第一章 不思議な夜の車窓から②
本作をお読みいただき、ありがとうございます。
第二話では、主人公・テツロウの前に――
さらに“非日常”が姿を現します。
本話から登場する人物も含め、簡単にご紹介します。
■青星テツロウ
23歳。発明系の零細企業で働く青年。
両親亡き後、三姉妹と暮らしている。
現在、不可思議な現象に巻き込まれている。
NEW■青星ミニ
17歳。テツロウの双子の妹の一人。
明るく無邪気で甘えん坊な性格。
■青星エミ
17歳。ミニの双子の姉。
穏やかで優しい性格。
兄を見守る気持ちが強い。
■第一章 第二話
電車はトンネル内を走行している
「さっきのエミは何だったんだ…」
テツロウは一瞬思い出すと
電車は――
再びトンネルを抜けた。
その先にいたのは。
線路をまたぐように、
両手と両膝を地面についた――
巨大な少女。
エミの双子の妹の
青星ミニだった。
無邪気な笑顔で、
こちらを見下ろしている。
ミニ
「お兄ちゃん、やっと来た~!
さあ、どうぞ!!」
Tシャツに短パン姿。
その体は巨大でありながら、
仕草はいつものままだった。
線路は――
ミニの両手と両膝の間を通り、
まるで“トンネル”のように続いている。
テツロウ
「ミニまで……。
って、これ……巨大なミニのトンネルだな……」
巨大なのに、ミニ。
自分で言っておきながら、
テツロウは思わず戸惑い、心の中でツッコむ。
ミニはワクワクした様子で、
その場に構えている。
テツロウ
「って、これ……通るのか……?」
電車は減速することなく、
そのまま――
巨大なミニの“トンネル”へ
と入っていった・・・
月明かりが、ゆっくりと遮られていく。
巨大な影が、
電車とテツロウを包む。
そこには――
頭上に巨大なミニの体が
腹部から胸元にかけてが、
夜空を覆うように広がっている。
ガタン――
ゴトン――
規則的だった音が、
どこか鈍く、重く響く。
頭上すぐそこに、
巨大な存在がある。
圧迫感。
窓の外。
すぐ横には――
ミニの巨大な腕。
わずかに動くだけで、
風が巻き起こる。
「うわっ……!」
車体が小さく揺れた。
その瞬間。
ふわり、と影が揺れる。
ミニが、少しだけ体勢を変えたのだ。
その“わずかな動き”が――
巨大な空間全体を、
揺らす。
テツロウは息を呑む。
上を見る。
ほんの数メートル上。
そこに、ミニの巨大な顔があった。
逆さに近い角度で、
こちらを覗き込んでいる。
ミニ
「えへへ……どう?」
その声は、
頭の上から直接降ってくるようだった。
距離が、近すぎる。
「近いって……!」
思わず小さく呟く。
電車は――
そのまま、ゆっくりと進む。
巨大な少女の下を、
くぐり抜けていく。
その時間は、ほんの数秒のはずなのに。
やけに長く感じられた。
そして――
ふっと、光が戻る。
電車は、ミニの“巨大なトンネル”を抜けた。
次の瞬間。
ズン……
ズン……
地響きのような音が響く。
ミニが巨大な体を反転させ、
ハイハイの姿勢で――
電車を追いかけてきていた。
テツロウ
「なっ……!?」
その速度は想像以上に速い。
だが――
電車のスピードの方が、わずかに上回る。
ミニ
「む~……!」
頬をふくらませ――
次の瞬間、立ち上がる。
視界いっぱいに広がる、巨大な姿。
――やはり、大きい。
30階建て高層ビルくらいの高さにするだろうか
月と星の光を浴びて
夜の中にそびえ立つ。
ミニ
「まて~~!」
地面を蹴り、
一歩、また一歩と迫ってくる。
そして――
あっという間に、追いついた。
窓のすぐ横。
巨大な足が、交互に地面を踏みしめる
ドン……
ドン……
規則的な振動が、車内に伝わる。
短パンから伸びる脚は、
月明かりに照らされていた。
しなやかで、無駄のないライン。
その巨大さとは裏腹に、
どこか見慣れた――
“妹の脚”のままだった。
だが、一歩踏み出すたびに、
地面が沈み、
砂ぼこりが舞い上がる。
窓のすぐ外を、
その脚が横切る。
太ももから膝へ、
そしてふくらはぎへと続く曲線が、
ゆっくりと視界を流れていく。
テツロウ
「近すぎるだろ……」
現実感が、追いつかない。
ドン――
踏み込まれた瞬間、
車体がわずかに揺れる。
テツロウ
「ごほっ……!」
巻き上がった砂ぼこりに、
思わず咳き込む。
それでもミニは、
楽しそうに電車の隣を歩いている。
まるで散歩でもしているかのように。
その時――
遠くから、声が届いた。
エミ
「ミニ、兄さん……そろそろ着くかな?
あの駅に……」
ミニ
「うん!」
嬉しそうにうなずく。
気づけば電車は、
ゆるやかな上り勾配に入っていた。
レールが、少しずつ角度を持ち始める。
テツロウは、窓の外へ視線を向けた。
さっきまで近かった地面が、
わずかに遠ざかっている。
――高度が上がっている。
レンガ造りの高架橋。
電車はその上を、
静かに登っていく。
さらに、上へ。
ゆっくりと。
確実に。
高度を上げていく。
気づけば――
ミニの視線が、
少しずつ“下”からではなく、
“横”に近づいていた。
腹部のあたり。
その高さに、電車が並び始めている。
地面は、さらに遠くなる。
およそ――40・・
いや45メートルくらいの高さはあるだろうか
建物でいえば、
15階ほどの高さだろうか。
その位置へと、
線路は導かれていく。
ミニは、そんな電車の高さに合わせるように、
少し屈みながら並んで歩いている。
それでもまだ――
圧倒的に、大きい。
テツロウは窓越しに、
その巨大な姿を見上げた。
月明かりの中。
巨大な妹が、
電車と並んで歩いている。
現実とは思えない光景。
それでも――
どこか、当たり前のように
感じてしまう自分がいた。
電車は、さらに登る。
その先にあるのは――
あの駅。
エミが言っていた、“あの駅”。
まだ見えない。
だが確かに、そこへ向かっている。
夜の中を。
ゆっくりと。
そして確実に――
電車は、高度を上げ続けていた。
――第三話へ続く。
第二話をお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、ミニとの本格的な遭遇回となりました。
巨大でありながら、いつも通りの無邪気さ――
そのギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです。
また、電車という日常的な空間と、
巨大な存在が並走する異様な光景を描いてみました。
そして物語は、
エミが口にした「あの駅」へと向かっていきます。
次回以降も
よろしければ、引き続きお付き合いください。




