第四回:講和成って楊業は兵を退き、鑾駕を迎えて豪傑は能を施す
「古豪・楊業が金刀を振るい、単騎で宋の大軍を切り裂く刹那」
馬に乗り真正面から鬼神のごとく楊業が「突っ込んでくる・・・」
頭の巨大な馬と、その背で鬼神の如く振る舞う老将・楊業。
彼の「金刀」が円を描いた瞬間、その切っ先には鋭い黄金の光が宿り、周囲の宋兵無数の影たちが、まるで暴風に遭ったかのように視界の外へと弾き飛ばされています。
勢いは荒々しく、血潮は飛び散り、戦場の砂煙となって全画面を定着しています。
しかし、楊業の眼光だけは静謐なまでに澄み渡り、彼が単なる暴力ではなく、研ぎ澄まされた武芸の極致にいることを物語っています。彼が背負う孤独と、広大無辺な河東の乾いた大地そのものが背後へすえ広がる。
【しおの】
さて、物語は宋軍の陣中より始まります。
一台の哨馬(物見)が矢のように駆け込み、北漢の援軍として名高き「楊業」の軍勢が到着したことを報告しました。宋の太祖・趙匡胤はこの報せを聞くや、御顔に憂いの色を浮かべ、重々しく口を開かれました。
「朕はかつて世宗皇帝に従い、この河東を平らげんとしたが、利あらずして兵を引いたことがある。今また、あの勇猛な楊業らが救援に現れたとなれば、ここは一旦兵を退き、敵の鋭気を避けるのが良策ではあるまいか」
これに対し、宰相の潘仁美が進み出て奏上します。
「陛下の御懸念ももっともではございますが、楊家の兵は精鋭なりといえど、果たして統率まで盤石でありましょうか。臣と諸将の奇策をもってすれば、必ずや打ち破ってご覧に入れます。どうか聖慮を煩わすことなきよう」
太祖はその言葉に心を動かされ、改めて出兵の令を下されました。潘仁美は高懐徳、党進、楊光美といった名だたる将軍たちを招集し、軍議を開きます。
猛将・高懐徳が口火を切りました。
「楊業の武勇は、ここ河東にその名が轟くほど。容易な相手ではありませぬ。明日の合戦、まずは蕭華を先鋒とし、趙嶷を二番手に、そして私と弟の懐亮で三番手を務めましょう。潘殿は大軍を率いて呼応し、彼らを四方から包囲すれば、勝利は疑いありますまい」
潘仁美は大いに喜び、ただちにその配置の手配を命じたのです。
翌朝、東の空が白む頃、三通の太鼓が雷のように鳴り響き、蕭華が軍を率いて進撃を開始しました。荒野を進むと、そこには威風堂々たる楊業の軍勢が待ち構えています。
蕭華は槍を構え、馬を止めて高らかに叫びました。
「北の将よ、速やかに降伏せよ! さもなくば我が軍は長駆して突き進み、この河東の地を平地としてくれよう!」
その挑発に対し、楊業は金刀を提げ、愛馬を飛ばして陣前へと躍り出ました。左に王貴、右に息子の楊延昭を従え、激しい言葉を浴びせます。
「無礼な匹夫め! 死を目前にしてなお、そのような大言を吐くか!」
言うや否や、楊業は刀を舞わせ、蕭華へと直進しました。
蕭華もまた槍を挙げて応じます。二頭の馬が激しく交錯したかと思えば、数合も打ち合わぬうちに閃光が一筋走り、楊業の一刀が蕭華を斬り落としていました。主将を失った宋兵は雪崩を打って逃げ出し、楊業はその勢いのまま追撃にかかります。
この劣勢を覆そうと、宋軍の中から一軍が展開し、大斧を振るって趙嶷が出馬しました。楊業と激しく刃を交えます。二十合余り打ち合いましたが、趙嶷もまた楊業の神業のような一刀を受け、人馬もろとも無残にも四つに斬り裂かれました。これを見た宋兵たちは、総崩れとなって敗走を始めます。
この凶報に高懐徳は驚愕し、急ぎ弟の懐亮と共に騎馬軍一万を率いて救援に向かいました。また、澤州を守る北漢の将・趙遂もこの勝機を聞きつけ、城門を開いて呼応します。
楊業は鬼神の如く宋軍の中へ切り込んでいきます。高懐徳は槍を提げてこれを迎え撃ちました。両雄の馬が交錯し、火花を散らして五十合余り戦いましたが、互いに一歩も譲らず勝敗は決しません。
楊業がふと馬首を返して退くと、懐徳はここぞとばかりに後を追います。その時です。横合いから若武者・楊延昭が現れ、懐徳を馬から突き落としました。絶体絶命の瞬間、弟の懐亮が死力を尽くして兄を救出し、辛うじて陣へと戻りました。しかし王貴の指揮する追撃は凄まじく、宋兵の死傷者は数知れぬものとなりました。
命からがら戻った高懐徳は、潘仁美に謁見し、楊業の英雄ぶりと、二人の大将が斬られた無念を報告しました。
潘仁美は呻くように言います。
「主上と相談し、楊家に対抗する策を練り直さねばならぬ……」
太祖のもとへ参じた潘仁美は、苦渋の表情で奏上しました。
「王師(皇帝の軍)はすでに一度敗れ、楊家の兵は予想を遥かに超える強敵でございます」
太祖は天を仰ぎ、深く嘆息されました。
「天意は、朕に河東の平定を望んでおらぬというのか」
太祖は即座に諸将と撤兵の相談を始めました。
そこへ、文官の才も持つ将・楊光美が進み出ます。
「陛下、楊業の軍勢は趙遂と合流し、その勢いは侮れません。もし今、慌ただしく撤兵すれば、敵は必ずや背後から追撃してくるでしょう。我が軍が北兵の勢いに恐れをなし、戦わずして崩れたとなれば、外敵の嘲笑を買うことになります。今の最上の策は、楊業と『講和』を結び、互いに兵を引く約束を取り付けることかと存じます。そうすれば後顧の憂いもなく、堂々と凱旋できましょう」
太祖は尋ねられました。
「して、誰を使者とすべきか?」
「臣が詔を奉じて参りましょう」
太祖はこれを許し、直ちに文官に詔を草させ、光美に持たせて澤州の楊業のもとへ遣わしました。
敵陣に到着した楊光美に対し、楊業は鼻で笑って言いました。
「汝の主は諸国を武力で平らげてきた覇者。かつて講和など、したことがあったか?」
これに対し、光美は一歩も引かず、声を張り上げて諭しました。
「我が主は英武にして大統を継ぎ、その恩威は諸国に及んでおります。逆命を征すること、泰山が卵を圧するが如し。首を垂れて臣と称する者は数知れず。今、御駕(皇帝自身)が河東へ下り、功を収めるのも時間の問題であります。ただ、これ以上の戦により生霊(民)の肝脳が地に塗れるのを忍びず、また将軍の武名と顔を立て、無益な殺生を避けるがゆえの講和なのです。中原には謀臣勇将がひしめき、兵を擁して出番を待つ者も多い。もし河東が下らず、御駕が留まっていると聞けば、彼らは激怒し、一斉に押し寄せてくるでしょう。そうなれば、汝の守る晋陽の都が無事であると保証できますか? 将軍は今の常勝を保てると言い切れましょうか?」
理路整然とした光美の言葉に、楊業は反論できず沈黙しました。そこへ副将の王貴が口を挟みます。
「将軍、これは好機でございます。この儀を受け入れ兵を収めるべきです。宋人を無用に激怒させれば、河東の利益にはなりますまい」
楊業もついに頷き、使者に答えました。
「宋君に奏上されよ。吾は即座に兵を率いて帰るとな」
光美は辞去し、続いて別の陣営にいる趙遂を訪ね、同様に講和の由を伝えました。趙遂は喜んで受け入れます。
「宋君は我が尊主なり。通好の意があるならば、従わぬわけがありましょうか」
こうして楊光美は大役を果たして太祖のもとへ戻り、講和が成立したことを報告しました。太祖は大いに喜び、撤兵の詔を下されました。長引く戦で食糧も尽きかけていた軍中は、この命を聞いて歓喜に沸き返ったといいます。
翌日、御駕は潞州を経て軍を返し、険しき太行山に至り駐屯しました。
さて、この太行山の山中に、一人の豪傑が潜んでおりました。その名を呼延賛といいます。小卒からの報告で、宋の太祖が河東遠征の利なく帰還することを知った呼延賛は、相棒の李建忠と謀を巡らせました。
「我らは河東に深い恨みがある。今こそ山を下り、御駕の行く手を遮ろうではないか。そして、衣甲三千副、弓弩三千張を求め、我らの寨で演習を行うのだ。やがて御駕が再び河東へ下る時が来れば、我らが先鋒となって大宋に功績を立てる。盗賊として生きるより、遥かに勝る生き様ではないか」
李建忠もこれに賛同し、人馬五千を与えました。賛は武装を整え、兵を率いて山下へと下り、陣を敷いて道を塞いだのです。
宋軍の哨馬が慌てて報告します。
「前方に賊徒あり、道を塞いでおります!」
これを聞き、前鋒副将の潘昭亮――潘仁美の息子――が出馬し、怒鳴りつけました。
「何奴だ、御駕を塞ぐとは!」
呼延賛は平然と答えます。
「聖駕を遮るのに他意はない。ただ衣甲三千副、弓弩三千張を残していただき、小将らの寨にて演習を行いたいのだ。聖主が再び河東へ下られる際、先鋒となって仇敵を打ち破りたいと願うものである」
潘昭亮は嘲笑いました。
「中原に英雄は数知れず。お前のような無名の草賊に何ができる! 早々に立ち去れば命だけは助けてやる。さもなくば捕らえて献上するまでだ!」
「我が槍に勝てば、御駕を通そう」
激高した潘昭亮は、槍を構えて呼延賛へ襲いかかりました。しかし、賛が槍を挙げて応戦し、わずか二合ほど打ち合ったところで、賛は懐から鋼の鞭(硬鞭)を取り出し、一撃のもとに昭亮を打ち据え、命を奪いました。
息子が殺されたとの報告に、潘仁美は目の前が暗くなるほどの悲しみに沈みます。そこに、猛将・党進が現れました。
「前方に賊兵あり、官軍の死傷者甚大とのこと。このままでは主上に申し開きができませぬ。私が兵を率いて戦いましょう」
「太尉が力を貸してくれるなら、朝廷の幸いだ」
仁美は藁にもすがる思いで頼みました。
党進は意気揚々と馬を駆り、陣前へ駆け出て叫びます。
「無礼な匹夫め! 御駕がここにあるを知らず、死を急ぐか!」
呼延賛は答えます。
「小将は御駕を脅かすつもりなどない。王邦に忠を尽くしたいだけだ。衣甲や弓弩など国にとっては些細なもの、なぜ惜しんで我らと干戈を交えるのだ?」
党進は聞く耳持たず、大刀を舞わせて斬りかかりました。両者は激しくぶつかり合います。数十合打ち合うも勝負はつきません。そこで呼延賛は一計を案じ、負けたふりをして本陣へ逃げ込みました。
血気盛んな党進が馬を飛ばして追いかけ、刀を振りかざしたその瞬間、賛は身をひらりととかわし、槍の柄で党進を巧みに巻き込み、力任せに引きずり下ろしたのです。待ち構えていた手下たちが一斉に躍り出て、哀れ党進は捕虜として山へ連行されてしまいました。
この報せを聞いた宋の名将・高懐徳は、「かような山中にこれほどの猛将がいるとは」と驚愕し、直ちに馬を飛ばして陣前へ出向きました。
呼延賛と高懐徳、二人の槍が交差します。五十合余り戦うも、龍虎相打つが如く勝敗は決しません。
この激闘を騎兵より伝え聞いた太祖は、親衛隊を率いて自ら陣前へ出向き、二人の虎将が火花を散らす様を目の当たりにしました。太祖はその武勇に感嘆し、楊光美に争いを止めるよう旨を伝えさせました。
楊光美は戦いの只中に馬を進め、声をかけます。
「両将軍、暫し待たれよ。聖上の旨が下った!」
高懐徳は馬の手綱を引き、呼延賛もまた兵を引いて門旗の下に立ちました。光美が問います。
「聖駕を塞ぐ将軍、一体何の言い分があってのことか?」
賛は、先刻と同じく自らの志を述べました。
「宋師が河東を征するも利なく帰還すると聞きました。小将は衣甲三千副、弓弩三千張を拝借し、寨にて壮士を募り演習を行いたいのです。主上が再び河東へ下られる暁には、必ずや先鋒となって強敵を破りたく存じます。これぞ我が願い、他に他意などございません」
光美はその誠意を感じ取り、頷きました。
「将軍、少々待たれよ。主上に奏上し計ろう」
軍中に戻った光美は、太祖にその理由をありのまま奏上しました。太祖は豪快に笑って仰せられました。
「朕は堂々たる天国、三千の衣甲弓弩など惜しむに足らぬ。彼が言葉通り功を立てるなら、爵禄(官位と給与)も惜しまぬぞ」
即座に軍政司に命じ、精巧な衣甲三千副、堅牢な弓弩三千張が用意されました。楊光美はこれを持って陣前へ戻り、呼延賛へと引き渡します。
賛は望みが叶ったことに大いに喜び、深々と拝して命を受け、人馬を率いて寨へ戻ると、李建忠に事の次第を報告しました。
建忠は頷いて言います。
「聖旨により衣甲弓弩を賜った以上、捕らえた将を返し、自ら御前へ赴いて謝恩と請罪(罪の詫び)を行うべきだ」
呼延賛もこれに同意し、捕らえていた楊延漢と党進の縄を解き、帳中へ招き入れて深く詫びました。
「先ほどは我らの本意が伝わらず、無礼を働いてしまいました。どうかお許しください」
党進はその気概に触れ、恨むどころか感服しました。
「我らがお主たちの真意を解せず、捕らわれの辱めを受けたのだ。実に面目ない、何を咎めることがあろうか」
賛は酒宴を設けて彼らを歓待しました。宴もたけなわ、建忠は手下に黄金二十両を持ってこさせ、延漢らに言いました。
「先ほどはお二方を驚かせてしまいました。これはほんの驚き賃です。どうか小弟を御前へ導き、主上に一目お目にかからせてください。この恩は生死にかかわらず忘れません」
しかし党進は首を振りました。
「勇士の礼を受けておきながら金を受け取っては、何の面目あって天子に見えようか」
党進は黄金を固辞し、李建忠と呼延賛を連れて山を下り、御前へ赴いて太祖に拝謁させました。
三度「万歳」を唱える山呼の礼が終わると、党進は呼延賛の一連の行動の意味を奏上し、言葉を添えました。
「この二人は陛下に尽忠したいと願っております。どうか陛下、彼らを賞してください」
太祖は彼らの心意気を愛で、宣言されました。
「朕の正式な辞令は軍行に伴っておらぬゆえ、今は仮に李建忠を保康軍団練使に、呼延賛を団練副使に封じる。朕が汴京(開封)に戻った後、改めて使者を遣わし宣召しよう」
李建忠と呼延賛は感涙にむせびながら謝恩し、山寨へ戻って次の命を待つこととなりました。
天子の度量と豪傑の忠義が交錯し、物語は新たな英雄の登場と共に幕を閉じます。
この後の二人の活躍はいかなるものでありましょうか。
無敵の楊業と、押しかけ就職する豪傑
【無双の楊業、宋軍を撃退】
宋(大帝国)が北漢(小国)を攻めるも、北漢の将軍・楊業があまりに強すぎた。「無敗の楊業」の前に、宋の精鋭たちが次々と撃破される。宋の皇帝・太祖は「今は勝てる時期じゃない」と判断し、まさかの「講和(引き分け)」を提案して撤退を決める。
【政治的撤退】
ただ逃げるのではなく、楊業の顔を立てて「これ以上、兵や民を死なせたくないから今回は帰るよ」と大人の対応(外交)で平和裏に軍を引く。楊業もそれに応じ、双方が痛み分けとなる。
【野良の猛将、路上で面接】
宋軍の帰り道、山賊のボス・呼延賛が道を塞ぐ。「俺たちの強さを見てくれ! 次の戦争では正規軍として使ってくれ!」と、戦闘による実力アピール(殴り合いの面接)を開始。宋の猛将たちと引き分けた実力が認められ、見事その場で採用(内定)となる。
【深層と背景】時代・文化・宗教観の解読
この回には、単なるバトルだけでなく、当時の中国社会が理想としたリーダー像や宗教観が色濃く反映されています。
「徳」のあるリーダー論(儒教的政治観)
宋の太祖(趙匡胤)が素晴らしいのは、「負けを認めて引く」ことです。通常、メンツを重視する皇帝なら無理な突撃を命じるところですが、「天意(天の意志)」と「仁(民を思う心)」を理由に撤兵します。
教訓: 権力者にとって最大の美徳は「勝ち続けること」ではなく、「引き際を見極め、部下や民の命を守れること」であると示しています。
「天命」の流動性
楊業(敵将)に対し、宋の使者は「今はそちらが強いが、世の中の流れ(大勢)はいずれ統一に向かう」と説きます。
真髄: ここには中国特有の「天命」思想があります。「今はまだその時ではないが、運命の歯車はいずれ宋に味方する」という、運命論と現実政治を混ぜ合わせた説得術が見て取れます。
アウトローの社会復帰(江湖の論理)
呼延賛のような「山賊(草賊)」が、正規軍に志願するエピソードは非常に重要です。当時の社会では、正規の出世ルート(科挙など)に乗れない武勇の士が、山賊化(非公然組織化)していました。
文化的意義: 彼らは「悪党」ではなく、「腐った役人より義理堅い在野の英雄」として描かれます。呼延賛が「金ではなく、武器(仕事道具)をくれ」と言ったのは、略奪目的ではなく「国のために戦う機会」を欲しているという、強烈な愛国心の表れなのです。
楊業はなぜ「敵」なのに主人公扱いなのか?
『楊家将』という物語は楊一族が主人公ですが、この時点ではまだ楊業は敵国の将軍です。しかし、作者は彼を「宋軍が手も足も出ない最強のボスキャラ」として描いています。
狙い: 「味方になれば最強」というカタルシスへの布石です。後の回で彼が宋に帰順したとき、読者は「あの楊業がついに味方になった!」と絶頂に達します。この回は、楊業の格を保証するための重要な「強さの見せ場」なのです。
呼延賛の武器「鋼鞭」のリアリティ
呼延賛が敵を倒すのに「鋼の鞭(のちの記述では鉄鞭)」を使います。これまでも説明しましたが、これはムチではなく、鉄の棒に竹の節のような突起をつけた打撃武器です。
戦術分析: 当時の将軍は重厚な鎧(甲冑)を着込んでいます。刀で斬りつけても刃が通りにくい。そこで、鎧の上から骨を砕く「打撃武器」のスペシャリストとして呼延賛が登場します。剣術の達人たちの中で、彼が異彩を放つ「パワー系」キャラであることを、武器一つで表現しているのです。
党進という愛すべき「噛ませ犬」
党進は実在の将軍ですが、この物語では非常にコミカルです。「口が悪く、すぐに突撃し、あっさり罠にかかって捕まるが、最後は笑って相手を許す」というキャラクター。
人間味: ガチガチの歴史小説の中で、彼のような「愛すべき単純馬鹿」がいることで物語が重くなりすぎません。呼延賛との戦い後に「お前らやるじゃねえか!」と即座に仲良くなるシーンは、現代の少年漫画にも通じる「拳で語り合う」様式美の原点です。
今回は「最強の敵(楊業)の風格」と「在野の才能(呼延賛)の発掘」を描く回です。
巨大企業(宋)が、競合他社(北漢)の凄腕部長(楊業)に圧倒されつつも、帰り道で優秀なフリーランス(呼延賛)をスカウトして帰ってくる、という人事採用とM&Aの物語として読むと、現代のビジネスパーソンにも非常に味わい深い一節と言えるでしょう。




