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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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旅立ち





いつも通りの朝がやって来る。




「皆ー、朝ごはんできたわぉ」



環の号令で、眠たそうな2人がゆっくりと階段を降りて来た。




「んんー!やっぱり家で寝るのが1番ね…」



「……ん、昨日は、疲れた」





大きく伸びをして満足そうに笑う澄香。

同意するように留奈も頷く。

留奈の頭上で鳴き声を上げた俺を見て、薄く口角を上げる環。



「うふふっ、フーちゃんも頑張っていたものねぇ」


「あんまり褒めると調子乗るわよ、このアホ鳥…」




そんな会話のやり取りをしながら朝食が始まった。





「まずは城に行って様子を見ないといけないわ」


「ええ、何かお手伝い出来る事があれば良いのだけれど…」



「…わたし達、お金ない」



留奈の言葉にその場が一瞬で凍り付いた。




「留奈!嫌な事思い出させないでよっ!」



「…依頼でお金を頂きましょ!澄香ちゃん!」




直面した問題に喚き散らかす澄香。

必死で励ます環。

諦めた表情で小さく頷くと、澄香は食べ終わった食器を片付け始める。




「ご馳走様!…お姉ちゃん、おにぎりとか持って行ってあげたら?」


「あら、良い考えねぇ。2人が準備してる間に用意しておくわ♪」


「…じゃ、準備してくる」



言い終えると2人は階段を駆け上がっていく。

俺も2人に着いていくが、輝く扉の前で足が止まってしまった。




(もうここは、俺の居場所じゃないんだな…)




「…何だかこの部屋、あったかい気持ちになるのよね」




扉を横切る直前、澄香は自分の気持ちを一言呟く。

その言葉に、俺の胸がぎゅっと熱くなった。




「ぎゃー!」


「ふふっ、アンタもなの?変よね。誰も使ってない部屋なの、に…?」



珍しく素直な笑みを見せて言う澄香だったが、言葉尻がおかしくなる。

やっぱりだ、俺を認知出来なくなっている。


だが、ここで思い出させてはいけない。


俺は必死で目の前で飛び回ると、澄香を自室へと追いやった。



「ちょっ!?何よ!ちゃんと用意するからっ!」



そのまま慌てて部屋へと入っていく。



これで良いんだ。

忘れ去られたって構わない。



俺は、俺の力で今を生きるあいつらを守ってみせる。





銀色の扉は煌々と輝いていた。







準備を終えた3人が、扉の前に集まった。



「よしっ!それじゃあ行くわよっ!」


「ええ…!」


「れっつごー」



澄香の掛け声で、扉へと飛び込む。

また、あの揺らぎ。


未だに慣れないこの感覚に酔いそうになりながら、急に目の前が明るくなった。




昨日の宿だ。

こっちも繋がってるな。




「昨日ならここまで半日かかったのに…」


「本当に!凄いわぁ」


「…ふふん、ファストトラベル成功」



3人がそれぞれの感想を述べた後、踵を返して街へと繰り出す。


しかし


昨日の傷跡が街に生々しく残っていた。




茶色くなった血痕。焦げ枯れた木。

壁が崩壊した家屋。




その光景を見た時、暗く陰鬱な雰囲気が広がった。



ただ、立ち尽くす事しか出来ない。




不意に3人に声を掛ける男が1人。




「おおっ!あの時のねーちゃん達じゃねぇか!」

「あんなデカい魔物、良く倒せたな!すげぇよ!」



木材を担ぎながらも、3人を見つめ謝意を込めて言葉を投げかける男。

その男の体も、傷だらけだ。




「あ、あんなのあたし達にかかれば何ともないわ!」

「これからも任せておいてよねっ!」




瞳を潤ませつつ、必死に虚勢を張る。

自信に満ちた口調で話す澄香。



その言葉を聞いて、ホッとしたように安堵のため息を吐く男。




「助かるよ…俺達は復興作業しか出来ないからさ」


「これ以上の被害は出させませんわ」


「…ん、守ってみせるよ」


「ありがとう!ねーちゃん達はこの街の勇者だな!」





そう言うと、男は手を振り作業場所へと戻って行った。





勇者。



その一言に、3人は複雑そうな表情を浮かべる。




「…あんなに被害出しておいて、そんな言葉受け取る資格あるのかしら」


「そうね、国王様にも言われたけれど…簡単に名乗っていいモノじゃないと思うわ」



「…守れなかった人も、沢山居る」




重苦しい静寂。

現実を突きつけられ、各々が思いを馳せる。



空気が澱むのを感じた俺は一声上げて、ギルドを指差した。



「ぎゃーっ!」



「あっ!そうよ、あたし達はまずギルドを目指さないとっ!」



「…依頼、受けに行こ」




足早にその場を離れてギルドへと向かう3人。

散らばった魔石は、まだ小さく脈打ち煌めいていた…。





「失礼します」



挨拶を口に出しながら、重厚な扉を開く環。

目の前にはギルドマスター。



「ようこそ、ギルドへ。勇者殿」



目を細めて笑顔を向ける。

3人は静かに、堂々と歩みを進めてカウンターへと向かった。




「…あたし達が受けられる依頼はある?」


「その前に、1つ良いだろうか?」


「な、何よ?」



澄香の問いを遮るように、ギルドマスターが言葉を紡ぐ。



「先の件、君達の活躍で被害を最小限に留める事が出来た」

「その功績を讃え、パーティランクをBに昇級させたいのだが…どうかね?」




いきなりの飛び級に、目を丸くする3人。

突然の話に固まってしまった。




「え?あたし達はただ魔物を倒しただけで…」


「そうですわ。先日冒険者になった者に対して飛び級だなんて…」




「いや、アレは普通の魔物じゃあない」

「クロノスの欠片が産んだ、悪魔だ」




2人の言葉を否定するように、ギルドマスターは言い放つ。

その場に居た冒険者がざわざわと騒ぎ始める。




「某も、剣を交えたが相当な強さであった」


「私も守る事で手一杯でしたわ…」




大会で澄香と戦った小さな兎の獣人が思い出したように呟く。

昨日、あの場に居た冒険者は魔物の強さを十二分に知ったのだろう。

同意する意見が次々と飛び出した。



「ああ…あの強さは普通じゃねぇ」

「君が鼓舞してくれなったら、動けなかったよ!」




「皆…戦ってくれてありがとうっ!」




自分の言葉で動いてくれた人々からの声に、心からの笑顔を浮かべて感謝を述べる澄香。



「…とまあ、君達の評価はとんでもなく上がっていてね」

「普通なら昇格試験を通すのだが、満場一致で飛び級だよ」



俺を横目に見据えながら、嬉しそうに肩を震わせるマスター。

3人は周りを見渡した後、温かい雰囲気を感じると小さく息を呑む、




「では、有り難くその称号を頂きますわ」



凛とした表情でそう言い放つ環。

その瞬間、ギルド内は拍手で埋め尽くされた。



初めて来た時とは真逆、歓迎の祝福。



「その調子で頑張れよ!勇者様!」

「どんどん平和にして行ってくれよな!」



「ちょっとっ!勇者様とか言わないでよっ!」


「…もう、街で噂になってるよ」



恥ずかしそうに顔を赤く染めて反論する澄香だが、留奈に諭されるとしゅんと肩を落として口を閉じる。



「じゃあ、改めて聞くけど。あたし達が受けられる依頼は?」


「そうだね、今の君達ならモンスター討伐も大丈夫だろう」



3人の目の前には、依頼の紙。


モンスターの討伐依頼は数件。難易度も書かれてある。




「城から近い場所が良いわね…」



「…これ、にしよ」




留奈が指差したのは、城周辺での農作被害の紙。




「群れで生息してる鬼うさぎを追い払って欲しい…」


「あらあら、留奈ちゃんが好きそうな動物ねぇ♪」


「お話、したい」



目を輝かせ純粋な眼差しを向ける留奈に、思わず胸が高鳴ってしまった澄香。

困った様子でため息を吐きながらも、首を縦に振った。




「全く!留奈のお願いなら仕方ないわねっ!」


「…ありがと!すみ姉!」



嬉しそうに声を弾ませて、澄香に抱きつく留奈。



…依頼の紙端に、凶暴化注意!怪我人続出!と書いてある。

留奈はこの部分見てないだろうな…。




「では、この依頼で良いかな?」




「ええ、お願いしますわ」


「任せておいて!」


「…もふもふ」



依頼の紙を受け取ると、3人は意気揚々とギルドから出て行った。

その後ろ姿を見て、小さくお辞儀をするギルドマスター。




「頼んだぞ、勇者殿…」




切ない独白が、部屋に響いた。





―――森の奥から、笑い声のような獣の甲高い声が聞こえる。





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