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2.

その時のテンションで文字数が変わります。

はい。

 水が気持ちいい。

 師匠の弟子になり二回目の夏である。

 体重も二年と半年も動けば完全に落ちるはずなのだが……

 これ、邪魔だ。

 そう言って触れるのは自身の胸。

 何だか成長してきていて邪魔である。

 ‘俺'と言う一人印象は間違っていないはずである。

 前世で男に標準装備されているアレがないが俺の今世は男のはずである。

 たとえ成長期で胸が発達しようと、俺は男のはずである。

 喉仏が出来ないのはきっと声を出していないからで、ようやく直ってきた口から流れる声は自分でも落ち着くレベルの良い声だとしても俺は男のはずである。

 腰もくびれ、尻も丸みを帯びてきているが、俺は男のはずである。

 だって、使用人が‘アルカディナ家長男たるモノ~'‘弟様は次男ですね'と口々に言い、服装も弟と同じ男性用であった。

 そして俺はこの世界では性別の表記が逆なんだなきっと、と思い込んでしまっていた。

 今思えば違和感バリバリだけど。

 きっと前世の記憶があっても脳が幼かったからそう思い込んでしまったのであろう。

 完全に痩せた顔が女にしか見えなくても俺は男であると言い続けよう。

 たとえ、完全に性別が男だと言っている師匠にも堂々としたアレがあったとしても、俺は男だと言い続けよう。

 森の中の泉から出て時空魔法‘ボックス'を使う。

 今、師匠と住んでいる森から出て日単位で歩かないといけない距離の町で買ったサラシの様なもので胸を固く締め付ける。

 昔は慣れるまで苦しかったが、今はだいぶ慣れ通常時並みには動けるようになった。

 ごく普通のこの世界の子供が着るような男物の服を着て最後にフードつきのローブをかぶる。

 ちなみにこの服は師匠が適当に勝ってきてくれた服である。

 最近髪が長いと思ってきた今背中の半分までの長さになってきた。

 乾かすのは魔法で一発だし、フードの中で縛っているので邪魔にならないので放置している。

 先ほどまで浸かっていた泉を覗くとフードの中、片目が青く光っている。

 これはハイルノークに継承され続けてきた‘眼'適性がない瞬間死ぬらしいが。継承は、ほんの一瞬でその後激痛に襲われたが何とか生きていられた。

 一応、この光は魔力漏れが起きているだけなので眼帯を付ければ収まる。

 丁度半年ほど前に師匠が引退し、その時に継承した。

 曰く。年だそうだ。

 見た目は40代の男なのだが、実際の年齢は89。とんでもない爺である。

 ……今思えば地獄の日々であった。

 一番最初に行わされたのは自身の周囲を見渡す力を付けさせられた。

 その中で行われたのが森の中で刃物一本で最深部までたどり着くこと。

 そこで魔物に会うたびに殺されかけ、一回本気で死にそうになった。今は魔法で回復しているが腕を一本持ってかれた。

 あの時の痛みはしばらく忘れることはないだろう。

 あ、そろそろ飯を作らないと怒られる。

 急いで家へ向かった。

 前世でおなじみの二階建て程度のありふれたサイズの家。

 だが、その中には尋常じゃない数の魔法陣などで拡張されており、実に混沌とした建物となっている。

 家に入る際に発動する防御トラップでナイフ、氷弓などを避けつつも食堂へ向かう。

 やはりこのトラップも死にかけているもののひとつである。

 氷弓が体を貫通したこともあった。

 幸い臓器を避けていたので九死に一生を得た。

 この2年半で調理スキルが一気に上がったと思う。

 この世界にスキルと言うのは明確に記されている物ではないので数値にして表すことはできないのだがな。

 キッチンに立ち、転移魔法の乱用で食材庫から材料を取り出し調理する。

 ここからは魔法は火と水の魔法オンリーである。

 変な魔法を使うと失敗すると学習済みだ。

 こんなもんでいいかな。

 調理を終えると隣の部屋に運び込む。

 一度に大量の物を運ぶのは大変なので自身のもっとも得意な風魔法で運ぶ。

 風を利用して運ぶだけ……と思いきや案外魔力コントロールが難しい。

 これは魔法と言うより魔術で、皿の裏に描いた魔法陣に的確な量の魔力を注ぐだけ、と言う最終結論になったがそれまでに何枚皿を無駄にしたか分からない。

『入ります』

「おう」

 俺が料理を並べ、席に着くといつもどうり料理を食べ始めるはずが……

「あー、お前確か今年で15だったよな」

『確かに俺はあとひと月くらいで15になるが?』

「学校行け」

 ………突然の脈略のない一言だった。

 けれど、俺はこれに一つ反論できることができる。

『俺はスキップで卒業している』

 俺はあのデブ時代にすでに飛び級で卒業しているはずだ。

「だがそれはクルルシファー・アルカディナ・バルフェとしてだろ?お前世間一般ではすでに死んでいる扱いなんだぜ?」

 もうすでに90の爺とは思えない荒っぽい口調で言いやがる。

 本人いわく、これは絶対に変わらない仕様なんだそうだ。

『学校通わなくったって、俺は裏で生きる様なものなんだし……』

「残念だが、俺がすでに学園長宛に手紙を送っちまったんだ‘俺の孫を入学させろ’って」

 ……………あえて突っ込まないぞ俺は。

 何故に命令口調とか、学園長と何か関わりがあるのかとか、孫って何やねんとか。

「ちなみに孫って言うのは、そっちの方が通しやすいからだ。ネーム合わせるの楽だし」

 あーうん、師匠の癖に筋が通ってる。

 人でなしの鬼畜で一切容赦のない師匠が割とまともなことを言っている。

「お前は‘シファ・ハイルノーツ’と名乗っとけ」

 あ、ネーミングセンスが割とまともだった。

「それとさっきからお前俺をバカにしてんだろ」

『いや、まったくもってしていない』

「なんで棒読みなんだ?」

 ……イメージって棒読みとかわかるモノなのか?

「まぁいい、お前服のサイズいくつだ?」

『知らん、師匠のお下がり着てるから、そう言うサイズ気にしたことがない』

「んじゃ、ちょっとはかっておけ」

『あー。分かった』

 本当に服のサイズなんて気にしたことがなかったな……

 最初の頃は適当に渡されるサイズを着れたし、昔の服を今でも割と普通に着れるから考えたこともなかった。

 ローブを取り、上着を脱いでサイズを見る。

 サイズを測る。

 風の魔法で布測りと言う道具で測っていく。

 紙に書き出し、師匠に渡そうとするが、師匠は完全に固まっていた。

 片手にアルコールの入ったグラスを持ったまま。

『師匠ー?』

「お、おま」

『おま?』

 おま?

 新種の魔法か?文字的には御倍おま何か周りの人の力を上げてくれそうな文字だな。

「お前、女だったのか……?」

『いや、男だけど』

 ノンタイムで即答する。

 いや、俺は男だ。

「その体系は何だ!完全にあのデブボディーから想像できない体つきじゃねえか!」

『あんたが痩せろって言ったんだろうが!』

 即座に反論。

 俺は何も間違っていないはずである。

「それは、アレだ動きが鈍いからであってだな………。って、その念話紛いの男っぽい声は何だ!」

『喉がいかれてて普通の声だとちょっと高いから男の威厳を保つようにだな……』

「道理で、声が一度も変わらないわけだ」

 師匠は完全にため息を着きながら疲れて言う。

「お前、もう実は喋れるんだろ」

『喋れないことはないが、喋る気はない』

 いや、絶対俺に似合わないだろあんな声。

 顔と声がマッチしてないってやつだな。 

 ナルシスト発言だが自分の声はそれなりにいいものだと思っている。

 だけど、顔が……な?

 普通と言うかなんというか。

「話せ、その見た目で男の声は違和感しかない。そして服を着ろ恥じらいを持て」

 あれ、なんか師匠がお母んに見えてきた。

 服を着ながら反論をしておく。

『で、でもな、男なのにこの声は……』

「……いや、お前女だから」

『え、でも屋敷の皆は長男とかいつも言ってたぞ俺のこと』

「その三大貴族は男子しか継げないからだろうが」

 …マジですか?

『ん、じゃぁたとえ、所謂成長期で胸が大きくなってきたのも、一向に声が低くならないのとか、男のアレが標準装備されてないのは俺が女だっていうのか!?』

 いや、はい。うすうす感づいてたんですよ。

 いくら、そう育てられたからって男女の名称の違いなんてある訳がないって。

「完全に女じゃねえか、それ。男の【自主規制】が無い時点で気づけ」

「うぅ…」

 何だろう、何か涙たまってきた。

 現実逃避続けてきたのにこうも確信を突かれると泣けてくる。

「お、おい、泣くんじゃねえよ」

「だってぇ」

 うん、将来男といちゃつくとか考えたくないし、絶対にない。

 独身決定。

 裏で生きて裏で死ぬ。

 これすべて解決やったね。

 最近月一でアレな日来るけど、気にしたら負けだ。

「……あれ、おかしいな、こいつが可愛く見えてきた」

「目が腐ってるんですよ、俺と継承した時の俺の目が腐ってたんですよきっと」

 俺が可愛いとか絶対にありえないと言っておこう。

「ちょっと待て、こいつ料理、洗濯、掃除、完璧だし文句を言いながらもしっかりとしてて……アレ、こいつどこに嫁に出しても恥ずかしくない…だと!?」

「……師匠が勝手に俺に家事投げ出したんだろうが」

 おかげで家事スキルはどんどん増えて言ったよホント。

 まずい物作ると師匠平気で不味いって言うから、ギャフンと言わせたくて改良をしてったり、部屋の廊下に蜘蛛の巣があったり、埃がかぶってるのが許せなくて健康に悪いから掃除しただけで……

「あー、うん。お前やっぱ学校行けよ」

「女物の制服とか死んでも着るきない!」

 やはり即答。

 あんなヒラヒラとした動きずらそうな服着てられるか!

 この部屋から逃げるためにさっさと食べ終わった料理の皿を重ね、脂っこい皿は上に来るようにして洗いやすさを考えながら纏め、食いかけの者はそれはそれで一つの皿にまとめてしまう。

 その後やや速足で退室する。



「お前、絶対女だろ、本当」



 そんなことを師匠がつぶやいたことは俺はまだ知らない。 

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