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Debugger  作者: まめくん
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はじまり

 「ん...」


 目が覚めた。いつも通りカーテンを開けて...


 「は?」


 周囲には緑、緑、緑。なんだこのクソ静かでのどかな場所は。いつもの殺風景な自分の部屋は?変化の一つないベランダからの景色は?


 「....なんだ夢かぁ?」


 最近変な夢ばっかり見てた気がするけど、ここまで現実感があるとは...とりあえず、やることがないからもう一度寝るとしよう。そう思って、僕は綺麗な草の上に寝転んだ。


 「...これが現実だったらな」


 あるわけないとわかっていても、現実逃避のしたすぎで願ってしまう。でも僕の現実....なんかそんな悪いことあったかな?


 「どうでもいいか」


 そう呟いて、僕は瞼を閉じる。


 肌触りのいい草。気持ちの良い風。水の流れる音。高速でこちらに飛んできてる何かの気配。


 ん?


 なんだかとても嫌な予感がするので、体を起こす。


 「寝るんじゃない...」


 「え?」


 すごく遠い、けれど鮮明に聞こえたはずの声に、僕は思わず声を出してしまった。


 「寝るんじゃ、ねぇ!」


 その声とともに、何か硬そうなものが僕の頭めがけて飛んでくる。


 「うぉっ!」


 咄嗟にそれを避けるように体を動かすと、それは勢いよく地面にぶつかった。


 「ごほっ...ごほっ...... 急になんだよ」


 土埃でよく見えなくなっていたが、地面に突っ込んだであろうそれに僕は話しかける。


 「なんだよ、じゃないよ。そう!君を探してたんだ。君、名前は?」


 土埃が落ち着いて見えてきたのは機械にディスプレイが付いたものだった。


 「えっ...え?」


 急な出来事すぎて頭が追い付かないよ。寝るんじゃねぇとか言って勢いよく突っ込んできて僕を探してたって?殺しにでもきたのかよ。


 「あぁ...これは夢だったな...」


 「...何言ってんの?夢なんかじゃないよ」


 その機械は何を言っている?こんなぶっ飛んだできことが起こるなんて、夢じゃなかったらどうやって説明すりゃいいんだ?


 「ダメだ。最近どうも疲れすぎてるんだな。もうちょっと早く寝て休みをとるように」


 「だから、夢じゃないって」


 そう言って、機械が僕を小突いてくる。


 「なにすんだ...よ......」


 確かに痛い。痛いのを感じているはずなのに、周りの景色は全く変わる様子を見せない。夢だったらつねったら起きるとか言うし...


 これ、本当に夢じゃなかったりする?


 「なに?そんなアホ面しちゃってさ。え、本当に夢だと思ってた感じ?」


 図星すぎて何も言えねぇよ。多分、これは夢じゃない。急に、知らない場所にいるという不安とこののどかで心地の良い場所が現実であるという嬉しさで、なんとも言えない感情が僕を包む。


 「待って。これが夢じゃないとしたら、なんで僕はこんな場所にいるんだ?」


 僕がそう言うと、機械はその質問を待ってましたと言わんばかりにニヤニヤして話し出す。


 「おっほん。ここは、君のいた現実世界とはちょーーーっと遠くにある、別の世界さ。名称をつけるなら...うん!"シンセカイ"とでも呼んでおこうか」


 「別世界、か」


 「そう!なんだか非現実的でワクワクするでしょ?」


 「んー、まぁするか。ところでめっちゃ喋ってるけどアンタ誰だよ」


 ずっと疑問に思ってたことを、頭の整理が追い付いてやっと言えた。


 「ボク?えーっと、君には名前を言ってもわかんないだろうから、ハカセとでも呼んでくれよ」


 なんだよ、上から目線みてぇな言い方しやがって。でも多分話してる感じいつも通りなんだろうなー、なんて思いながら、僕はハカセに話す。


 「ハカセ、ね。了解」


 「そうだよ、名前!君、最初に質問したのに言ってくれなかったじゃん!」


 「んなもん覚えてっかよ。説明もなしにこんなとこにこさせられてんもんなぁ。頭追い付かなくてほとんど聞いてなかったわ」


 そう言われて納得がいったのか、ハカセはとやかく言わずに頷いている。


 「まぁ、それもそうだよなぁ。じゃあ今でいいよ、名前は?」


 「俺の名前は...」


 あれ、なんだっけ。思い出せない。こんな一番忘れちゃいけないものを忘れて僕の頭はどうしちゃったんだ?やっぱり疲れてはいるんだよ、僕。


 「思い出せない?まぁそうだよなぁ...」


 「なんだお前、知ってそうな話し方しやがって」


 「ん?いや全然知らないよ?ただ君がさっき寝かけてたときはめっちゃ疲れてそうにしてたからさー」


 やっぱ疲れてたんだよ、僕。疲れで本当に済ませていいのか、これ。頭打ったとかでなければ相当重症だぞ。僕は現実でどんなことしてたんだよ...そういえば、それも思い出せねぇや。


 「君、現実ではとんでもなく疲れるようなことしてたんじゃない?」


 「...そうかもな。そうでなきゃ困る」


 「それでいいんだ...」


 「なんだよわりぃかよ。てか、この世界が現実になったなら、そんな前いた世界のことなんて忘れたっていいだろ」


 「まぁそれもそっか」


 まぁぼちぼち思い出していけばいいだろ、そんなこと。それよりもこの世界のことが気になってしょうがねぇよ。なんかおかしいかな、僕。


 「じゃあ君のこと呼びづらいから呼び名を付けとくね」


 呼び名ねぇ...どうせ外観かなんかをいじってくるんだろ。それが一番わかりやすいしつけやすいからな。


 「君は..."デバッガー"って呼ぶことにするよ」


 「はいはい......デバッガー?」


 デバッガーって、あのゲームのバグとかチェックする人のことか?いやでも、こんなのどかな場所でゲーム...なんて想像もつかねぇな。


 「多分、君の思ってるデバッガーであってるよ」


 「え?あぁ......でもなんでデバッガーなんだ?仕事にするほど俺がゲーマーに見えたとかか?」


 「いや、全然」


 じゃあ、なんでなのだろう。一旦外見から離れてみても、デバッガーという呼び名が付く理由が全く分からない。


 「まぁ、すぐわかるよ」


 「すぐわかるって、なんだよ。まるで俺がデバッグする人になるみたいな...」


 「そういうことだよ」


 思ってもなかった返答に、僕は声も出せないまま驚いていた。


 「はは、何その顔」


 そう言われて僕は口を閉じる。絶対アホ面してたよな...ってことにあとになって気づいた。さっきも同じ理由で笑われたから、ちょっとイライラする。


 「...笑ってんじゃねぇ」


 「ごめんごめん。まぁ、ちょっとボクについてきてよ」


 そう言われるがまま、僕はハカセについていった。


 ***


 「これは...バグだな」


 「これは...バグだよ」


 僕とハカセは、目の前にある虹色に光るモヤモヤをじっと見ていた。これはどっからどう見てもバグだと思う。ゲームのバグと言われると、壁を抜けて、本来行けるはずのない場所に行けたり。その時点では開けない宝箱を、バグアイテムで開いたり。時にはチートのように、時にはリセット不可避のトラップのようにもなるゲームにおいては致命的なもの、だと勝手に思ってる。


 それを、絵にかいたりするのなら...絶対こうなるだろうな、っていう姿形をしている。


 「え、これを僕に壊してくれとかそういうこと?」


 「その通り。よくわかったね」


 まぁデバッガーって呼ばれるくらいだもんな。そんなような気はしてた。


 「でも、どうやって?」


 「これを使うのさ。しっかりキャッチしてね」


 そう言ってハカセが何やら言うと、僕の上から剣のようなものが出てきた。


 「うわぁ?!」


 「ナイスキャッチ!」


 僕の手には、さっき出てきた剣があった。


 「なんか、RPGで出てきそうだな...」


 多分ゲームだったら片手剣に分類されるな、これ。っていう形をしてる剣を見つめる。


 「...盾はないの?」


 「いやRPGじゃねぇから!」


 そう言って、二人で笑った。でも、ちょっと期待してたな。


 「んで、多分だけどこれで攻撃してこのバグを倒しゃいいんだろ?」


 「飲み込みが早いね!助かるよ」


 僕は剣を振ってバグを倒した。剣を振った方向に割れて、その割れ目から外側に行くようにして消えていった。


 「なんかちゃんとバグっぽいな...」


 「おお~!初めてのバグ駆除おめでとう!」


 なんだかとても楽しい。まるで自分がゲームの主人公にでもなったみたいな感じ。


 これが現実になってくれて、よかったのかもな...前の世界で僕が何してたか知りもしないけどね。


 「ほんで、これを俺に頼みたいと。そういうことだろ?」


 「よくわかってるじゃん!お願いしていいかな?」


 「ああ」


 こんなに楽しいと思ったのは久しぶりかもしれない。続けていればいつか飽きてしまうかもしれないのだが、今はそんなこと考えるより楽しかったから...続けたかった。まぁ他にやることもないし、帰り方もわかんないし。ちょうどいいとも思った。


 「でもこれ、バグなんてキリないんじゃねぇの」


 「この世界にはたくさんの"フィールド"って呼ばれるものがあってね、そこのバグの根源を倒していってほしいんだ」


 フィールド、根源...多分、ゲームのステージとボスみたいなもんだろうな。なんだろう、本格的にRPGみたいになってきた。この感じだとあとでスキルとか新武器みたいなのも出てきそうだな。


 「その根源ってのを潰せば次のフィールドに行けるとかそういうことだろ?」


 「そうだね」


 「んで、そのフィールドってのはいくつくらいあるんだ?」


 そう聞くと、ハカセは困ったような動作をする。


 「んー......それは僕も知らないんだよね。なんでも今も定期的に増えてるらしいしさ」


 「じゃあまじでキリねぇじゃん...」


 「いや、でも終わりはあると思うよ」


 本当にあるんだろうか、終わりなんて。まぁ、あってくれなきゃ困る。いつかは飽きてくるんだろうし。もし仮にこれがゲームだとしたら、無限に続くだなんてやってらんないだろうな。


 「じゃ、これからよろしく頼むよ、デバッガー」


 「あぁ、こちらこそよろしくな、ハカセ」


 デバッガーって呼ばれることにはやっぱ慣れないな...まぁ、自分の名前がわからないからしょうがないことだけどさ。


 こうして、僕とハカセのバグ退治の旅が始まった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

突然アイデアが降ってきたので書きました。よくわからない部分などありましたらすみません。

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