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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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乱入①






環は準備していた弁当を2人へ配る。




「さぁ、あともう一仕事頑張りましょうか♪」


「ありがと…」


「…いただきます」




沈黙のまま、昼が過ぎていく。

しかし、弁当を食べ終わる頃には3人の顔色が嘘のように明るくなっていた。




「はぁーお腹いっぱい!何だか元気出て来たわっ!」


「…わたしも、ポカポカ」


「うふふっ、お姉ちゃんの特製お弁当ですもの!残さず食べてえらいわねぇ」





そこに割って入ってきたのはもう見知った声。





「食事は済んだかい?そろそろ決勝戦の時間だよ」


「さぁ、最後まで私を楽しませておくれ…!」




ギルドマスターの声が聞こえた瞬間、留奈は俺を即座にローブに仕舞い込むが…



視界に入ってしまった。



恍惚な表情。

だが、あの男の笑顔から懐かしい波動を感じる…。




「ふんっ!アンタに言われなくてもやってるわよっ!」


「そうね、私達は優勝する為にここに来たのよ…」


「…お宝、ワクワク」




3人には、優勝の二文字しか見えていない。

澄香が捨て台詞を吐くと、待機所から駆け足で出ていく。





最後の試合。

会場の声援が3人を包み込む。





「決勝戦を行う!皆、準備は良いか!」





勝ち上がったのはチームAとチームD




肩で風を切るように歩く澄香を先頭にして3人はリングへと赴く。

敵チームもリングに上がって行こうとした。





その瞬間。




辺り一帯に赤黒い空が立ち昇る。

息が詰まる程、空気が澱む。




「なっ、何だこれは…!?」


「空が…赤くなって…!」





恐怖が、伝播していく。





「ぎゃあぁあー!!」




突如、赤黒い稲光がリングに落とされる。

相対する筈の敵は、忽然と現れた男によって塵となった。



その光景を見た全員が絶句してしまう。



人の命が、消えた。




(う、嘘だろ?人間が…一瞬で?)




黒いローブを着た男は誰に目もくれず、真っ直ぐに俺を見据えた。

隙間から見えた笑顔は殺意に満ち溢れている。



腰を抜かしながらも留奈が懐の1番奥へと押し込むが、男の右腕は俺へと向かって伸びていく。


謎の紋様が、赤黒く瞬いた。



体が、動かない。




「やらせはしないっ!」



3人の前に立ったのは、ギルドマスターだった。

男の攻撃を、青白い光を纏った剣で引き受ける。



マスターの右腕が、淡く脈打つ。

それに呼応するように、俺の体が強く光った。




「一体、どうなってるのよっ!?」


「わ、分からないわ…」




「私が…雷神様を守るっ!」



自分を鼓舞するように言い放ったマスターは、魔力の波動を高めて男へと立ち向かう。

震える剣先で、自分の誇りを守るために。




「…チッ、やはりお前も信奉者か…」




嫌そうに呟いた男は一度距離を取る。



拮抗の沈黙。



それを引き裂いたのはフードの男だった。




「街を守らないと、雷神様の信仰もお終いだよなぁ?」



「何だと…!?」




男が叫ぶように口を開くと、リング周辺に小さな小石が大量にばら撒かれた。


石は形を変え、魔物へと成り果てる…。




「うわぁぁーっ!」「いやぁーっ!」


「ぐっ…助け…」




観衆を次々と襲っていき、辺りが血の海と化していく。

ついさっきまで、平和だった街が一瞬にして絶望に染まる。




「雷神の信仰…俺がこの手で終わらせてやる」



人々を蔑むように見つめて、男はため息と共に語気を鋭くした。




「お姉ちゃんっ!留奈っ!皆を助けに…」




澄香が体を動こうとした時だった。

男が巨大な石を複数、3人の目の前に飛ばす。




「おっと、お前達にはコイツらと遊んで貰おうか」




地響きを鳴らしながら異形が現れる。

見覚えのある、巨大なスライム。

酸を吐き出し周りを酸の海へと変えていく。




「……っ!」




加勢しようと体勢を翻したマスターだったが、澄香は周りにも聞こえるように大きく声を張り上げた。




「ギルドマスターは魔物達を!戦える人は動けない人を助けてあげてっ!」

「このデカい奴は…あたし達がぶっ飛ばす!」



立ち塞がる強敵に声も足も震えながら、懸命に訴える澄香。

その言葉に奮起した者が、武器を握ると乱闘が始まった。



悔しそうに顔を歪ませながらその場を後にするマスター。

留奈に目配せをすると懇願するように言葉を漏らす。




「くれぐれも…雷神様を…!」



「…わかってる、任せて」



2人の会話を聞き終える。

そっと、留奈のローブから顔を出して辺りを見回してみた。




魔物に襲われる人々。

必死で抗い続ける剣士達。


死は、手をこまねいている。




手に汗握る澄香は、鼓舞するように叫んだ。




「いくわよっ!2人とも!」


「ええっ!スライムの戦い方なら任せて!」


「…絶対に、負けない」



瞳に強い意志を宿して、前へ出ていく。


環は前面に

澄香は側面から

留奈は後方でサポートに回る



(俺だって…力になりてぇのに)



神のチカラが宿っているとバレてしまった。

食われれば、神の信仰が無くなる。




巨大なスライムが、環を襲う。

その攻撃を真正面から受け止める。



歯を食い縛りながら、強く盾を振り切る。

金色の盾がぶつかった瞬間、酸が弾け飛ぶ音がし腕が千切れるような感覚になった。

巨体が酸を撒き散らしながらリングの端まで吹き飛んだ。



体に酸を浴びても、環の顔色は一つも変わらない。




「お姉ちゃん!あのスライムはどうすれば倒せるの!?」


「魔石を狙うのよ!澄香ちゃんっ!」



俺は飛んでいこうともがくが、留奈の腕に押し返されてしまった。



「…出て来ちゃ、ダメ」



懇々と語る留奈にたじろいでしまい、抜け出す事が出来ずに終わってしまう。



その瞬間、留奈の隙間を縫い鋭い閃光が敵へと伸びていく。



細い稲光がスライムの魔石をピンポイントで破壊する。

肩を揺らし息を上げながら、澄香は開口する。



「まずは1匹!」



「…コイツは対策済みって訳か。だが、俺にはクロノス様の加護があるっ!」



フードの男が残念そうに呟くと、新しい魔石を手に握り次の魔物を創造しようとした。



「させないっ!」



「アオォーン!」



もう一度、雷撃を放つ澄香。

だが、それは狼の雄叫びにより掻き消されてしまう。



(ヤバい…!これじゃあ消耗戦になる…!)



体が勝手に動く。

気が付いたら俺は男目掛けて突進していた。



「ぎゃおーっ!」


「くっ…!」



運良く嘴が男の手に当たり、魔石は弾き飛ぶと衝撃で粉々になる。

しかし、衝撃で視界が歪み、翼は何ヶ所か折れてしまった。

俺はそのままモンスターの目の前に落ちてしまう。



殺意しかない。

一歩でも動いたら…



恐怖で動けなくなってしまった俺の体は、突然宙を舞い猛スピードで留奈の手の中に戻された。



「…はぁ、はぁ…もう少しだけ、お願い」




『ええ…貴女が望むなら』



頭の中に直接響き渡る言葉。

緑の煌めきで周囲を照らす梟は、留奈に呼応するように環と澄香に紫のオーラを纏わせた。


輝きと共に、梟は空へと飛び立つ。

それと同時に、俺を抱えたまま留奈は顔を真っ赤にして地面へと倒れ込んでしまった。 


まるで体の魔力を全部吸い上げられたみたいに、力が抜けていく。



「…ごめん、もう、戦えないや」



申し訳なさそうに眉尻を下げながら喋る留奈。

息を荒げうつ伏せのまま、意識を失ってしまう。




「留奈ちゃ…っ!」



「グルゥアァ!」



環が慌てて駆け寄ろうとするが、森の主の絶叫に阻まれその場から動けなくなってしまった。



「もう…あの時みたいな後悔はしないと決めたの」



言い聞かせるように独り言を呟く。

その刹那、狼に向かって見えない速さで盾をぶつけ大きく後退させる。



「体が、軽い?これが留奈ちゃんの残してくれた力…!」



ビリビリと痺れる手で、環はもう一度盾を握り直す。



敵意と闘志のぶつかり合い。



力強く握り締められた手は、決して勝利を諦めてはいない。




「はぁぁあっ!」




澄香の呼吸音が、重苦しい空気を切り拓く。




「こっちも負けられないんでね」



淡々と言い放つと、男は最後の魔石を取り出しモンスターを作り上げた。

魔石から禍々しい魔力の靄が溢れ出る。



黒い霧が渦を巻き、放たれた魔力が突風を呼ぶ。

空気が重く沈み込み、思わず息を呑んだ。


次の瞬間



暗闇を裂くように巨大な翼が広がる。



目の前に現れたのは、黒いドラゴン。



一際大きな影が立ち上がる。



絶望が、広がっていく。


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