」

「雄次郎はつまらなかったの?」

「いいや。……大満足さ」

「ならよし」


俺達は示し合わせる事も無く、二人同時に剣に手をかける。


瞬間、初めて転移石を使って転移した時と同じ様な感覚が走り、目の前が真っ暗になる。


──俺達が異世界に来てから二ヶ月と十九日。


ボス戦に使った時間二時間三十八分四十九秒。


迷宮レムリア攻略(クリア)者二名。

空閑 雄次郎、シルヴィア・エド・ウィーン。


お楽しみ頂けましたか?

取り敢えず、ここで一章は終了です。

二章はご指摘があった点の改善や、書き貯めをしてからの更新になります。

なるべく早く更新出来る様にしますので、応援よろしくお願いします。


あと、今更なのですが、日刊ランキング11位になりました。

惜しいと言うべきなのか、素直に喜ぶべきなのか悩みそうな順位ですが、まずは応援して下さった皆様に感謝を。

「クソ弱勇者はチートつき!」を応援してくれた皆様、本当にありがとうございました。

何か最終回見たいですが、二章に続きます。


二章を更新する前に活動報告で、告知しますので、皆様それまでお待ちください。


これからも誤字脱字、感想、質問など受け付けております。

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