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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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邂逅①



――レルーの森



「ここに来るのも何回目かしらね…」


「今回は装備もちゃんとしたし大丈夫よぉ」


「…ん、行こう」



ため息混じりに言葉を漏らす澄香。

そんな澄香の背を押し、自信に満ちた表情で話す環。

見慣れた森に突入する。



茂みを掻き分けて歩いて行く3人。

だが、周りからはモンスターの気配すら感じない。

余りにも静か過ぎる雰囲気。

澄香が怪訝そうに周りを見渡す。



「ねえ、何かおかしくない?」


「そうね。動物の気配が全くないの…留奈ちゃんは感じる?」


「…感じない、かな」


目を瞑り五感を集中させる留奈。

その直後、後ろから猛烈な気配を感じた。

咄嗟に振り返り2人に伝えようとするが…



「きゃぁっ!?何なの!」


「澄香ちゃん!危ないっ!」


砂埃を巻き上げて、巨体が近付いてくる。

3人目掛けて突進して来たのは黒いモンスター。


環は澄香を突き飛ばすと、その攻撃を盾で受け止める。


大きな唸り声と共に押す力が強くなっていく。

必死に構え続ける環。

だが、じりじりと後退し額からは汗が滴り落ちる。



「くぅ…力が強い…!」


不意に、モンスターと視線がぶつかる。

その瞬間、環への攻撃が止まった。


(えっ?)



突然の出来事に、自分も構えてた盾を下げてしまう。

後ろから、留奈の叫びが聞こえて来た。



「…戦いたくないって、言ってる!」


「それって…っ!?」


留奈の言葉をかき消すような、咆哮。

大地が何度も揺れる程、体を大きく震わせるモンスター。

今度は澄香へと目標を移して、突進を始めた。



「分からせてやるわよっ!」



杖を両手に構え、真正面で対峙する。

周りの魔力が反応し、杖先に炎が集っていく。



「…すみ姉、待って!」


「はあぁあっ!」


辺りが一気に暑くなる。

出来上がった豪火球。

留奈は自身の体で、火球を防ごうとする。

願いは叶わず、小さな腕を貫通しモンスターへと直撃してしまう。



「ギャオンッ!」



顔面に的中し、悶えるモンスター。

熱で周りの木々が焦げ、燃えた臭いが充満した。

爛れた皮膚。荒い呼吸。


留奈が割って入った事に苛立ちを隠せない澄香。

腕を焼かれ、膝をつく留奈を見てきつく叱る。



「危ないでしょ!?何してんのっ!」


「だから、待ってって…」



2人の後ろでモンスターの四肢が軋む。

前傾姿勢を取り、大きく体を弾ませて攻撃をお見舞いしようとするが…


また、動きが止まった。

澄香の目の前で。


その体は小刻みに震えていた。



「っ!…痛く、ない?」



身構えて目を瞑ってしまった澄香。

暗がりが広がる事に息を荒げつつ、ゆっくりと瞳を開く。


眼前に広がったのは大きく鋭い牙。

存在感を放つそれに、思わず大きく喉が鳴る。



黒いモンスターは、怯えていた。


しかし、それは3人では無く明らかに違う何か。



「…るなとお話し、しよ?」



怯えた巨体に静かに、ゆっくりと歩み寄る留奈。

柔らかい優しい声で問い掛けていく。



(無謀すぎるだろっ!やめろ!留奈っ!)



自分の嘴を使い、留奈の服を思い切り引っ張り阻止する。

その直後、3人の背後から圧倒的な禍々しいオーラが広がった。



「まだ、壊れちゃダメだよ?」



背筋が凍る。

この森ではあり得ない、強烈な存在感。



「な、に…?」


「私達以外に、誰か…居るの?」



「あっ!待って!」



誰もが感じたオーラに、1番怯えたのはあのモンスターだった。

留奈の説得も虚しく、物凄い速さで森の奥へと走り去って行く。



「皆、追うわよっ!」


「え、ええ!」


「…早くしないと、間に合わない」



(こいつ、逃げてるじゃねぇ!…誰かに逃げさせられてるんだ!)

(そいつが、原因か…?)



全速力で走るも、距離はどんどん離れて行く。

黒い影が見えなくなりそうになる。

諦めかけた、その時。



視界が開けた。



最悪の形で。



「ぜぇ、はぁ…」


「嘘でしょ?ここって…!」


「…誰かの、村?」



燃え盛る家。

人の声すら聞こえない。

巨大な足跡に蹂躙された畑。

血に塗れた死体が、そこら中に転がっていた。



泥で汚れた服。

割れた食器。



誰かが、幸せに暮らしていたはずなのに。


何処を見ても悲惨な光景が目に浮かぶ。


ふと、何か動いている動物を見つけた。

その子に気付いた留奈は疲れた体を忘れて駆け寄る。



「…何があったの?」


「……」


「…っ、そっか」


「…大丈夫、るな達がやっつけるから」

「いたいの、とんでけ」



煤に塗れたボロボロの動物。

今にも泣き出しそうな表情で会話をする留奈。

話を聞き終えると、治癒魔法をかける。


淡い黄緑色の光が、一帯を包み込んだ。


元気になったその動物は、急足で何処かへ向かっていった。



「留奈ちゃん…今の子は?」


「ここに住んでた子。黒い化け物に襲われたって」


「さっきの奴!こんな簡単に村をめちゃくちゃにして…っ!」


「…あの子も、泣いてた」


「どうして、守れないのかしらね…」




衝撃の事実に、場の空気がより一層重くなる。

誰も言葉を発する事が出来ない。



吐き気がする。

のしかかる沈黙。



その静寂を破ったのは、耳を劈く雄叫びだった。



「あいつ!帰って来たの!?」


「でも、何だか様子が変ね…」


「…あの子はもう、真っ黒になってる」

「……助けたいけど、もう…」



さっきのモンスターから感じられなかったもの。


殺意だ。


俺達は今の雄叫びで、それを全身に浴びた。

今度は殺す気なんだと。



「この村の人達のためにも、やらないとっ!」


俺は素早く澄香の頭の上に乗る。

留奈も魔法陣を展開していく。



「私の後ろに!皆は私が守るわ!」



その掛け声と共に、環は盾を地面に突き刺す。

同時に、金色のシールドが大きく広がっていく。


環が守りに入る間、澄香は雷の魔法を練り上げ鋭い閃光へと変化させる。

一段と太くなった雷光。

澄香の髪先がジリっと焼け焦げていく。



「いくわよっ!」


「…お願いっ!」


2人の声が響いた瞬間、留奈は大量の水色のスライムを召喚する。

スライムは目に見えない速さでモンスターへと引っ付いていく。



「すみ姉のために…!」


まとわりついたスライムを引き剥がそうと大暴れするモンスター。

その度に、パンと弾ける音が響く。

モンスターはいつの間にか、全身が水浸しになっていた。


「今だよ!」


「待ってましたぁっ!」



留奈が発言したと同時にとてつもない威力の雷が放たれる。

空気がヒリつくほど速く、眩い一閃。

くっついていたスライムを巻き込み、激しい爆発音が響き渡った。


肉が焼ける嫌な臭いと共に、水蒸気がモンスターから湧き上がる。


体がズタズタになろうとも、モンスターはまだ攻撃を諦めていない。

ゆっくりと、力無く3人ににじり寄っていく。



「…もういいよ」


「ちょっ!留奈!」


今にも倒れそうなモンスター目掛けて、留奈は走り出し抱き付いた。


その瞬間、留奈を踏み付けようと足を振り上げた。

地震のような衝撃。地形が崩れそうな音。

踏み抜いた足は留奈の真横で止まる。

恐怖で心臓が跳ね上がった。

それでも留奈は震えた手でモンスターの頭を優しく撫でる。



「…本当は、こんな事したくなかったよね」

「やりたくないって…伝わってたよ」



語りかけるような言葉に、安心した様子でモンスターが鳴く。

安堵のような、か細い声。

次の瞬間、ドス黒いオーラが一気に弾けた。

目の前に居た敵は大きな光の粒となり、静かに空へ飛んでいく。



「操られてたって、事?」


「留奈ちゃんは…聞こえてたのかしら」



寂しく佇む妹の姿を黙って見ている2人。

しかし、その静寂は禍々しい空気によって一層された。




突如、旋風が吹き荒れる。

厭らしい空気が、呼吸をさせない程重くなっていく。




「あーあ……これも耐えられなかったかぁ」

「完成まであと少しだったのに」



残念そうな声で言葉が漏れる。



「君達は、もう少し持つよねぇ?」




「!?」



突然の声に全員がその先へ視線を送る。


目の前に居るのは、フードを被った人物。

逆光で、視認できない。


俺達が途中で感じたあのオーラと同じだ。



妖しく光る瞳。

漆黒の波動が、森中に広がる。


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