23.降り注ぐ慈雨。そして祝福は八つの煌めきに。
《させない》
……声が、した。
知っている声だ。きっとこの場にいる誰も知らない。なつめだけが知っている声。
《私の希望。私の願い。私の奇跡。──私の、愛し子達を》
そっと抱きしめられる。その温もりも、知っている。
《失わせなど、絶対にさせない》
その時、なつめは確かに見た。
一面に広がる黄金色の花畑。真っ青な空。白い二つの椅子と一つのテーブル。
あの人がいる。あの美しい人が。
なつめと実佳を愛し子だといい、笑ってくれた人が、傷だらけのこの身体を優しく抱き締めてくれている。
《あなたに、祝福を》
その言葉は、まるで歌を歌うよう。
伸びやかに。しなやかに。けれど確かな想いで紡がれていく。
《一つ。前を見据えるその瞳に》
《二つ。夢を紡ぐその唇と言の葉に》
《三つ。暖かなぬくもりを宿すその手と指に》
《四つ。守るべきを守るその腕に》
《五つ。明日へ踏み出すその脚に》
《六つ。傷ついても尚諦めないその体躯に》
《七つ。決して折れず砕けないその心に》
《そして──八つ。なつめ。あなたを、あなたたらしめるその〝名〟に》
花畑の中、なつめはしっかりと足を踏みしめる。痛みはない。苦しみも。ただ暖かな愛がここにある。
《あなた達の行く先に、光があらんことを。──さあ、生きなさい》
名残惜しげに強く抱きしめられて、それを最後にあの人は静かに離れていく。形がおぼろげになり、気配が薄れ、消えていく。去っていく。
ああ、でも。
今、確かに託された。この小さい身体には勿体ないぐらいに大きく、尊くて美しいものを。
自然と、手が動いた。太刀の柄を握っていた手だ。
その黒の柄を見て、鈍色の鍔を見て、銀の刃を見た。
流れ込んでくるものがある。清らかな水のようにこの身と心に染み込んで、一つになる。
「──〝八ツ守行光〟!!」
湧き水のように浮かび上がったその名もまた、名前をいう明確な形を持った祝福。
あの人から受け取ったありったけの愛を、声を上げて吠える事で、太刀にも乗せる。
柄を握り締めて、構えて、この先自分達の前に立ちはだかるであろう全ての障害を両断すべく、真上から真下へ、その刃を振り下ろした。
パキン。
澄んだ音と共に、景色は両断された。
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