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1.

文字数が……

「さっさと起きろ豚」

 腹部を強く蹴り上げられる。

「ぐはっ!?」

 その勢いで嘔吐をしてしまう。

「ようやく目覚めたか、豚」

 あたりを見回すとどこか大きな家のようだ。……部屋がデカいのでそう判断しただけだが。

 返事をしようにも完全に喉が逝ってるので声が出せない。

「あぁ、豚だから満足に声も出せねえのか」

 取りあえず言ってることは何一つ間違っていないので首を縦に振っておく。

 それでようやく俺に声をかけてきた男の顔を見る。

 フードをかぶっているがなんとなく悪人顔をしている男だ。

「はっ、お前は家畜同然と言うことか」

 確かに魔術を発するための喉がダメになっている俺は家畜同然だろう。

 肉体も見事な豚ボディーだし。

「おもしれえ家畜も居たもんだ。まぁ、良い奴隷を見つけたと思えばいいか」

 そう言って俺を無理やり立たせる。

「よし、とりあえず着いて来い、扱き使ってやる。後これかぶっとけ」

 投げられたフードをかぶり、それからしばらく歩かされたと思えば着いたのは調理場。

「飯作れ」

 は?

「俺は非常に腹が減っているんだ。材料ぐらい用意してやるんだ感謝しろよ?」

 何だこの暴君。

 見た目と相まって完全に悪人ですよこの人。

 取りあえず拒否権はなさそうなのでこの謎の男が指さした地下保存であろう食材庫に入る。

 あ、無駄に入り口のドアに時空魔法かかってやがる。

 『時空魔法』つまり時間と空間を支配する魔法だ。

 かなりの魔力量が必要なはずである。

 ……つまりあの悪人面はとんでもない奴なのだろうか?

 そう考えればこの屋敷がデカいことにも納得がいく。

 とはいえ、料理を作るのは本当に久しぶりである。

 小さい頃、日本食が恋しくなったので勝手に作ったのが最後だっただろうか。

 それ間ではろくに料理なんてやってなかったから料理長を脅して色々と教えてもらったのも懐かしい。

 何故かこの世界の言葉ではない文字で『しょうゆ』『みそ』と書かれたそれっぽいものがあったから使おう。

 …何なんだこの屋敷。

 怖いな。

 ……二回ほど失敗し、時間的には1時間後、魚の刺身や肉じゃが、カレーなど混沌とした食事を作ってみた。

 いざ運ぼうと思ったが、どこに運べばいいのやら。

 そんなジャストタイミングで強面の男が来た。

「なげーよ……って、出来たんじゃねえか」

 どこに運べばいいのか分からない、なんてやはり喉がいかれているので言えなさそうだ。

「あー、そういやアレだ。ここの右隣の部屋に今度からもってこい」

 分かったと言わんばかりに首を縦に振っておく。

 その後、飯になった。




「お前、名前くらい書けんだろ」

 そう言って紙とインクを渡された。

 ……ちなみにこの世界でも割と紙は普及しているらしい。

 渡された紙に自身の名前、クルルシファー・アルカディナ・バルフェと記入。

 それを見た強面は、

「ぶっ、お前嘘をつくならもうちょいマシな嘘を書けよ」

 うっさい強面。

 これが自室なんだから仕方がないだろ。

「こいつが風を操る魔法師の家系の次期後継者ねぇ。無いな」

 そこまで言われたら黙ってられない。

 しゃべれないので黙っているしかないが。

 魔法は大得意だが、魔術はあんまり得意ではない。

 まぁ、並みの人よりは使えるが。

 男に渡されたインクに魔力を流しつつ、空中に魔法陣を書く。

 魔法と魔術の違いと言えば魔法は精霊を通じて現象を起こすもので、魔術は自身の魔力を式を通し変換させて現象を起こすもの。

 精霊との関わりがあまりもてない者などが使うものである。

 ちょっとしたオリジナル魔術。

 既にある念話魔法式を少しいじった言わば‘亜種魔術’。

 念話は互いの意識を交わらせ行う魔術であるが、これは強制的に相手に一方的にイメージを送りつける魔術である。

『俺は、本物なんだが』

「へー、面白いもん使えるじゃねえか」

 普段よりは低めの声をイメージしながら送る。

 男は顔を少しにやけながら(余計怖くなっている)俺に近づいてくる。

『まぁ、この術式通さないと意思疎通も難しいから即興で作った。俺からのイメージの一方通行だけどな』

「これが即興か、本当にあのアルカディナか」

『ちょっと俺が異常すぎるだけなんだ。弟は……優秀だな』

「とすると、俺は面倒なもん拾ったらしいな」

『どういうことだ?』

「どうこもこうもあるか」

 ―――お前はすでに、死んでるって町のうわさだぜ。

 男はそう続けた。

『……あのババアか』

「当主は信じられないなんて言ってるそうだがな」

 すぐに話は脳内でつながった。

 ふとあのババアに見せられた紙を懐から取り出し見直す。

 何が隣国の王だよ。

 よく似てるけど完全にパチもんじゃねえか。

 俺も馬鹿やっちまったようだ。

「お前の身元が分かったところで公的には死亡扱いされてるんだ、どうすんだ?」

『どうしようもねえよ。適当に不慣れな魔術使って生きていくしかないだろ』

「あのレベルで不慣れねぇ、おもしれえじゃねえか。お前、奴隷から弟子に昇格な」

 は、弟子?

「お前に拒否権はない。ちょうどいい後釜が見つかったお前には俺の‘ハイルノーク’継いでもらうぜ」

 いきなり急展開すぎる!?





 ハイルノーク、この世界で知っているものは少ないが、知っている人がきけば卒倒するレベルのヤバさを誇る名前である。

 一言でいえば‘強者’

 変幻自在に数多の武器を使いこなし、魔術や魔法も宮内魔法士を軽々と倒す強気ハンター。

 ドラゴンや魔王を打ち取ったと言う話を聞いたことは少なくない。

 フリーのハンターであり国家裏武力序列で1位を誇る。

 裏、というのは言わずも汚れたこともする仕事も含めたものである。

 つまり、俺はそのハイルノークを継げと言う命令が下されてしまったのである。

 

 数日後。

 謎の男、いや今は師匠と言うのが正しいのであろう、その師匠に絶賛しごきを受けている。

「おら、そのふざけた体重を落としやがれ」

 御年13歳の餓鬼に言うセリフではないと思うのは俺だけだろうが。

 息を切らせながら師匠にひたすら打ち込まれる魔法を避けていく。念話を亜種は自分で作った木のリングに書いて使用している。

「一分間の休憩な」

『んじゃそりゃ!死ぬ!』

「一遍死ぬくらい動けってことだ」

 

 ―――やはり鬼畜である。




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