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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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帰還




視界が揺らぐ。

体が重い。

節々から、痛みの悲鳴が聞こえる。


3人は、指一つ動かせない体になっていた。



(環!澄香!留奈!)



気力で振り絞った鳴き声。

静まり返った森にか細く響き渡る。



(このままじゃ、皆死んじまう…!)



そんな時、目に入ったのは環のリュック。

何かあったらと薬を買い込んでいた事を思い出す。


俺はポーションを取り出す為に歩き出す。


一歩歩くだけで、体に激痛が走った。

意識が何度も遠くなり、呼吸が乱れる。



(俺が気絶したら、終わりなんだ…)



何とかリュックまで辿り着いた俺はポーションを探し始めた。

体力と、魔力回復のポーション。


…治癒が使える留奈に、頑張って貰うしかない。



ポーションを両手に抱え、歩き出す。

肩で小さく息をしている留奈の元に。

足が千切れそうなほどに痛い。

ほんの少しの距離なのに、恐ろしく遠く感じる。


抱えている腕も痺れていく。

早くしないと間に合わない…!



やっと、留奈の元へと辿り着く。

青ざめている顔を優しく撫でてやった。


体が、冷えている。

口からは夥しい量の血。

眉間に皺を寄せ、大量の汗を流して息をしている。



(留奈!これを飲んでくれ!)


2つのポーションを無理矢理口に注ぎ込むが…

全て押し戻されてしまう。


一口でも良い、頼むから飲んでくれ


そう願い、俺はひたすらポーションを飲ませ続けた。



だが、留奈の体に変化はない。

呼吸が浅くなってきた。

体も冷たい。



(お願いだよ…!頼む…!)



祈るように力強く手を握りしめた瞬間。

俺の体から光が漏れた。

無意識に信仰の力が発動してしまう。

ポーションと混ざり合った力が、留奈の体に広がっていく。



「っ、ぅ…」



留奈の体が一度、激しく脈を打つ。

貫通した傷口がゆっくりと、塞がれていくのが見えた。

青白かった顔色も、ほんのり赤みを取り戻す。



(本当に、良かった…)



安堵のため息が漏れる。

だが、俺の体はもう限界に達していた。

2度も信仰の力を使った所為で、姿を維持出来なくなってしまっている。


薄らと揺れる俺の体。

また、消えるのか…。

でも俺は、妹を守れたならそれで良い。



そう思っていた。



「…フー、ちゃん」


小さく、でもしっかり聞こえた。

俺を呼ぶ声。


留奈は消えそうな俺の羽根を弱々しく握り返す。

その瞬間、体が激しく発光した。



(これは、信仰の力…!?)



留奈からの強い信頼を感じる。


揺らいでいた体は落ち着きを取り戻し、いつもの姿に戻る事が出来た。



「…ごめんね。るな、姉さんに迷惑…かけた」



握ったままの手が小刻みに震え出す。

言い終えた後、堰を切ったように涙が零れ落ちた。

声を上げて泣く留奈。

その涙を精一杯、羽根で拭いた。



「許して、くれるかな…?」



(お前を責める奴なんか何処にもいねえよ)



不安そうに見つめる留奈に、大きく首を縦に振って頷いて見せる。

俺の行動に安心したのか、胸を撫で下ろす。



「…早く、助けてあげなきゃ」



勢い良く立ち上がるが、体の反動で倒れそうになる。

俺は咄嗟に留奈のローブを嘴で思い切り引っ張った。

何とか地面ギリギリで受け止め、体勢を立て直してやる。



「体が、まだ言う事聞かないや」

「…それでも、わたしがやらないと」



覚束ない足取りで、まずは環の元へと向かう留奈。

ボロボロの姿を見て、思わず言葉を失ってしまう。


自分の所為で、こうなってしまった。


現実を目の当たりにした留奈。

顔を上気させ苦しそうに息を吐く。

意を決したように環の手をぎゅっと強く握り締めると、ポツリと一言呟いた。



「…お願い」

「いたいの、とんでけ!」



語気を強め、叫ぶように言い放つ。

その瞬間、環の体は優しい光に包み込まれていく。

激しく損傷した体が癒えていく。


ある程度、傷口は塞がったが留奈は途中で環の体に倒れ込んでしまった。



「留奈、ちゃん…?」

「また無理しちゃ…熱出ちゃうわよ」


「…大丈夫、だよ…っ」


治癒魔法が効いたお陰で、意識を取り戻した環。

倒れている留奈を見つけると、優しく頭を撫でて心配そうに言葉を紡ぐ。


優しい姉の言葉に胸が熱くなる。

嬉しさで顔を歪めるが、強がった言葉を口に出す留奈。

俺は留奈の肩に乗るとそっとポーションを差し出す。



「たま姉、これ飲んで」


「ありがとう。貰うわね…」


留奈からポーションを受け取った環は、ゆっくりと飲み込んでいく。

静かに、魔力の波動が高鳴るのを感じた。



その様子を見た留奈は、再び立ち上がる。




「…動かないでね!今、すみ姉も治してくるから!」



念を押すように言うと、駆け足で澄香の元へと向かう。

無惨に倒れ込んでいる澄香が目に入る。

傷付いた姿に留奈は言葉を失ってしまった。



「………」


俺は留奈の頭の上で何度もジャンプ繰り返す。

ハッ、と現実に戻った留奈は俺を見上げて小さく頷く。

一度、額の汗を拭うと澄香の手を強く握る。



そして、願う。



「……いたいの、とんでけ!」



想いに呼応するように、辺りが眩く光る。

澄香の傷が徐々に消えていく。

血色が良くなってきた時、澄香の指が僅かに動いた。


「…っ…」


「…すみ姉!」


「暖かいわね、やっぱり…」


意識を取り戻した澄香は、力無く笑みを浮かべて呟く。

留奈の魔力が切れたのか、まだ痛々しい傷が残っている。

その様子を見た留奈は、ポーションを握らせた。



「…まだ、治ってない」


「ふふっ…ありがと」



受け取ったポーションを豪快に飲み干す。

未だ動かない体を見つめ、澄香が悔しそうに唇を噛み締めた。



「もう負けないって…決めたのにっ!」



メルクスの攻撃により、森は壊滅的に荒れ果ててしまった。

何処からか木が焼ける臭いもする。

集落も消え、希望一つ持ち帰る事が出来ない。


瞳に涙を溜めて澄香は吐き捨てた。



「勇者、失格なのよ…あたし達」


「…すみ姉」


その言葉と同時に顔を背け、無言で肩を震わせる。

何も言えない留奈。


鼻をすする音だけが、静かに木霊する。



だが、静けさは突然終わりを告げた。



集落に居たあの動物が、何かを抱えて戻ってきた。

しかも後ろには数匹の仲間を引き連れて。



「…帰ってきて、くれたの?」


同調するように留奈の周りを跳ねるもふもふ。

横たわる2人に向かって動物が押し寄せてきた。



「な、何っ!?むぐっーー」


「ひゃあっ!?」


謎の木の実を口に放り込み、傷に薬草を塗りこんで行く。

重々しい空間が、一気に賑やかになり明るくなった。

献身的に看病をしてくれる動物を見て、留奈は心から嬉しそうな笑顔を浮かべた。




「…フーちゃん、間に合ったよね?」



何故だろう。声が出ない。

留奈の問いに、自慢気に頷くと俺はいつもの定位置についた。

暖かい腕の中。

応えるように、留奈は強く抱き締める。



繋がった命。


魔力が尽きた留奈は、その場に倒れ込んでしまう。

しかし、もふもふ達が颯爽と囲い込み手当てを始める。





「救えたんだ、あたし達…」


「そうね、守れたのよ…きっと」




もふもふ達の看病は、朝まで続いた…。






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