表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/40

初めて⑦





武器屋へと戻ってきた俺達。



留奈は澄香が見ていた杖を素早く手に取ると、勢い良くカウンターに置いた。



「…これ、ください!」


「さっきの、ああ…銀貨5枚だよ」


「……ほい」



ポケットから銀貨を取り出し、店主に渡す。





「お買い上げどもっすー」







「うふふ♪ようやく、買えたわねぇ」


「…うん、頑張った」


「そうね…きっと、澄香ちゃんも喜んでくれるわぁ」





これからは俺も、自身のチカラを使いこなさないと死ぬかもしれない。



(よく考えて行動しないとな…)



初めて買った武器を大事に抱え、今日の事を振り返りながら俺達は帰路に着く。





灯りが見えてきた。

もうすぐ我が家だ。





「ただいまぁー」


「…帰ったー」


「お帰り…って、ええっ!?」



汚れて帰ってきた2人を見て、澄香の時が一瞬止まった。



「ど、泥だらけじゃない!?何してたの!?」


「色々あって…ね?」


「…汚くて、ごめん」



「良いの!今から急いでお風呂入れるから!待ってて!」



澄香は、バタバタと慌ててお風呂の支度を始めた。

玄関で座っている俺達に、澄香が疑問を投げかける。






「てゆーか、こんな時間まで何やってたの?」



「それは…そう!お金持ちのおじさんから、草むしりを頼まれちゃって!」



「…ボーボー、凄かった」



「留奈はこれ以上喋らないで?」



環は慌てて今日あった出来事の一つを話す。

不満そうに聞いていた澄香だったが、浴室から風呂が沸く音がする。




「お風呂沸いたわよ!ほらほら!2人とも早く入りなさいっ!」


「澄香ちゃん押さないでぇー!」


「…わーっ」


グイグイと背中を押されて浴室まで誘導される環と留奈。

傷付いた背中を、澄香はジッと見つめていた。





「ゆっくり入りなさい!ゆっくりね!」



「ふふふっ、有難う、澄香ちゃん」


「…るな、もうへとへと…」





2人が入るのを確認すると澄香は庭に出て行く。


今日も魔法の練習だ。








庭には虫の声だけが響き渡る。





「…あたしなら…」


「やれば出来る…絶対っ!」





祈るように呟き、意識を集中させる。



(…炎よ、出でよ!)



強く願ってみても、枝の先は変わらない。

声も出さずその場でしゃがみ込んでしまった。



「……っ」




(待ってろ!今行く!)



小さな体で澄香に近寄ろうとするが…




「ぎゃっ!?」



こちらを見向きもせず、手で追い払い俺を遠ざける。



「うるさい!アホ鳥!今は1人で集中したいの!邪魔しないでくれるっ!?」



(俺にも手伝わせてくれよ…)




大人しく木の後ろに隠れて様子を窺う。





澄香は練習を繰り返す。振るう腕は疲労が溜まり、まともに使えなくなっていく。






(…もう…何時間も。何日も、やってるのに…なんで…っ)





それでも諦めずもう一度、精神を集中させる。






「…炎よ、出でよ!」





初めて言葉に出した、魔法の言葉。




その時だった。





火花のような音が鳴り、炎が灯る。



枝先は、小さな光が輝く。




「…えっ…嘘っ!?」



だが、光は一瞬の輝きを放ち消え去った。



「そんな、っ!待って…!」



慌てて光を掴もうと手を伸ばす。


その手には、空白。


杖が、絶望と共に地面へと落ちていく。






俺は無意識に飛び出してしまい、澄香の肩に乗ると、小さい羽で涙を拭った。




「っ!アンタの慰めなんか…要らないわよっ!」




言葉は強いが、瞳からは大きな雫が溢れ出す。




何度も拭う羽の隙間から、小さな嗚咽が聞こえた。




「やだ…やだよぉ…何で、消えちゃうのぉ…あたしにも、皆の役に立たせてよぉ…」




(俺だって、お前の役に立ちてぇよ…!)





目の前に落ちていた枝を咥え、そっと澄香に渡す。




「―――まだ、やれって、言うの?」



鼻を赤くしながら、俺を睨み付ける。

それでも静かに頷き、再び肩に乗ると嘴で髪を撫でてみた。




「……分かった」




ぐずった鼻を啜り、渡された枝を両手で強く握り気合を入れ直す。




「全力でやってやるわよ…!」




澄香が目を瞑ったと同時に、周りの空気が急に一変した。



自然が揺らぐ。

風は呻き、地は軋む。



透明に揺らめくオーラが、全身を包み込んでいくのが見える。




乱れた呼吸で、唱えた。





「炎よ、出でよっ!!」






  ――――ボッ!





枝の先には…優しく、強く灯る炎。

ジリジリと木の燃える匂いが、辺りに漂う。







(やった…っ)




「やったぁあー!!」





ゆらゆらと揺らぐ炎を、澄香は瞬きひとつすらせずに見つめ続けていた。




澄香は、嬉しさの余り近くに居た俺を思い切り抱き締める。






「これでやっと、皆の力になれる!皆の隣に…立てるんだぁぁ」




俺もバタバタと羽を羽ばたかせ、精一杯の喜びを澄香に伝えた。






「……澄香ちゃああん!!」

「…すみ姉、っ!」




風呂から上がった後から練習をずっと見ていた2人が、堪え切れずに飛び出してきた。




澄香を囲うように優しく抱き合う。



温もりだけを確かめ合うように


3人の息遣いが重なった。













静かに、環が言葉を紡ぐ。





「おめでとう…澄香ちゃん」



「お姉ちゃんっ!それに留奈も…!」



「…毎日、見てた」



「――――!!」



自分が泣いている事を自覚した澄香は顔を真っ赤にし、必死に顔を背ける。



「…は、離れてよっ!もうっ!」



両手で押し除けようとするが、環の怪力により決して逃れられない。

いや、それ以上にきつく抱き締められる。

ど真ん中にいる俺は死にそうになっていた。




「良かった…っ!本当に…!!」



環は声震わせ、嬉しさで涙が止まらない。


スッ、と環の腕からすり抜けた留奈が澄香を呼んだ。






「…すみ姉、これ…」



「えっ…これっ、て?」




持っていたのは澄香が欲しがっていた、あの杖。




「澄香ちゃん、この杖とっても欲しがっていたでしょう?」



俺達を優しく解放しながら、環は買った経緯を説明して澄香の手を取りそっと握らせる。

その言葉を聞いた澄香はまた胸が熱くなり泣きそうになるが…





「そ、そんな杖なんか使わなくても、あたしは魔法使えるんだからっ!」




プイッと頬を膨らませ、目を伏せながら2人に向かって澄香は告げる。






「でも…」







「ありがとうっ!2人とも!」








受け取った杖を強く握り締め、2人の暖かさを改めて感じた澄香。


頬を緩め、はにかむような表情で精一杯の感謝を伝える。













どっぷりと日が暮れた。

居間には全員が揃い、環が忙しく用意をしている。




「はい、どうぞ♪」


「あ、ありがと…」


「おお…美味しそう」






今日もバランスの取れた夕食だ。澄香の大好物がいつもより多い。




「甘い…」




照れくさそうに澄香は言った。

環は穏やかに笑みを浮かべ、澄香の頭を愛おしそうに撫でる。




「ふふっ、愛情たっぷり入れてるんだもの…当然よ?」


「…ピーマン、入ってる」


「苦手は克服しないとだーめ!」


「…にがー」




頬杖を突きながら、いつも通りな2人の掛け合いを見ていた澄香は心の中で大きく決心する。






(これからはあたしが、2人を守ってあげるからね…!)





こうして、怒涛の1日は終わりを告げた…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ