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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な夜の車窓から
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第一章 不思議な夜の車窓から③

電車が止まったのは、地上40メートル以上の高架駅。


そこにいたのは――

巨大になった妹たちだった。


■登場人物


青星テツロウ:23歳。三姉妹と暮らす主人公。

青星エミ:17歳。双子の姉。落ち着いた性格。

青星ミニ:17歳。双子の妹。元気で甘えん坊。

■第三話


高架橋を進んでいた電車は――


ゆっくりと速度を落とし、

やがて停車した。


 


1面1線の簡素な高架ホーム。


 


ただ、その高さは――


 


40メートル以上はあろうか。


 


支柱だけで支えられたその高架は、

地上からぽつんと浮かぶように存在していた。


 


地上ははるか下で、

田園風景が広がっている。


 


テツロウの乗った電車は、

そのホームへ滑り込む。


 


静かに、自然に。


 


まるで最初からそうなると決まっていたかのように。


 


テツロウは、運転席を見る。


 


――やはり誰もいない。


 


それでも電車は、何事もなかったかのように停車している。


 


テツロウ

「なんなんだよ……これ……」


 


思わず呟いた、そのとき。


 


「お兄ちゃん、着いたよ~。降りて~」


 


上から声。


 


見上げると――


 


巨大なミニが、ホームを覗き込んでいた。


 


そのまま、手を伸ばし――


 


電車の車体を、軽く揺らす。


 


ゴトンッ……

挿絵(By みてみん)

 


テツロウ

「うわっ!?」


 


思わず立ち上がる。


 


テツロウ

「ミニ~! あぶないじゃないか!!」


 


叫ぶと、


 


ミニは――


 


「てへっ」


 


と、舌を出して笑った。


 


その勢いのまま、外へ出る。


 


ホームに降り立つ。


 


すぐ目の前にある、巨大な存在。


 


巨大な顔が、すぐそこにある。


 


そして――


 


すこし見上げると横に、


 


ミニの巨大な“おへそ”がチラリと見える異常。


 


自分と同じ高さにあるはずの空間に、

“人体の一部”が存在している。


 


その距離の近さが、

現実感をさらに歪ませていた。


 


ミニは、テツロウの視線に気づく。


 


無邪気に微笑みながら――


 


ミニ

「お兄ちゃん、ミニのおへそ見たいの?」


 


そして、Tシャツをぱたぱたと揺らす。

挿絵(By みてみん)

 


その瞬間。


 


ドンッ――


 


風圧。


 


テツロウはよろける。


 


テツロウ

「うわっ……!」


 


ミニ

「やっぱり、お兄ちゃんはかわいいな~」


 


そう言って、再び巨大な指を近づけてくる。


 


そのとき。


 


「お待たせー」


 


別の声が、夜の空から降りてきた。


 


振り向く。


 


そこにいたのは――


 


青星エミ。


 


巨大な身体。


 


そしてその両手には――


 


電車の車両が、二両。


 


まるでおもちゃのように、軽々と持たれていた。

挿絵(By みてみん)

 


テツロウは、息を呑む。


 


テツロウ

「……なんだよ、それ……」


 


エミの指先は、

車両の側面をそっと支えている。


 


まるで壊れ物を扱うように。


 


だが――


 


その手にあるのは、

本来ならクレーンでしか動かせないはずの鉄の塊だった。


 


エミは、ホームを覗き込みながら微笑む。


 


エミ

「兄さん、ちょっと待っててね」


 


その声は落ち着いていて、

この異常な状況すら当たり前のように感じさせる。


 


エミ

「ミニも手伝ってね」


 


ミニ

「は~い、お姉ちゃん!」


 


元気よく手を上げる。


 


その直後。


 


ミニ

「これ、古い電車でしょ? もう使わないからいいよね」


 


何気ない一言とともに――


 


テツロウが乗ってきた電車へ手を伸ばした。


 


そして。


 


軽く、押す。


 


ゴロッ――


 


まるで玩具のように。


 


電車はホームを離れ、

さっき登ってきた高架の方へと転がり出す。


 


テツロウ

「ちょ、待て――!」


 


制止する間もなく。


 


電車はそのまま、

下り勾配へと滑り落ちていく。


 


加速。


 


そして――


 


『ガシャーン!!』


 


激しい音とともに、

車体が横倒しになった。


 


沈黙。


 


テツロウは、ただ呆然と見下ろす。


 


――壊れた。


 


今まで乗っていた電車が。


 


あまりにも、あっけなく。


 


これは、夢だ。


 


そう思おうとする。


 


だが――


 


風の感触も、

音も、

足元の硬さも、


 


すべてが“現実”だった。


 


テツロウ

「……戻れないのか……?」


 


呟きが、夜に溶ける。


 


それでも、この世界では――

それが普通であるかのように思えてくる。


 


だが。


 


エミもミニも、

そんなことは気にする様子もない。


 


エミは手に持っていた車両のひとつを、

ミニへと渡す。


 


ミニ

「わっ、重……くないね!」


 


嬉しそうに笑う。


 


そのとき。


 


エミのスカートが、ふわりと揺れた。


 


高所を吹き抜ける夜風が、

布を持ち上げるように通り抜けていく。


 


白い裾がなびき、

その下にある太ももが見え隠れする。


 


一瞬だけ現れて、

すぐに隠れる。


 


だが――


 


その一瞬ですら、

あまりにも大きすぎた。


 


テツロウ

「……っ」


 


思わず視線を逸らす。


 


近すぎる。


 


その仕草に気づいたのか、


 


エミの視線が、ふと下へ落ちる。


 


ホームの上の、小さなテツロウ。


 


照れて目をそらす、その姿。


 


エミの瞳が、やわらかく細まる。


 


エミ

「……かわいい」


 


その胸の奥に、

触れてみたいという想いが、静かに芽生える。


 


ミニも、しゃがみ込む。


 


ミニ

「ほんと、お姉ちゃん。お兄ちゃん、かわいすぎるよね」


 


指先が、わずかに震える。


 


触れたい。


 


確かめたい。


 


この小さな存在が、本当に“お兄ちゃん”なのか。


 


その衝動は、

子どもの好奇心に似ていて――


 


そして、少しだけ危険だった。


 


ミニ

「……だめだよね」


 


小さく呟き、手を止める。


 


名残惜しそうに、指を引いた。


 


エミは、その様子を見ながら微笑む。


 


エミ

「あとでね」


 


その言葉には、


 


優しさと――


 


ほんの少しだけ、

同じ衝動を押さえ込んでいる響きがあった。


 


二人は視線を戻し、

作業を続ける。


 


やがて。


 


二人は協力して、

先ほどミニが電車をどかした、

あの線路へと車両を設置する。


 


エミが軽く押す。


 


カチン。


 


二両の車両が、自然に連結された。


 


それは――


 


上部までガラスに覆われた、

パノラマ電車だった。


 


エミ

「兄さん、この電車に乗って」


 


少し間を置いて。


 


「姉さんが待ってるの」


 


テツロウ

「……姉さん……?」


 


青星リオ。


 


その名が、頭に浮かぶ。


 


――まさか。


 


疑問は消えないまま。


 


テツロウは電車へと足を向ける。


 


乗り込む。


 


車内は静かで、現実感が薄い。


 


ふと、見上げる。


 


パノラマの窓越しに――


 


巨大な双子。


 


エミとミニが、微笑んでいる。

挿絵(By みてみん)

 


その奥。


 


夜空の向こうに――


 


一瞬だけ。


 


“さらに大きな影”が揺れた気がした。


 


テツロウ

「……今の……」


 


エミは、ただ静かに微笑む。


 


エミ

「もうすぐ会えるよ」


 


電車は、ゆっくりと動き出した。


 


新しい線路の上を。


 


未知の先へ――


壊れていく日常と、変わらない想い。


その先で待つのは――

もう一人の巨大な妹。


――第四話へ続く。

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