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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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友達③




 

「ふぅん、流石にあんな雑魚にはやられないかぁ…」



環が澄香を抱え、ログハウスへと戻っていくのを見ていた黒い影。

残念そうに肩を落とし、ポツリと呟いた。



「でもまぁ、この魔道具もそれなりに使えるねぇ」



何かを握り締め、妖しい笑みを浮かべて口角が上がる。

その直後、黒い影は靄になり禍々しく消えていく。






一方で、ログハウスでは留奈と澄香の看病が行われていた。


下がらない熱。

戻らない意識。



「また、私1人残されちゃった」



氷嚢を替えながら、震える声が部屋に響く。

その状況に、環はギリッと奥歯を鳴らす。




「これじゃあ、守ったなんて言えないじゃない…」

「私を、置いていかないで…っ!」



交互に頭を撫で、眉間に皺を寄せて2人を見つめ続ける。



「お二人の意識は…戻りましたか?」



荷物を両手に大量に抱えて、ダークエルフの女性が環に声を掛ける。



「いえ…まだ熱も下がらなくて」



その問いに申し訳さなそうに首を横へ振る環。

自分の不甲斐なさに大きなため息を吐く。



「こうやって見守るしか出来ないなんて、姉失格ですわね」


「私は戦闘を見ていないので分かりませんが…」

「貴女が生きて、妹さんをここに連れて来れた事が奇跡だと思います!」




激励の言葉を述べる女性に、目を見開いて驚いてしまった。

唸り声を上げている2人を、環はジッと見つめた。

生を感じると環は微笑みを浮かべる。




「そうですね…ありがとうございます♪」




「…私達ダークエルフが飲む秘薬をお作りしますね!」


「秘薬?ですか?」


「魔力や体力ではなく、気力を回復させる薬なんですよ」

「私の妹にも、よく作ってあげてたなぁ」



何かを思い出すように会話を紡ぐ女性。

床に散らばっている荷物から、大量の薬草を取り出し始めた。



謎のモンスターの干物。

干からびたヒレ。


見た事もない素材がどんどんとすり鉢のような物に放り込まれていく。


ゴリゴリと擦る音。

すると、部屋中に独特な匂いが漂い出した。



「…これは、効きそうですねぇ」


「私が居た村では薬草を調合して色んな薬を作るんですよ」

「作れるのはこれが最後ですが…」



自虐的に言いながらも手際良く進め、調合されていく薬草。

淡く光る液体を注ぐと黒い煙が上がっていく。



「よし、あとは混ぜるだけ…」




燻る煙が消える頃、秘薬が完成した。

怪しく紫に輝く液体は、沸々と泡を立てて別の容器に入れられていく。



「出来ました、お二人に飲ませてあげて下さい」


「頂きますわ」



手渡された秘薬を見つめ、小さく礼をして発言する環。

寝込んでいる2人の口元に少しずつ、丁寧に注いでいく。


その隣には起動していないフーの姿。



(フーちゃん…動かないけど、効くのかしら?)



慌てて駆け寄ると、フーの口の中に液体を流し込んでみる。

口から押し返される秘薬。

ベッドに紫の染みが出来ただけだった。



「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」



環は思わずフーから目を背けてしまった。

受け入れたくない現実が突き刺さり、声を殺して肩を震わせる。



「ん…」


「澄香ちゃん!」


最初に目を覚ましたのは澄香だった。

虚げな眼差しで環を捉えると小さく笑う。


「あたし、生きてた」


「ええ…!良かった…体はどう?痛む?」


「大丈夫よ。ちょっと傷付いただけだもの」


「それより、留奈は?」



すぐ傍で寝ている留奈を見つめる澄香。

穏やかに、肩で息をして眠っている。

その様子を見てホッと一息吐いた。



「良かったぁ…熱も引いてきてるみたい!」


「そうなの、あのお姉さんが薬を作ってくれてね…」



含みがある言い方で澄香から目線を逸らす。

環の目線の先にはあの液体。

見つけた瞬間、澄香の顔が一気に青ざめた。



「―――!?」


「げ、元気になったでしょう?」


「……」


「ありがとう、ございます」



引き攣った笑顔で女性に向かって礼を言う。

女性は、にこやかに笑うと小さく手を振った。



「…ん」


ポツリ、と一言だけ呟いて目覚めを知らせる留奈。

2人はその言葉を聞いた瞬間、目を輝かせて留奈を強く抱き寄せた。



「ばかっ!毎回倒れてるんじゃないわよっ!」


「あんなに頑張って…お姉ちゃん心配したんだから」



「…ごめん。友達のお願い、聞いてあげたくて」




抱かれた苦しさで顔を震わせつつ言葉を返す。

まだ熱がある事を察した環は、そっと体を離す。



「もう少し休んでてね?」


「…ん、ありがと」



環の言葉にホッとしたのか、再び寝転がるとすぐに寝息を立て眠りに入る留奈。


不意にその先に居たフーを見た澄香。

動かない小さな鳥に、一瞬で表情が曇る。



「フー!あんたまだ動かないの!?」



「澄香ちゃん!動かしたら危険よ!」


「だって…!あたしの所為で…」


「さっき、あの薬を飲ませてみたの。でも…」



何度も体を揺するも、反応すらない。

そんな澄香を諌め、力無く言葉を紡ぐ環。



重苦しい空気が部屋に流れる。





その光景をモニターで見ている俺。



複数のモニターにはコマンド不可の文字。

何回やっても、顕現する事はできなかった。



ただ、時間だけが過ぎていく。


もう、これで終わりなのか?

見守るだけで、終われってのかよ?



「何でなんだよ…っ!」



抑えきれない衝動で画面を思い切り殴ってしまう。

ジン、と拳に広がる痛みが、現実を突きつけてくる。



「俺の旅は、ここでゲームオーバーって事か…」



諦めの言葉が出てしまう。

もう、何をする気も無くなってしまった。

支える気力も無くなった体は、ゆっくりと地面に倒れ込んだ。


涙で視界が歪む。

嗚咽混じりの呼吸で画面を見る事も出来ない。




「…あいつらに、もう一度会いたかったなぁ」




その時だった。




画面越しに、俺を呼ぶ声が聞こえる。




「フー!あんたが生きてないと借りを返せないじゃないっ!」


「あたしを庇ってくれた事…」


「ありがとう、って言いたいのよ…」



フーに向かって、本心を吐き散らす。

体が小刻みに震え、声が上擦る。

環は何も言わずにそっと澄香を抱き寄せた。



澄香は大きく息を吐く。

堪えきれなかった涙が、俺の体に零れ落ちる。



「起きなさいよっ!」

「…ねぇ、返事…しなさいって言ってるでしょ…っ!」



涙を受けた瞬間、フーの体が小さく震えた。

羽根が、ピクリと動く。


突然の出来事に、瞬きを何度も繰り返す。



「えっ…?」



直後、部屋中が眩い光で照らされた。



ドクンと脈打つと、フーの体から魔力の波動が弾ける。

強い力は、辺りの空気に圧を含ませた。




「な、何よ…これ」




顔を赤く染めて涙を流していた澄香。

眩しすぎる輝きに目を細めて呟く。




世界の狭間が、揺らいだ。




「嘘、だろ?」


「コマンドが…入力出来る」



瞬く間に移り変わる画面に、俺は混乱を隠し切れなかった。

後ろから見ていたゼウスが一言発する。




「お主の半身に、信奉者が出来たようじゃな」


「それってつまり…」


「妹ちゃんの愛、じゃのぉ」



ドヤ顔で言い放つ妖精。

嬉しそうに笑うのを見て、小さく頷いた。




「頼む、成功してくれ…!」



消えゆく光を見て、俺は慌ててコマンドを入力する。



ピピッ



『コマンドの入力に成功しました』



「本当に帰れるんだよな?あいつらの所に…」




途端、意識が揺らぐ。

自分の意識が半身へと還るのを感じた




(あんな顔、させるつもりじゃなかったのにな…)




「あまり使い過ぎるんじゃないぞー!」




ゼウスの言葉を背に感じながら俺は現実へと戻っていく。







目覚めたと同時に、目がパチリを開く。

溢れ出た光は俺へゆっくりと飲み込まれていく。


俺が反応した事にいち早く気付く澄香。


静寂の空気の中。


羽根が、動いた。



その音で、再び静寂が訪れる。

誰も、言葉が出なかった。




「…本当、なの?」


「良かった…帰ってきて、くれたのね…」




「えっ?あの状態から、意識を?そんな奇跡みたいな事ある訳が…」




唖然とした表情で俺を見つめる澄香。

思わず膝が崩れ落ち、床に手をついてしまう環。

震える声で、本音が零れた。



「…守れなかった私を、許して…っ」



波動を感じ、無意識に呟く留奈。

求めるように手がフーへと伸びる。



「フー、ちゃん…」


倒れた手は、シーツをギュッと握り締めた。





青白い煌めきが俺の体を包み込む。

澄香の、想う力を感じた。

優しくて暖かい気持ちを。



「死んだふりとか…っ!やめなさいよっ!」



涙を服で拭うと、恥ずかしそうに顔を背ける澄香。

近寄ると、思い切り叩かれる。



「何なのよっ!…もう、ダメだって諦めたのにっ!」



何度も何度も、叩き続ける。

溢れる涙も気にしない、息が上がっても、止められなかった。



「そこまでにしてあげて?澄香ちゃん?」



「はぁっ、分かってるわよ…」




澄香はむっとした表情のまま言うと、静かに俺を抱き締めた。



「勝手に死ぬとか…許さないからねっ」




もう立ち止まりはしない。

呼ばれたのなら、何度だって応えるだけだ。


妹の為なら―――


何だってやってやる。





生き返った時の波動は、沢山の神達が感じていた。



勿論それは、ハデスにも伝わる。




「厄介な芽が出たものだ。フッ…世の常は面白いな」




ハデスは、冷酷な微笑で吐き捨てた。



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