プロローグ
読んで頂きありがとうございます。
ファンタジー初挑戦です。
生温かい目で見て下さい。
(改稿しました。)
「はぁ~……」
俺は木陰で盛大な溜め息をついた。
「あの頃が懐かしいなぁ」
そう、あの頃、勇者召喚が成された直後の一週間、あの頃はまだ俺は自分に自信を持てた。
強くなれると思っていた。
「それが一週間でこのザマとはな」
はは、と自嘲的な乾いた笑いで現実逃避をしてみた。
そりゃ、俺じゃなくても誰だってこうなるだろう。
一番期待されてた勇者がまさか強くなれないなんて……。
「勇者じゃないクラスメイトの方が勇者っぽいなんてなぁ」
俺は、俺がこんな風に黄昏ている理由を思い出した。
━━━
その日は至って普通に学校に通っていた。
俺はあまり学校が好きでは無いが、別に虐められていた訳じゃないし、それなりに皆に好かれていた。
まぁ、俺の事が気にくわない奴等もいるにはいたがね。
まぁ、いつも通り通ってたんだよ。
昼休みが終わり、次の授業五分前の予令で皆が席に着き始め、新しく一緒に高校二年生になったクラスメイト達全員が揃った時にそれは起こった。
「は?」
「え?」
「ナニコレ?」
「キタコレ!」
自分の足下から青白い光の魔法陣(?)の様な物が表れたのだ。
クラスの大半は突然の現象を理解出来ずにパニックになった。
数人の理解出来た奴等は喜んでいた様だが……。
俺はパニックになった側の人間で思考が停止した状態でつっ立っていた。
「何なん──」
「え!?」
一人の生徒の足元で青白い光が一際眩しくなったと思うと次の瞬間にはその生徒は跡形も無く消えていた。
「ひ、人が消え──」
「うわぁぁぁ──」
「ま、まただ!!」
クラスメイトのうち、一人が消えてパニックになりかけた奴が一人、また一人と消えていった。
そこからは阿鼻叫喚だった。
クラスメイトが一人消える度に上がる甲高い悲鳴。
しかし、十秒もしないうちに悲鳴を上げる様な奴も消え、残った奴は十人を切っていた。
「な、何が──」
そして俺も消えた。
━━━
「う、う~ん……」
「あ、起きた?」
「……あ、真紀さん、……これは一体?」
俺が目覚めた時、目の前には先程までいた教室では無く、どこかの神殿の様な光景が広がっていた。
イメージ的にはギリシャのなんとか神殿が一番近いと思う。
「さあ?私もさっき起きたばっかだから」
「そうですか。……他の皆もいますね」
他にもクラスメイトがいるようで、皆、目が覚めている様だが、何故かパニックにはなっていない様だ。
ちなみに、俺が起きた時に近くで心配してくれたのはクラスメイトの加川真紀。
それなりに親しい間柄ではあるし、友達の一人だが、俺はいつも敬語で話してる。
別に真紀に限った話では無い。
俺は基本的に人と話すときは敬語で話す。
最後に敬語以外で話したのは恐らく三年位前だ。
理由は、過去に色々あったとだけ言っておく。
「おお……」
「やりましたわ!」
それなりに広い部屋の中央からややずれた位置から声が聞こえ、俺を含め、目が覚めたほとんどのクラスメイトがそっちを見た。
そこにはローブを来た奴等が十数人と、何やら無駄にキラキラした豪華な服を着た十四歳位の美少女がいた。
そしてその美少女が大声で言った。
「勇者の皆さま!気分はいかがですか?」
そのセリフは、俺の今まで読んできた小説の内の一つに出てきたモノと酷似していた。
そして悟った。
あ、これテンプレ勇者だわ。
と……。
━━━
「…………という訳なのです」
……どういう訳なのです?
白地に所々金のフリルがついた豪華な服を来た美少女、第三王女カミュール・エド・ウィーン(13)は目覚めたクラスメイト全員を状況を説明すると言って最初の部屋から連れ出し、大広間の様な部屋に連れてきた。
クラスメイト達は当然困惑したが、クラスの纏め役や、俺と同じように状況を察している奴等が取り敢えずは話を聞いてみようとクラスメイト達を説得したので、一応は召喚されたクラスメイト全員、
この大広間にいるらしい。
ちなみに、クラスメイト以外の人間も数人いたらしいが、彼等は偶然昼休みに俺達の教室にいただけで巻き込まれた人達だ。
同様に、正式なクラスメイトの中でも数人はここにいない。
どうやら、あの青白い光に包まれたのは俺達のクラスだけらしい。
……と、読んだことのある小説の展開から予想した。
気分の悪いという事で今ここに居ない人物もいるらしいが、彼、または彼女一人だけであり、クラスメイトでは無いらしいのでその人には後で説明するらしい。
そして、俺達はそれなりの不安を抱えて案内された広間に通された。
そこは先程の部屋の様な厳かな雰囲気は無く、大きさはバスケットコート一面程の大きさで、キラキラした調度品が所狭しと並んでいる……いわば、豪華さをかき集めた部屋になっていた。
建物の作りはどこかの国の王宮の様だったが、第三王女とやらに聞いてみると、本物の王宮だと言われた。
しばらく待つと何やらザ・王様と言う感じのおじさん、まぁ、王様とお着きの騎士見たいな人達が入ってきた。
ご丁寧に、無駄にキラキラしている王冠がフサフサな顎髭よりも薄い頭部に乗っていた。
「おお!貴殿らがカミュ達が呼び出した勇者達か!」
「「「「「は?」」」」」
クラスメイト全員(少数の例外は除く)の声が一つになった瞬間だった。
「お父様、説明がまだですので」
「おお!そうか。では──」
言葉とは裏腹にどこかウキウキした様子で第三王女が俺達に説明を始めた。
要約するとこう言う事らしい。
この世界は人間や魔族、亜人達が住んでいるらしい。
この国、ウィーン王国はいくつかある大陸の一つの半分を支配する人間の国で超大国らしい。
隣の大陸には魔族という種族が住んでおり、昔、人間に迫害された事を恨んでいて、魔王という奴が人間に宣戦布告したらしい。
まさにテンプレ魔王だわ。
魔族は人間よりも身体能力が高く、魔力も大量にあるらしい。
余談だが、この世界には魔法があり、全ての人種には多かれ少なかれ魔力存在し、それらを使って魔法発動させる。
魔王というのはこの魔力と魔法が魔族の中でも桁違いの奴が魔族の国を支配した時に呼ばれる称号らしい。
で、このままだと人間の敗戦確実だと悟った国王様は他の人間の国とも連携をとり、異世界からの勇者召喚を行ったと。
異世界からの勇者召喚は召喚した勇者に莫大な力が与えられ、鍛えれば魔族や魔王にも匹敵する戦力になるから召喚しました。
という事らしい。
…………本当にどういう訳なのです?
勝手に召喚、いや拉致され、鍛えて魔王と戦えだと?そんなの飲む訳ねぇじゃん。
回りのクラスメイトも唖然としていた。
「貴方達には力があり、私達の希望なのでございます。どうか、どうかご助力ください」
何て美女に懇願されて鼻の下を伸ばしたのは数人の男子だけだった。
なぜなら、
「その前に、ここが異世界だっていう証拠あんの?」
クラスメイトのリーダー的存在の波瀬成人が当然の疑問点をついた。
俺とかなり親しい間柄だと自覚してるのだが、最近は、お互い忙しくて喋っていない。
「えと、証拠ですか。……そういえば、勇者様方の世界には魔法など存在しなかったのですか?」
「お、おう」
魔法という存在はとっくに存在を否定された世界で住んできた俺達は魔法など存在しないと思っていた。
あくまで空想上のモノであり、それを俺達の年齢で未だに信じている奴はオカルトマニアか、……痛い奴程度だろう。
しかし、
「火の精霊よ、我に仇成す者への罰を、我に火の軌跡を!《ファイア・ボール》!」
ボウッ!という音と共に第三王女の目の前にバランスボール三個分の大きさの火球が表れた。
俺を含めたここにいる者達の常識が僅か十秒で砕けた瞬間だった。
「まぁ、こんなモノでしょうか」
軽く手を振り、それだけで火球を消した第三王女が俺達にニッコリと微笑んだ。
「あ……ああ」
「ああ、他にも証拠がありますね。皆さん、自分の手をかざし、《ステータス》と念じてください」
言われるがまま、皆が手をかざし、念じると目の前に青白く光る薄い板の様な物が表れた。
「これはそのままですが、ステータス板と呼ばれるモノで全ての人種が使えるモノです。それによって自分の種族、年齢、名前、そして強さがわかります。
上に表示されているモノから説明していきますと、まずレベルはその人物の成長度合いで、魔物と呼ばれる生物を殺す事で上がります。レベルが上がると必然的に他の数値も上がります。年齢やスキルなど特殊な所は除きますが。
体力は生命力と言っても差し支えありません。0になればほぼ確実に死にます。物理的にダメージを受けても、毒などの攻撃を受けてもこの数値は減ります。最大値はレベルアップなどでしか変わらないのでダメージを受けても、回復薬を飲むか、ヒールなどの回復魔法で治して貰うか、身体を休めると最大で最大値までなら、戻ります。
筋力と敏捷はそのままの意味で、力と素早さになります。これらは妨害を受けない限りほぼ数値は不変ですね。
魔力はまだあまり研究が進んでいないので良くわかりませんが、自分の中に存在する一種の力、とでも言えばいいのでしょうか。私達はこれを使って魔法を使います。詳しい説明は省くとして、取り敢えずは魔法を使うのに魔力はあってなくてはならないものと認識してください。魔力は魔法を使う度に減っていきますが、体力と同じ様な方法で魔力も回復します。
耐久と魔耐とは体の頑丈さを表し、耐久は魔法以外への頑丈さ、魔耐は魔法に対しての頑丈さです。これらは攻撃を受ける旅に少しずつ減っていきます。しかし、これらは時間経過で元の数値に戻りますので、体力や魔力ほど減っても困りません。今話した事は触り程度の事なので、詳しい説明はまた後日にしましょうか」
俺は説明を聞いてから空中に出てきた青白い板を見た。
クラスメイト達も一応は納得した、というより魔法という技術と自分の目の前に出現した意味のわからないステータス板とやらに驚き過ぎて他に何も考えられない様だ。
※※※
空閑 雄次郎 男 16歳
レベル1
体力:100/100
筋力:100/100
敏捷:100/100
魔力:100/100
耐性:100/100
魔耐:100/100
属性:無
《スキル》 言語理解
《称号》 勇者 召喚者
※※※
こんなのが載っていた。
いや、テンプレ過ぎて言葉がでなかったね。
何?体力:100って?ポ○モンですか?
スキルの言語理解っていうのも異世界召喚された人間のテンプレじゃん。
ここに書いてある言語、異世界だよね?たぶん。
読めてんじゃん。
流石言語理解。
更に称号(笑)勇者(爆)。テンプレ何個目だよ。
で、他の皆はというと、
「雄次郎君、どういう事?」
「さあ?わかりかねます。
所で、真紀さんのステータス板を見せてくれませんか?」
「ええ。どうぞ」
そう言って覗き込んだ真紀のステータスは
※※※
加川 真紀 女 16歳
レベル1
体力:70/70
筋力:40/40
敏捷:50/50
魔力:70/70
耐性:40/40
魔耐:50/50
属性:水
《スキル》 言語理解
《称号》召喚者
※※※
となっていた。
……何か違くね?
全体的に俺の方が上だし、称号のトコも勇者が無いし。
「え…………勇者って……何か凄いのかな?」
「……そうなの、かな?」
何かこれってもしかすると…………。
「雄次郎」
そう言って俺の方に歩いて来るのは140㎝位の美少女で、幼稚園の頃から近所に住んでいる幼馴染みで、花宮聖だ。
一重に幼馴染みと言っても、別に付き合ってるとか、聖が俺を好きとかそう言うのは無い(はずだ)。
確か、小さい頃はよく遊んだが、俺が中学の時、色々あって遠くに引っ越して、また同じ家に帰って来たときには結構ドライな反応をされたし、俺も少し変わっていたので、普通の友人位の関係に収まった。
「聖さんか。何ですか?」
「……」
身長差のせいで軽く聖を見下ろしながら聞いた。
幼馴染みと言えども俺は敬語で話す。
昔はもっと砕けた喋り方だったが、引っ越してから変えた。
「ステータス見せて」
「どうぞ。ああ、聖さんのも見せてくれませんか?」
そう言うと聖は無言で、空中に浮かんでいるステータス板を俺に見える様に移動してきた。
どうでも良いことだが、体が密着しそうになったので、俺は少し身体を引いた。
※※※
花宮 聖 女 17歳
レベル1
体力:90/90
筋力:50/50
敏捷:90/90
魔力:100/100
耐性:50/50
魔耐:10/10
属性:風
《スキル》 言語理解
《称号》召喚者
※※※
……これはこれですげぇな。
総合的に見れば真紀より高いが、防御が……特に魔耐ってやつが……。
これは捨て身の特攻とか、するタイプのやつかな?
《言語理解》は全員にあるから、召喚者には共通の能力なのか。
ま、そりゃそうか、言葉話せなかったら元も子も無いもんな。
ただ、気になるのは真紀と同じで称号に《勇者》が無い。
「勇者?」
「僕もわからないんですよ」
このステータス板についての話でクラスメイト皆が盛り上がっていると一人の男子が、
「なぁ!これってすげぇのか!?」
「どれですか?」
近くにいた騎士はそう言ってその男子のステータス板を見た。
しかし、眉間に皺を寄せると一言、
「それなりですね。しかし、レベル1でこれなら期待大ですよ」
ちなみにその男子のステータスは全部均一に60で、近くにいたクラスメイトの中では一番だったらしい。
「一般人よりは高いですし、鍛えた私達騎士と同じ位ですからね」
あまりの力にクラスメイト達が固まっていると、何を勘違いしたのか、少し慌てて気味に王女は声を上げた。
「大丈夫です皆さま!例え今は弱くとも鍛錬で何倍も強くなれます!」
どうやら俺達がもっと凄い力を期待していたんだと勘違いしたらしい。
たぶん、この王女様は少し頭が可愛そうな人なんだろう。
ちなみに、この王女様の言葉が実現したのはたった一週間後だった。
テンプレ展開ですが、ちょくちょくオリジナリティを加えていきたいです。
今日はあと二話更新します。
良ければ続きも読んで下さい。