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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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暗雲②





この日が、全部を変えるなんて思ってもみなかった。




俺は留奈の腕の中で目が覚める。

羽根が動くのを感じた留奈も瞼が動いた。

ゆっくりと目を開けて俺を確認すると、眠たそうな笑みを浮かべる。



「…おはよ、フーちゃん」


「ぎゃっ!」



朝の挨拶と共に、留奈は俺を抱えるとベッドから出て部屋を出ていく。

もう既に、2人は朝の支度をしていた。



「…みんな、早いね」


「おはよう、留奈ちゃん♪」


「おはよっ!まーたそいつと一緒に寝てたの?」


「…ん、気付いたら、居た」



澄香は顔色を変えて穿つような視線を俺に送る。

恐怖を感じた俺は羽ばたきを響かせて部屋の端に転がった。




「今日はまず、ギルドへ報告に行きましょうか?」


「そうねっ!少しずつお金貯めて装備も良くしましょ!」


「…もっと、強くなりたいね」


留奈の一言が、2人の決意をより燃え上がらせる。

環と澄香はお互い見つめ合い、大きく頷く。



「それじゃあ出発するわよっ!」


「次の依頼も受けましょうねぇ」


「…ん、楽しみ」



3人はそれぞれ元気に声を出し、宿屋の扉を開いた。





――城下町ギルド




重厚な扉をじっくりと開ける環。

ギィ、と金属が擦れる音が響き渡る。



「ようこそ、ギルドへ」



迎え入れたのはギルドマスター。

留奈の頭の上に居た俺を見据えると、嬉しそうに目を細めて笑みを浮かべた。

こいつはどこまで、知っているんだ?



「昨日の依頼、達成して来たわ!」



カウンターに達成の紙を叩き付けた澄香は自身満々な表情で言い放った。



「仕事が早いね。素晴らしいよ」


「ですが、私達が今回戦った敵に違和感があって…」


「それは、どう言う事だい?」



黒うさぎの事が頭から離れなかった環は、神妙な面持ちでマスターへと語る。

表情で察したマスターは、状況を確認するように訊き返す。



「実は、黒い鬼うさぎと戦ったんです」

「本来の白い子達が、黒い子に森から追い出されたみたいで…」


「…黒い、か」

「クロノスのような、赤黒いオーラは無かったか?」



「いえ、白い子が突然汚染されたように黒くなっていったんです」



その時の情景を必死に説明する。

描き終えたマスターは顎に手を当てて長考した。

眉間に皺を寄せて、環に質問をする。



「つまり、凶暴化して襲って来たって事だね?」


「はい、戦闘力もとても強くて…倒すのに苦労しましたわ」


「…黒い子達は、理性もなくて話すこともできなかったよ」



2人の感想を聞くと、マスターは頭を抱えて深いため息を吐き散らす。

首を下げて憂鬱そうに一言添えて。



「その報告、色んな街から上がっていてね」

「冒険者が怪我をして帰ってくるのも多くなって来たんだ」


「えっ…?」


「しかも、どの話にも共通点があった」

「戦ったのは黒いモンスターだと」



「何か、意図的な物を感じますわね」



「君もそう思うかい?これは偶然じゃないと、私は思っている」


「最近、妙な魔道具が出回ってるらしい。出所は分からないが…」




環は片眉を上げ訝しげに言葉を発する。

同調するように小首を傾げたマスターは、カウンターに1枚の紙を置いた。




「何よ、これ?」



「オルドの森に小さな集落があってね。そこから依頼が来たんだ」

「黒いモンスターが村を襲っている、と」


「なっ!?」



「その部族は言葉を喋らなくてね、ウチの方でも処理に困っていたんだよ」


その言葉を呟いた後、留奈へと視線を向けるマスター。

目が合うと留奈は不思議そうに見つめ返す。



「君が居れば大丈夫そうだ」


「…わたし?」




「これは緊急を要する依頼だ。是非とも君達にお願いしたい」



マスターからの一言で、場の空気は一気に緊張感が増した。

真っ直ぐな視線を3人に向ける。

ゴクリと、喉が鳴る音がこだました。



「分かりました。この依頼、引き受けますわ」


「本当かい?助かるよ!行くのも大変だろうが、頑張ってくれ!」


「げっ、また遠い場所なの…?」


朗らかに笑顔を見せて了承する環を見て、心から嬉しそうに声を弾ませるマスター。

その後ろで嫌そうに呟いた澄香。


隙を見て依頼の紙を拾い、じっくりと見つめる留奈。



「…どんな子達に、あえるかな」


期待に胸を膨らませ、肩を揺らして笑う。

もしかしたらまた友達が増えるかもな…。



「では、行って参りますね」


「ああ。健闘を祈っているよ」


「あんまり期待しないでよっ?」


「…行って来まーす」



会釈をし、踵を返す環を先頭にギルドを出ていく3人。

楽しそうにスキップをしながら歩く留奈。

その様子を見て、澄香は不安気にため息を吐いた。



「本当に話が通じない相手だったらどうするの?」


「…何とかする」


「どんな事があっても、私は留奈ちゃんを守るから安心してね?」


「…たま姉、ありがと」



和やかな雰囲気で、宿屋へと戻っていく。

帰った3人は足早に、光る扉の前へと立った。



「急ぎの依頼よ。準備はオルドでしましょう?」


「分かったわ!きちんとご飯も食べてから行きたいわね!」


「…ん、早く行こう」



「じゃあ行くわ!えーいっ!」



決死の声で扉へと飛び込んでいく環。

2人も後を追って行く。

ぐにゃり、と歪む視界。

意識が飛びそうになる感覚。


心地の悪い空間は一瞬で、明るくなった。



「くぅーっ!未だに慣れないわね…」


「ふふっ、でもお家に帰って来れたわ」


「…ご飯、食べたい」


「よーし!お姉ちゃん張り切っちゃうわよぉ」



留奈の言葉でテンションが上がり、颯爽と家へと入って行く環。

残された2人は、安心した顔で我が家を見据えた後玄関へと向かって行った。


少し遅めの朝ごはんになりそうだ。




ご馳走の様な朝食を食べながら、3人は話し合いを始める。



「まずは、武器屋に行って装備を整えないとね」


「…道具屋にも、行きたい」


「確かに飲み薬とかあったら便利よね!」



(またあの店主に会うのか…気が進まねえなぁ)



「そうねぇ、強くなる道具もあるかもしれないわね」



小刻みに首を縦にして同意する環。

自分の持ち物が売られた事など知らない澄香は楽しげに声を弾ませて喋っている。



あっという間に平らげた3人。



澄香は食器を下げ、食器を洗って行く。

綺麗になった食器を留奈が拭いて片付ける。

毎日の日課。



「片付けも終わったし、街へ行きますかっ!」


「…わくわく」


「依頼達成に向けて頑張りましょう!」




「おーっ!」



士気を上げる掛け声が家に響く。

直後、玄関を開ける音。

準備をした3人がオルドへと向かって歩みを進めていく。




後ろから黒い影。



「もう嗅ぎつけちゃったかぁ…」

「ちゃんと使えてるか、見に行かないとねぇ」



残念そうにトーンを落として言葉を紡ぐ。

不穏な言葉を残して、漆黒の影が吹き去って消えて行った…。





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